国産フィジカルAI開発が加速|製造・インフラ人材に求められる新たなリスキリング
最終更新日:2026.07.14
現実空間でロボットや設備を自律的に制御する「フィジカルAI」の国産開発が加速しています。
報道によると、産業技術総合研究所を中核に、日米欧の14研究機関が連携し、国産フィジカルAIの研究開発を進めます。研究成果は、ソフトバンクなど複数企業が出資する新会社Noetraの基盤モデル開発にも活用される見通しです。
ニュースの概要
フィジカルAIとは、テキストや画像を扱う生成AIとは異なり、現実空間のロボット、機械、設備などを状況に応じて動かすAI技術を指します。製造現場やインフラ保守、物流、災害対応など、物理的な作業を伴う領域での活用が期待されています。
NEDOは2026年6月30日、「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業」の実施体制を決定しました。同事業では、AIロボットやフィジカルAIの開発基盤となる国産AI基盤モデルを開発し、日本が強みを持つ製造業などの産業競争力強化やGXの実現を目指します。
事業期間は2026年度から2030年度までとされており、2027年度以降は毎年度のステージゲート審査を通じて継続可否を判断する仕組みです。
また、三菱電機と千葉工業大学は2026年5月、官民両用を想定した国産フィジカルAI技術の研究開発に関する基本協定を締結しました。両者は共創センターを設立し、多脚歩行型、人型、ドローン型など多様な自律制御ロボットを活用したAIロボティクスソリューションの事業化を進める方針です。
背景には、労働人口の減少や、道路・鉄道・水道など公共インフラの老朽化があります。製造現場や保守・点検の現場では、自動化や業務効率化が急務となる一方、周囲の環境や状況に応じた細かな判断や動作が求められる作業は、これまで自律化が難しい領域でした。
フィジカルAIは、現実世界の状況を認識し、リアルタイムに判断し、ロボットや設備を制御することで、熟練者のように工具や機器を扱う自律制御ロボットの実現につながると期待されています。
リスキリングドットコムの見解
フィジカルAIの開発加速は、AI活用が「画面の中の業務」から「現場の作業」へ広がり始めていることを示しています。
これまで生成AIのリスキリングは、文章作成、情報整理、資料作成、分析補助といったホワイトカラー業務を中心に語られてきました。しかし、フィジカルAIが実装段階に近づくほど、製造業、建設、物流、インフラ保守など、現場人材の学び直しが重要になります。
求められるのは、ロボットに仕事を奪われないための学びではありません。AIやロボットと協働し、現場の知見をデータ化し、安全に運用し、改善につなげる力です。
製造・インフラ領域では、熟練者の暗黙知が大きな価値を持ちます。どの音や振動が異常の兆候なのか、どの作業手順にリスクがあるのか、現場でしか分からない判断をAIに活かすには、人の経験を整理し、データや業務プロセスに落とし込む必要があります。
そのため、今後のリスキリングでは、AIリテラシーだけでなく、ロボット活用、安全管理、データ記録、現場改善、設備保全の知識を組み合わせることが重要になります。
国産フィジカルAIの開発は、単なる技術競争ではなく、日本の製造業や社会インフラを支える人材の再設計にもつながるテーマです。現場の知見をAIと結びつけられる人材を育てられるかが、次の産業競争力を左右するでしょう。
出典元
ビジネス+IT:国産「フィジカルAI」開発に向け日米欧14機関が連携、日本の産総研が中核に
NEDO:「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業」の実施体制の決定について
三菱電機:三菱電機と千葉工業大学が国産フィジカルAIの研究開発に関する基本協定を締結



