スキルマップの作り方【2026年最新】厚労省の職業能力評価基準を使う5ステップ

最終更新日:2026.09.16

社員のスキルを一覧で把握する「スキルマップ」は、配置や育成計画の土台になります。一方で「項目をゼロから作るのが大変」「作ったまま使われない」という声も少なくありません。

この記事では、厚生労働省が公開している「職業能力評価基準」を下敷きにして、スキルマップを作る5つのステップと、運用でつまずかないための注意点を整理します。

スキルマップとは|職業能力評価基準を使うと早い理由

スキルマップとは、業務に必要なスキルを行、社員を列に並べ、それぞれの習熟度を一覧にした表です。誰がどの業務をどのレベルでこなせるかが見えるため、配置の検討や育成の優先順位づけに使われます。

項目づくりの出発点として使いやすいのが、厚生労働省の「職業能力評価基準」です。仕事に必要な「知識」と「技術・技能」に加え、「成果につながる職務行動例」を業種別・職種別に整理したもので、平成14年度から整備が進められています。

策定業種一覧では、業種横断的な事務系9職種(経営戦略、人事・人材開発・労務管理、経理、情報システム、営業・マーケティングなど)と56業種の計65業種が掲載されています。

基準は、仕事を「職種→職務→能力ユニット→能力細目」と細かく分け、それぞれに「職務遂行のための基準(行動例)」と「必要な知識」をひもづける構成です。

スキルマップの行(評価項目)をそのまま借りられるため、ゼロから洗い出す手間を大きく減らせます。能力の段階は、次の4つのレベルで区分されています。

レベル役割の目安(職業能力評価基準の区分を要約)
レベル1担当者として、上司の指示・助言を踏まえて日々の業務を確実に行う
レベル2チームの中心メンバーとして、自ら判断・改善・提案しながら業務を行う
レベル3中小規模組織の責任者や高度専門職として、管理運営や計画作成、問題解決を担う
レベル4大規模組織の責任者や最高度の専門職として、広範な判断と意思決定を行う

スキルマップの作り方5ステップ

  1. 目的と対象を決める:配置の見直し、育成計画、人事考課のどれに使うのかを先に決め、対象の部署・職種を絞ります。目的によって、必要な項目の細かさや評価の頻度が変わるためです。
  2. 自社に近い業種・職種の基準を選ぶ:厚労省のページから該当業種の基準データを入手し、「全体構成」「職種別能力ユニット一覧」で自社の仕事に近い職務を探します。事務系職種と16業種には、キャリアマップや職業能力評価シート、導入・活用マニュアルも用意されています。
  3. 項目を取捨選択し、自社の言葉に置き換える:能力ユニットの中から自社で実際に求める項目だけを残し、社内用語に書き換えます。厚労省も、自社の実情に合わせたカスタマイズが効果的としています。項目を増やしすぎると評価が形だけになりやすいため、まずは1職種で試すのが現実的です。
  4. 本人評価と上司評価を行う:職業能力評価シートと同じように、本人と上司がそれぞれ別に評価します。レベルの判断は行動例(職務遂行のための基準)に照らして行い、「できる・一部できる・できない」など判定の基準をそろえておきます。
  5. 面談で差をすり合わせ、育成計画につなげる:本人と上司の評価が食い違った項目は、面談で理由を話し合います。個人の結果を集計すれば組織全体の弱い領域が見えるので、研修テーマや配置、キャリアマップによる成長の道筋づくりに反映させます。

データで見る「職業能力評価」の現状

厚生労働省が2026年7月31日に公表した令和7年度「能力開発基本調査」によると、職業能力評価を行っている事業所は54.5%で、行っていない事業所は45.1%でした。

正社員に評価を行う事業所の割合は54.0%で、近年はほぼ横ばいとしています。

評価を行う事業所での使い道は、「人事考課の判断基準」が86.2%と最も多く、「人材配置の適正化」が55.9%、「労働者に必要な能力開発の目標」は36.7%でした。

また、人材育成に何らかの問題があるとする事業所は80.1%で、問題の内訳は「指導する人材が不足している」が59.5%で最も多くなっています。

運用でつまずかないための注意点

1つ目は、評価と処遇の関係を最初に説明することです。結果を賃金や昇格にどう使うのかが曖昧なままだと、本人評価が控えめになったり、逆に高めに付けられたりしやすくなります。

2つ目は、定期的に項目を見直すことです。業務内容やツールが変われば必要なスキルも変わります。特にデジタル・AI関連のスキルは、職業能力評価基準だけではカバーしきれない場合があります。

経済産業省とIPAの「デジタルスキル標準」を組み合わせる方法も考えられます。

3つ目は、評価者である上司の負担を見込むことです。指導する人材の不足を課題に挙げる事業所が多いことを踏まえ、評価項目を絞る、面談の進め方をそろえるなど、上司が続けられる設計にしておくことが大切です。

育成施策の成果をどう確かめるかは「研修の効果測定の進め方」も参考になります。

まとめ

スキルマップは、厚労省の職業能力評価基準を下敷きにすれば、項目づくりの負担を抑えて始められます。目的を決め、近い職種の基準を選び、自社向けに絞り込み、本人と上司で評価し、面談を経て育成に生かす。

この5ステップを1職種で回し、手応えを確かめてから対象を広げるのが進めやすい方法です。基準データや評価シートの最新版は、厚生労働省の公式ページで確認してください。

リスキリングドットコムの視点

ここからは編集部の見解です。調査では、職業能力評価の使い道が人事考課に大きく偏り、「能力開発の目標」としての活用は4割弱にとどまりました。

スキルマップを査定の道具としてだけ使うと、社員にとっては「点を付けられる表」になりがちです。リスキリングにつなげるなら、評価の結果を「次に何を学ぶか」の対話に使うことが欠かせないと考えます。

完璧な項目表を目指すより、まずは1つの職種で本人と上司が話し合うきっかけとして使い始める。その積み重ねが、学びが配置やキャリアにつながる組織づくりの近道になるのではないでしょうか。

出典元

厚生労働省「職業能力評価基準」
厚生労働省「職業能力評価基準の策定業種一覧」
厚生労働省「キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード」
厚生労働省「職業能力評価シートについて」
厚生労働省「キャリアマップについて」
厚生労働省「職業能力評価基準の構成」(PDF)
厚生労働省「令和7年度『能力開発基本調査』の結果を公表します」(2026年7月31日)