管理職研修の進め方【2026年最新】設計5ステップと費用の目安・法改正対応

最終更新日:2026.09.02

管理職研修は「何を教えるか」より「どの課題を解くために行うか」を決める設計段階で成果が変わります。この記事では、2026年に企業が押さえておきたい法改正と公的データを踏まえ、管理職研修で扱う主なテーマ、設計の5ステップ、費用の目安と助成金の考え方を整理します。

人事担当者が社内で企画を通す際の土台としてご活用ください。

2026年に管理職研修の見直しが必要な理由

厚生労働省が2026年7月31日に公表した令和7年度「能力開発基本調査」によると、能力開発や人材育成に関して「何らかの問題がある」と回答した事業所は80.1%で、前回より0.2ポイント上昇しました。

正社員に対して計画的なOJTを実施した事業所は60.6%と前回より0.5ポイント低下する一方、労働者1人あたりのOFF-JT費用は令和6年度実績で2.0万円と、前回より0.5万円増えています。

費用は増えても、現場での計画的な育成は広がりきっていない状況がうかがえます。

加えて2026年は、管理職の実務に直接関わる法改正が続きます。令和7年6月11日に公布された改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメント対策と求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が事業主の義務となり、2026年10月1日に施行されます。

事業主には方針の明確化と周知・啓発、相談体制の整備、事実関係の確認と適切な対処などの措置が求められ、現場で最初に相談を受けるのは多くの場合、管理職です。

また2026年4月1日施行の改正女性活躍推進法では、常時雇用する労働者が101人以上300人以下の事業主にも「男女間賃金差異」の情報公表が必須項目として加わりました。

制度対応と育成をつなぐ役割が、管理職層に集まりつつあります。

管理職研修で扱う主なテーマ

管理職研修は「マネジメント全般」とひとくくりにすると焦点がぼやけます。自社の課題に合わせてテーマを絞り込むことが重要です。

以下は代表的なテーマを編集部で整理したものです。

テーマ主な内容検討したい企業の状況
労務・ハラスメント対応相談の受け止め方、事実確認の手順、記録の残し方2026年10月のカスハラ対策義務化に備えたい
目標設定・評価期初の目標のすり合わせ、評価根拠の言語化、フィードバック人事制度を改定した/評価の納得感に課題がある
1on1・育成面談傾聴、キャリアの引き出し方、育成計画への落とし込み若手の早期離職やエンゲージメントの低下が見られる
生成AI・DX活用業務の棚卸し、AI利用ルールの理解、チームへの展開社内で生成AIの利用ルールを整備中である
キャリア支援・多様性多様な部下のマネジメント、管理職候補の育成情報公表義務の対象で、候補者層を厚くしたい

実施形式は、対面の集合研修、オンラインのライブ研修、eラーニングの3つが基本です。議論や実践練習が中心になるテーマは集合研修やライブ研修が向き、法令・制度の知識習得はeラーニングで先に済ませて対面の時間を演習に充てる、といった組み合わせも有効です。

管理職研修の設計5ステップ

  1. 課題を特定する:離職率、エンゲージメント調査、ハラスメント相談件数、評価分布などの既存データから、管理職の行動で改善できる課題を1〜2つに絞ります。「管理職が弱いから」ではなく、どの行動が不足しているかまで具体化します。
  2. 対象と到達点を定める:新任管理職か、経験3年以上の層か、部長層かで必要な内容は変わります。研修後に「何ができている状態か」を、観察できる行動レベルで書き出します。
  3. 内容と形式を選ぶ:到達点から逆算してテーマを選び、知識習得はeラーニング、判断や対話の練習は集合研修と役割を分けます。外部委託か内製かも、自社に事例と講師役がいるかで判断します。
  4. 実施前後の仕掛けを組む:事前に自部署の課題を持ち寄らせ、研修後は上長との面談や実践報告の機会を設けます。研修当日だけで完結させないことが、行動定着の分かれ目になります。
  5. 効果を測定して改善する:受講直後の満足度に加え、3か月後の行動変化や、ステップ1で選んだ指標の推移を確認します。次回の内容は、この結果をもとに入れ替えます。

費用の目安と助成金の考え方

教育研修費用の水準は、産労総合研究所が2025年10月8日に発表した「2025年度(第49回)教育研修費用の実態調査」が参考になります。

同調査(2025年6〜7月実施、集計159社)では、2024年度実績の従業員1人あたり教育研修費用の平均は36,036円で、前年度より1,430円増加しました。

企業規模別では大企業39,553円、中堅企業36,195円、中小企業31,788円となっています。前掲の能力開発基本調査における労働者1人あたりOFF-JT費用2.0万円とあわせて、自社の水準を照らし合わせる目安になります。

費用負担を抑える手段として、厚生労働省の人材開発支援助成金があります。同助成金には人材育成支援コース、教育訓練休暇等付与コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースなどが設けられており、職務に関連した知識・技能を習得させるOFF-JTが支援の対象となる場合があります。

ただし対象となる訓練時間や手続きの期限、助成率はコースごとに異なり、年度によって見直されることもあります。

企画段階で厚生労働省の公式ページと管轄の労働局に最新の要件を確認したうえで、計画届の提出時期から逆算して日程を組むことが求められます。

失敗しやすいパターンと選び方の注意点

第一に、全管理職を対象にした単発の集合研修だけで終えてしまうパターンです。階層も課題も異なる層に同じ内容を配ると、当事者意識が生まれにくくなります。

第二に、研修で学んだ行動を実行する権限や時間が現場にないケースです。育成面談の重要性を伝えても、プレイング業務で時間が確保できなければ行動は変わりません。

研修と並行して、業務量や権限の見直しを検討する必要があります。

第三に、効果測定が受講後アンケートで止まっているケースです。満足度は講師の話し方に左右されやすく、行動変化とは別の指標です。

外部の研修会社を選ぶ際も、カリキュラムの網羅性より、自社の課題に合わせて演習事例を差し替えられるか、実施後のフォロー設計まで提案できるかを確認したいところです。

リスキリングドットコムの視点

リスキリングドットコムとしては、2026年の管理職研修は「法改正への対応」と「育成の立て直し」を切り離さずに設計することが要点だと考えます。

カスハラ対策の義務化は2026年10月に迫っていますが、方針を文書化して周知するだけでは、現場で相談を受ける管理職の判断は揃いません。

相談の受け止め方や事実確認の手順を演習で扱っておくことが、制度を機能させる前提になります。あわせて能力開発基本調査が示すとおり、費用は増えても計画的なOJTは広がりきっていません。

研修を単体の施策として捉えるのではなく、管理職が育成に使える時間と権限をどう確保するかまで含めて設計することが、投資を成果につなげる近道になるとみています。

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