教育訓練休暇制度の導入手順【2026年最新】無給は給付金・有給は助成金の使い分け

最終更新日:2026.08.27

従業員が学び直しのために長期の休みを取る──その原資を、企業が全額負担しなくてもよい仕組みが2025年10月に整いました。

「教育訓練休暇給付金」です。一方で、有給の教育訓練休暇を導入する企業には人材開発支援助成金の「教育訓練休暇等付与コース」があります。

この記事では、無給と有給で使える制度がどう分かれるのか、就業規則への規定から申請までの導入手順を5ステップで整理します。

教育訓練休暇給付金とは:2025年10月に創設された雇用保険の新給付

教育訓練休暇給付金は、厚生労働省が「労働者が離職することなく教育訓練に専念するため、自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合」に、失業給付(基本手当)に相当する額を支給して休暇期間中の生活費を保障する制度と説明しているものです。

令和7年(2025年)10月から創設されました。

これまで、社員が学び直しのためにまとまった時間を取ろうとすると、「収入が途切れるので結局は退職して学ぶ」か「働きながら細切れに学ぶ」かの二択になりがちでした。

教育訓練休暇給付金は、その間を埋める選択肢として設計されています。企業側から見れば、貴重な人材を失わずに長期の学びを支援できる点が要点です。

支給を受けるための主な要件として、厚生労働省は次の内容を示しています。

  1. 雇用保険の一般被保険者であること
  2. 休暇開始前2年間に12か月以上の被保険者期間があること
  3. 休暇開始前に5年以上、雇用保険に加入していた期間があること
  4. 労働協約・就業規則等に定められた社内制度に基づく、連続した30日以上の無給の教育訓練休暇であること
  5. 業務命令によらず労働者が自発的に取得し、事業主の承認を受けていること

ポイントは「無給」かつ「連続30日以上」、そして「就業規則等に制度として定められていること」の3点です。

制度が社内に存在しなければ、社員は要件を満たせません。裏を返せば、企業が就業規則を整えることが受給の入口になります。

支給される日数は、雇用保険の被保険者であった期間に応じて分かれます。第一生命経済研究所のレポート(2026年1月15日公開)は、5年以上10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日と整理しています。

厚生労働省の労働政策審議会(職業安定分科会)の資料でも、給付は最長150日と説明されています。日額は離職した場合の基本手当と同じ考え方で、賃金と年齢によって決まります。

無給なら給付金、有給なら助成金:2つの制度の使い分け

人事担当者が最初につまずきやすいのが、「教育訓練休暇給付金」と、人材開発支援助成金の「教育訓練休暇等付与コース」の混同です。

名前は似ていますが、支援の対象も、休暇が有給か無給かも異なります。

比較項目教育訓練休暇給付金人材開発支援助成金 教育訓練休暇等付与コース
お金を受け取るのは休暇を取得した労働者本人制度を導入した事業主
休暇の性質無給の教育訓練休暇有給の教育訓練等制度
休暇の長さ連続30日以上制度の内容による(コースの要件を確認)
金額の目安基本手当と同額の日額。所定給付日数は90日/120日/150日1事業主1回限り30万円(賃金要件等を満たす場合36万円)
根拠雇用保険の給付(2025年10月創設)雇用保険二事業の助成金
主な窓口ハローワーク(事業主経由の手続きあり)都道府県労働局・ハローワーク

厚生労働省は教育訓練休暇等付与コースについて、「有給教育訓練等制度を導入し、労働者が当該休暇を取得し、訓練を受けた場合に助成」する制度と説明しています。

つまり、休暇中の賃金を企業が払う設計なら助成金、賃金を払わない設計なら本人が給付金を受け取る、という整理になります。

どちらが自社に合うかは、対象にしたい社員層で変わります。全社員に短期の学習機会を広く配りたいなら有給制度と助成金、専門資格の取得や大学院・長期プログラムのような数か月単位の学びを想定するなら無給制度と給付金が噛み合います。

両方を並立させ、休暇の長さで使い分ける設計も考えられます。

教育訓練休暇制度を導入する5ステップ

制度の導入は、就業規則の改定を軸に進みます。実務の流れは次のとおりです。

  1. 目的と対象者を決める:何のための休暇か(資格取得、リスキリング、学位取得など)、勤続年数や職種の条件をどう置くかを先に固めます。教育訓練休暇給付金の要件が「雇用保険加入5年以上」である点を踏まえ、社内制度の勤続要件が厳しすぎないかを確認します。
  2. 有給か無給かを設計する:前章の表のとおり、ここで使える公的支援が分岐します。人件費の負担可能額と、想定する休暇の長さから逆算して決めます。
  3. 就業規則・労働協約に規定する:休暇の名称、対象者、取得できる日数と回数、申請手続き、承認のルール、復職の扱いを明記します。就業規則の変更は、労働者代表の意見書を添えて所轄の労働基準監督署へ届け出ます(常時10人以上を使用する事業場)。
  4. 社内に周知し、申請フローを回す:制度があっても知られていなければ使われません。申請書式、上長の承認、代替要員の手当てまでを含めて運用ルールを整えます。取得を「抜ける人」ではなく「戻ってくる人」として扱う運用設計が、実際の利用率を左右します。
  5. 公的支援の手続きを行う:無給制度で本人が教育訓練休暇給付金を受ける場合、厚生労働省の審議会資料では、事業主と被保険者の合意後に事業主がハローワークへ賃金証明書を提出し、その後30日ごとに認定を受けて支給される流れが説明されています。有給制度で助成金を使う場合は、コースの計画届・支給申請の期限に従います。いずれも提出書類と期限は最新の公式リーフレット・支給要領で確認してください。

導入前に押さえたい注意点

第一に、休暇中の社会保険料です。無給の休暇であっても健康保険・厚生年金の被保険者資格は継続するため、保険料の本人負担分をどう徴収するかを事前に決めておく必要があります。

給与からの控除ができないため、振込や復職後の精算など具体的な運用を規程に落としておくと、現場の混乱を防げます。

第二に、要件の細部です。厚生労働省は制度紹介ページでも「別途詳細な要件がある」旨を案内しており、被保険者期間の数え方や対象となる訓練の範囲は個別確認が要る領域です。

制度設計の段階で所轄のハローワーク・労働局に相談しておくことが、後戻りを避ける近道になります。

第三に、助成金の年度要件です。人材開発支援助成金は年度ごとに要件やコース構成が見直されており、厚生労働省のサイトでも令和8年度版のパンフレットと支給要領が公開されています。

前年度の情報のまま設計を進めないよう、必ず最新版を参照してください。

まとめ:制度を「作る」ことが受給の入口

教育訓練休暇給付金は労働者への給付ですが、就業規則等に制度がなければ社員は申請できません。企業が制度を用意して初めて、社員は「辞めずに学ぶ」選択肢を手にします。

有給で設計すれば事業主向けの助成金、無給で設計すれば本人向けの給付金と、公的支援の受け皿は用意されています。

まずは自社の想定する学びの長さを決め、有給か無給かを選び、就業規則に落とす。この順番で進めるのが最短ルートです。

リスキリングドットコムの視点

リスキリングドットコムとしては、この制度の本質は「学びのための離職」を「学びのための休暇」に置き換えるところにあると考えています(以下は編集部の見解です)。

企業にとっての最大の便益は助成額そのものではなく、専門性を高めた人材が自社に戻ってくることのはずです。

そのためには、制度を作るだけでは足りません。復職後にその学びを活かせるポジションや役割が用意されているかどうかが、利用率と投資対効果を分けます。

休暇の入口だけを整え、出口の配置設計を後回しにすると、「学んで戻ったが元の仕事のまま」という結果になりかねません。

まずは対象を絞った小さな制度から始め、1人目の取得者の復職までを丁寧に伴走することが重要です。その1件が社内の前例となり、制度が実際に動き出す起点になります。

出典元