副業・兼業制度の導入手順【2026年最新】就業規則・労働時間通算・許可基準の5ステップ

最終更新日:2026.09.03

副業・兼業を認める企業は増えていますが、実際の制度設計では「就業規則をどう書き換えるか」「労働時間の通算をどこまで管理するか」で止まってしまう人事担当者が少なくありません。

この記事では、厚生労働省のガイドラインに沿った副業・兼業制度の導入手順を5つのステップで整理し、2026年時点の最新データと制度見直しの動向まで解説します。

副業・兼業をめぐる2026年の状況

リクルート ジョブズリサーチセンターが2025年5月29日に公開した「兼業・副業に関する動向調査2024」(2025年1月実施)では、兼業・副業を認める人事制度がある企業は60.7%、社外の兼業・副業人材を受け入れている企業は53.7%でした。

一方で、正社員本人の実施率は10.7%にとどまっています。制度は広がっているものの、実際に使う社員はまだ限られているのが現状です。

大企業に絞った調査もあります。みらいワークスが2026年8月28日に発表した「大企業における『副業・兼業に関する人事制度』の実態調査2026」(2026年6月19〜22日実施、従業員1,000名以上の製造業または500名以上のその他業種の人事・労務担当者および役員500名)によると、副業・兼業の容認率は54.6%。

内訳は「原則自由」9.0%、「条件付き許可」24.2%、「例外的許可」16.6%で、条件を付けたうえでの容認が中心です。

今後の姿勢は「現在の方向性を維持」55.7%と「推進をさらに加速」21.2%を合わせて76.9%が継続・強化の意向を示す一方、「許可条件の厳格化・縮小」も16.8%ありました。

制度をつくって終わりではなく、運用の設計が問われる段階に入っています。

副業・兼業制度を導入する5つのステップ

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2018年1月策定、2020年9月改定、2022年7月改定)とモデル就業規則を踏まえると、導入は次の順序で進めるのが実務的です。

  1. 目的と適用範囲を決める:社外経験による能力開発、人材定着、採用力の強化など、自社が副業・兼業に何を期待するかを言語化します。対象とする雇用区分や、機微情報を扱う職務など慎重な判断が必要な範囲もここで整理します。

  2. 就業規則を整備する:厚生労働省のモデル就業規則第70条は「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」と定め、許可制ではなく届出制を基本としています。そのうえで同条第2項は、労務提供上の支障がある場合、企業秘密が漏洩する場合、会社の名誉や信用を損なう行為・信頼関係を破壊する行為がある場合、競業により企業の利益を害する場合の4つを、禁止または制限できる場合として挙げています。この4類型を自社の規程に明記します。

  3. 届出と確認のフローをつくる:副業先の事業内容、従事する業務、契約形態(雇用か非雇用か)、想定される労働時間などを届け出てもらい、上記4類型に該当しないかを確認する流れを整えます。雇用契約を伴う副業かどうかで、後述する労働時間の通算義務の有無が変わります。

  4. 労働時間の通算と健康管理の運用を決める:原則的な通算方法によるか、簡便な「管理モデル」を用いるかを選び、他社での労働時間を本人の申告で把握する仕組みを整えます。あわせて健康診断や長時間労働者への面接指導など、労働安全衛生法上の措置につなげます。

  5. 公表し、学びの還元までを設計する:2022年7月の改定で、副業・兼業を許容しているか、条件付きであればその条件を自社のホームページ等で公表することが望ましいと示されました。社外で得た知見を社内で共有する報告の場まで設計すると、育成施策としての効果が見えやすくなります。

実務の要は「労働時間の通算」

労働基準法第38条第1項は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めており、これは事業主が異なる場合も含みます。

厚生労働省の整理では、所定労働時間は労働契約を締結した先後の順に通算し、所定外労働時間は実際に行われた順に通算します。

この管理を簡便にする方法が「管理モデル」です。先に契約した企業の法定外労働時間と、後から契約した企業の労働時間の合計を、単月100時間未満・複数月平均80時間以内の範囲に収まるようあらかじめ設定し、それぞれの企業が自社の枠内で割増賃金を支払います。

健康管理については、他社の労働時間を本人の申告により把握し、自社の労働時間と通算した時間に基づいて健康確保措置を実施することが適当とされています。

導入前に押さえたい注意点と制度見直しの動向

保険関係の扱いも確認が必要です。労災保険は複数事業労働者について全就業先の賃金を基礎に給付が算定され、複数の事業の業務上の負荷を総合的に評価して認定判断が行われます。

雇用保険は2022年1月から、65歳以上の人が本人の申出により複数事業所の労働時間を合算して適用を受けられる制度が始まりました。

社会保険は事業所ごとに適用要件を判断し、複数の事業所で要件を満たす場合はいずれかを選択したうえで報酬を合算して標準報酬月額を算定します。

労働時間の通算ルールそのものについては、見直しの議論が続いています。厚生労働省は2025年1月8日に「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表し、労働基準法等の見直しに向けた検討を進めてきました。

2026年3月13日の第207回労働政策審議会労働条件分科会では、使用者側の委員から、本業で8時間働くと副業先での労働が直ちに時間外労働として扱われる現行の仕組みが副業・兼業の受け入れをためらわせる要因になっているとして、副業先の事業場における1日8時間を基準に判断するなど制度を検討する余地があるとの意見が示されました。

ただし、見直しの内容や実施時期は確定していません。制度設計にあたっては、最新の状況を厚生労働省の公表資料で確認したうえで、現行ルールを前提に運用を組むことが重要です。

まとめ

副業・兼業制度は、目的の明確化、就業規則の整備、届出フローの構築、労働時間通算と健康管理の運用、公表と学びの還元という5つのステップで整理できます。

とくに労働時間の通算は制度の可否を左右する実務上の山場であり、管理モデルの活用や届出内容の設計であらかじめ負担を抑えられます。

制度見直しの議論も続いているため、年に一度は規程と運用を点検する体制にしておくと安心です。

リスキリングドットコムの視点

これはリスキリングドットコムとしての見解ですが、副業・兼業制度の価値は「認めるかどうか」ではなく「何を持ち帰ってもらうか」の設計にあると考えます。

大企業の容認率が54.6%まで進んだ一方で、許可条件を厳格化・縮小する方向の企業も16.8%あるという結果は、目的が曖昧なまま解禁した制度が運用段階でつまずいている可能性を示しています。

社外の現場でしか得られない経験は、研修では代替しにくい学びです。届出の様式に「この副業で何を学びたいか」を書く欄を一行加える、帰任後に社内で共有する場を用意するといった小さな設計が、制度を労務管理の負担から人材育成の資産に変えていきます。

まずは労働時間の通算という実務の土台を固めたうえで、学びの還元までを一続きで設計することが求められます。

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