【2026年最新】研修の効果測定の進め方 4段階評価とKPI設計の5ステップ

最終更新日:2026.08.20

研修をやりっぱなしにせず、成果まで確かめたい。そう考える人事担当者に向けて、この記事では研修・リスキリングの効果測定の基本となる「4段階の評価」と、実務で回すための5ステップを整理します。

2026年時点の公的データと、人的資本開示の最新指針を踏まえた内容です。

2026年に「効果測定」が問われる理由

厚生労働省が2026年7月31日に公表した令和7年度「能力開発基本調査」によると、OFF-JTまたは自己啓発支援に費用を支出した企業の割合は54.4%でした。

労働者一人当たりのOFF-JT費用は2.0万円で、前回調査より0.5万円増えています。研修への支出は動いている一方、その効果を確かめる仕組みは追いついていないのが実情です。

同調査では、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとした事業所は80.1%にのぼりました。問題点の内訳は「指導する人材が不足している」が59.5%で最も高く、「人材を育成しても辞めてしまう」が51.6%、「人材育成を行う時間がない」が45.5%と続きます。

さらに、事業内職業能力開発計画を「いずれの事業所においても作成していない」とした企業は79.8%でした。

計画がなければ、何をもって成功とするかの基準も置きにくくなります。

開示の側からの要請も強まっています。内閣官房・金融庁・経済産業省が2026年3月23日に公表した「人的資本可視化指針(改訂版)」は、人材戦略・人的資本投資の効果について、経営戦略と紐付く形で測定可能な指標及び目標を設定・可視化し、ステークホルダーとの対話に向けた開示を進めることを促すとしています。

効果測定は社内向けの振り返りにとどまらず、投資家や求職者への説明材料にもなりつつあります。

効果測定の土台となる「4段階評価」

研修評価の枠組みとして国際的に広く使われているのが、ドナルド・カークパトリック氏が1950年代に提唱したカークパトリックモデルです。

提供元のKirkpatrick Partnersは、反応・学習・行動・結果の4つのレベルで評価する考え方を示しており、直線的にレベルを上がるのではなく、得られた示唆を設計へ戻す循環的なものだと説明しています。

レベル測る対象代表的な測り方測るタイミング
1 反応(Reaction)受講者が有用・自分の仕事に関係があると感じたか受講後アンケート、自由記述研修直後
2 学習(Learning)意図した知識・スキル・態度・自信を得たか理解度テスト、ロールプレイ、受講者による説明(ティーチバック)研修直後〜数日
3 行動(Behavior)職場で重要な行動が実践され、支援されているか上司・同僚による観察、行動チェックリスト、1on1研修後1〜3か月
4 結果(Results)狙った組織成果が生まれたか業績・品質・生産性・定着率などの既存KPI研修後3〜12か月

Kirkpatrick Partnersは、評価の計画はレベル4から立て、組織へのインパクトを示す指標を先に決めることを勧めています。

実務で満足度アンケートだけが残りやすいのは、この順序が逆になっているためです。

研修の効果測定を進める5ステップ

  1. 成果(レベル4)から逆算して指標を決める:研修の企画段階で「この研修が効いたら、どの数字がどう動くか」を1〜2個に絞って言語化します。売上や不良率のような事業KPIに届かない場合は、対応時間、内製化した業務件数、資格取得者数など、現場が日常的に記録している数値を代替指標に置きます。
  2. 受講前のベースラインを取る:同じ設問・同じ指標で研修前の値を測っておきます。事前テストやスキル自己評価、対象業務の現状値を押さえておかないと、後から変化量を示せません。対象者と似た条件の非受講グループを比較対象にできれば、より説得力が増します。
  3. 研修直後にレベル1・2を測る:アンケートは「満足したか」ではなく「自分の職務に関係があるか」「明日から使える場面があるか」を聞くと、行動につながるかを予測しやすくなります。理解度は事前テストと同じ形式の事後テストで差分を見ます。
  4. 1〜3か月後に行動(レベル3)を確認する:受講者本人の申告だけでなく、上司の観察や1on1の記録を組み合わせます。ここで重要なのは、行動が定着しない原因を「本人の努力不足」に帰さないことです。業務の割り当て、時間の確保、上司の支援といった職場側の条件が揃っているかも同時に点検します。
  5. 成果と投資額を突き合わせ、次の計画へ戻す:レベル4の指標の変化と、研修費用・受講時間を並べて振り返ります。結果は事業内職業能力開発計画や社内の職業能力評価基準の見直しに反映し、次年度の研修設計につなげます。前掲の能力開発基本調査では、職業能力評価を行っている事業所の活用方法は「人事考課の判断基準」が86.2%で最も高く、「労働者に必要な能力開発の目標」は36.7%にとどまっており、評価結果を育成側に返す余地は残されています。

つまずきやすい3つの注意点

第一に、レベル1で止まってしまうことです。満足度が高い研修が成果に結びつくとは限らず、逆に負荷の高い研修は満足度が下がることもあります。

満足度は改善のヒントであって、成果の証明ではないと割り切る必要があります。

第二に、指標を増やしすぎることです。人的資本可視化指針(改訂版)は、開示にあたって自社の経営戦略に基づく人的資本投資の考え方と目的、現状と課題やリスク、今後の取組を説明することが重要であり、特定の項目について画一的な開示が求められているわけではないと留意を促しています。

他社と同じ項目を並べるより、自社の戦略と論理でつながる少数の指標を選ぶほうが説明しやすくなります。

第三に、測定そのものが現場の負担になることです。能力開発基本調査で挙がった「人材育成を行う時間がない」(45.5%)という課題は、測定にもそのまま当てはまります。

新たな調査票を増やすのではなく、日報、1on1、既存の人事評価、業務システムのログなど、すでにある記録から取れるものを優先すると続けやすくなります。

リスキリングドットコムの視点

リスキリングドットコムとしては、効果測定を「研修の後始末」ではなく「研修の設計図」として捉え直すことが要点だと考えます。

レベル4から逆算して指標を決める作業は、そもそもこの研修は何のためにやるのかを事業側と握り直す作業でもあります。

事業内職業能力開発計画を作成していない企業が約8割という現状は、裏を返せば、目的と指標を先に決めるだけで差がつく余地が大きいということです。

あわせて、行動が定着しない原因を受講者個人に求めない設計も欠かせません。学んだことを使える仕事が割り当てられているか、上司が支援できる状態かという職場側の条件を測定項目に含めることで、研修は単発のイベントから人材戦略の一部へと変わります。

数字を集めること自体が目的化しないよう、まずは一つの研修で小さく回してみることをおすすめします。

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