東京都はたらく女性スクエア主催、次原悦子氏×山中雅恵氏が語る、働く女性のキャリアデザインについて
最終更新日:2024.12.20
働く女性を取り巻く環境が大きく変化する現代において、自分らしいキャリアをどのように描いていくべきか。
2024年12月11日(水)東京都はたらく女性スクエアが主催する、東京はたじょセミナー「キャリアは自分でデザインできる!〜これからの時代に求められる“学び”とは〜」にて、株式会社サニーサイドアップグループ代表取締役社長の次原悦子氏と、ロート製薬株式会社取締役チーフトランスフォーメーションオフィサーの山中雅恵氏をゲストに迎え、働く女性へ向けて講演を行いました。
異なるフィールドで活躍する両氏が、自身の経験をもとにキャリアや生き方を切り開くためのヒントを熱く語りました。
また、両氏から語られた『リスキリングの重要性や企業がリスキリングを実装する方法』に関する記事は下記からご覧いただけます。
出演者のプロフィール | |
10代で現サニーサイドアップを創業。「たのしいさわぎをおこしたい」をスローガンに、様々な企業や自治体などのPRコミュニケーションのほか、アスリートマネジメントを手がける。コミュニケーションの力を活用し、SDGs採択以前からダイバーシティ推進をはじめとした多くのソーシャルアクションを推進。2021年、経団連ダイバーシティ推進委員長就任。2022年、国際PR協会(IPRA)会長を務め、2024年、経団連審議員会副議長に就任。同社は、2008年に株式会社(現在は東証スタンダード市場に上場)。2020年にホールディングス体制へ移行。2023年、東京都が主催する「令和5年度東京都女性活躍推進大賞」受賞。2024年、国際認証制度「B Corp」認証取得 |
ロート製薬株式会社 取締役チーフトランスフォーメーションオフィサー CX/DX 推進マネジメントディレクター 兼 戦略 デザイン本部 エグゼクティブデザイナー 山中 雅恵 氏 日本アイ・ビー・エム株式会社に入社、 女性初の大手法人営業担当後、 IBM Asia Pacific 社長補佐、 IBM General Business 製造業担当営業部長等に従事。その後、日本マイク ロソフト株式会社で業務執行役員流通サービス統括本部長、 LIXIL ジャパンカンパニーで執行役員特需開発事業部長を歴任。 2017 年パナソニック株式会社入社。 B2B ソリューション事業 (現、パナソニック コネクト)の柱となる 「現場プロセス」関連のビジネスや Blue Yonder の日本事業を推進。 2024 年 5 月ロート製薬に入社。 CX も含む全社の構造改革に取り組んでいる。 |
はたらく女性スクエアとは? |
出典元:はたらく女性スクエア公式HP はたらく女性スクエアは、2024年9月東京都労働相談情報センターの新しいブランチとしてオープンしました。 日々頑張っている女性が、ほっとできて元気になれる場所を目指しキャリア相談や労働相談などを通じて、女性の活躍をサポートしています。 |
1社の経営一筋と大手企業転職 – 対照的な2人の歩み
司会(以下、──):まずは自己紹介を兼ねて、これまでのキャリアについてお聞かせください。
次原悦子氏(以下、次原氏):「17歳で母のPR会社を手伝うことからキャリアをスタートしました。1985年、男女雇用機会均等法が制定された年に今のサニーサイドアップグループを創業し、まだ十代のうちに事実上現場を引き継ぎ、40年間右肩上がりで会社を継続できたことが1番の誇りですね。特に1995年頃からアスリートマネジメント事業を始めたのが大きな転機で、北島康介、中田英寿、上田桃子など、出会った時にはマイナーだった選手たちをPRの手法でブランド化し、その先にビジネスを作っていきました。この事業で会社は大きく成長し、2008年に会社が上場しました。」
山中雅恵氏(以下、山中氏):「私は結婚しても絶対に働き続けると決めていたんですね。なので、当時から男女の給与に差がなかった日本アイ・ビー・エム株式会社に新卒で入社し、350人女性がいる中で11人だけの大手法人担当の営業職からキャリアをスタートしています。20年ほど勤務した後、日本マイクロソフト株式会社、株式会社LIXIL、パナソニック コネクト株式会社と大企業を渡り歩きました。現在はロート製薬株式会社で取締役を務めており、女性が多い環境なので毎日ワクワクしながら出勤してます(笑)」
女性であることの壁と、それを乗り越える力
──女性であることで障壁を感じた経験はありますか?
次原氏:「子供が生まれてから、男性経営者の方たちとの繋がりで、羨ましいなと思ったことがあります。女性は会社で仕事して経営をして、家に帰るとまた別の大きな仕事が待っていることが、当時私の周囲では多かったんです。私はシングルマザーだったため、母親やベビーシッター、お手伝いさんの力を借りましたが、それでも家でのタイムマネジメント、人間関係のマネジメントなど、母親にしかできないことがたくさんありました。」
山中氏:「重要な役職を決定するディスカッションの場で、私以外は全員男性で、こういった重要な意思決定の場では女性が少ないと感じていましたね。常に“男の世界だ”という空気感の、稼ぐ部門にいて、女性は幹部候補には滅多になれない。今でもその壁を乗り越えていかないとこの先はないなと思っています。母親になってからは、自分で時間がコントロールできないじゃないですか。会議が長引くと子供のお迎えの時間に影響してしまうとか、些細なところに様々な障壁があるなと感じています。」
キャリアと子育ての両立のコツ
──キャリアを積みながら子育てを進めるコツはありますか?
山中氏:「この質問は1番答えがないんですよね。魔法はないんで、苦労するしかないなって思うんです。ただ、頼めるものは誰にでも頼むし、何でも使うっていうか。ママ友とも頼り合ってますね。例えば、自分が迎えに行けない時に助けてもらって、逆に自分に余裕がある時は預かってあげるとか。あと、無理しないこと、本当に。」
次原氏:「子供たちはとりあえず無事に20歳は過ぎましたが、教育や子育ては語れないなって思ってます。私も人に頼ることの大切さを感じていて、東京都にも色々なサービスがあると思いますし、抱えずに活用することも大切ですよね。子育ての成功とは何かを考えると、それは子供たちが人生の最後の瞬間に『幸せな人生だった、生まれてきてよかった』と思ってくれて初めて、私の子育ては成功って言うんだろうなと思います。」
得意分野外の仕事への挑戦と乗り越え方
──得意分野ではないと感じた仕事はありますか?それをどのように乗り越えてきましたか?
次原氏:「経営者と言っても、専門分野だけでは会社として成り立たっていかなかったので、若い頃は結構無理して、法的なことや経営的なこと、財務も含めて一生懸命自分でやっていましたね。でも、その時間を費やすぐらいなら、自分の得意なところに集中した方が会社のためになると気づいたんですよね。乗り越え方で言えば、自分よりもはるかにできる人を仲間に入れていったことです。
自分は自分の得意な部分に集中し、それ以外のところは自分よりもはるかにできる人材を採用しました。そこから会社の成長が始まったんですよね。」
山中氏:「転職すると大体得意じゃないことが出てきます。私の場合2つあって、1つはIT業界からいきなり建材事業の大手法人担当の事業部長になって、商材開発から生産とか分からないことだらけでしたね。2つ目は、担当するチームのサイズが一気に150人になって、中身が分からなくなり、自分でディテールに入りたいところもありましたが、そこは思い切って任せることを覚えました。
ただし、任せる代わりにちゃんと人を見るとか、それで違う意味で分かった気持ちにならない。 自分はメンバーのいい顔しか見てないんだ、本当は分かってないんだって思わないといけないなと思ってますね。」
スキルアップと学び続けることの重要性
──スキルアップや学び続けることについて、どのようにお考えですか?
次原氏:「40歳まで高卒だったんですよね。今でも学びの人生ですけど、 特にスポーツビジネスやマネジメント、PRの仕事をしていましたが、これらは新しいジャンルで学ぶものが少なかったんです。そこで、自分がやってきたことを学術的にまとめたいなって思いで、40歳の時に修士論文を大学に書きに行ったことはありましたね。
座学で学んだことと、自分が何十年もやってきたストリートで学んできたことが、学問にするとこうなるんだなと。ある意味、予習済みのものをお勉強できたっていう意味では、意味のある気づきだったかなと思います。学び続けるということは、日々終わることはないですね。今は無料で学べるアプリもいっぱいあるし、YouTubeを見ればなんでも学べる。学びたい欲がある人にとってみれば、本当に良い時代になったよね。」
山中氏:「業界が変わるタイミングが、本当に仕事の中での学びですね。30歳くらいの時に社会人向け学習サービスの基礎コースをほぼ全て取りました。海外の大学のMBAコースにも行けたので英語で論文書いて受かったんですけど、あまりに忙しくてお金をふいにしたみたいな。ただ、仕事って世の中に価値をこう出していこうって目的意識と勉強が紐づいてくるんで、社会人になってからの学びの方が、よっぽど腹落ちすると感じていますね。」
学び続けることがキャリアの選択肢に与える影響
──学び続けることが、キャリアの選択肢を広げる上でどのような効果があると感じていますか?
山中氏:「学びを世の中の価値に変えていくことが、一番自分の中に定着する方法かなと思ってます。私の場合は、マーケットの中で求められる自分になるにはどうしたら良いんだろうって発想を持ってますね。私の希少性が何かと言うと、女性で大企業の事業側でマネジメントをやってきたってことと、外資系と日本、両方の経営管理がわかることです。自分の中でこういういくつかの得意技を作っていくと得意技が複数になり、希少性の高い人材になって、それが自分のキャリアを作っていくみたいなところがあるので。外資系企業では常に『お前のマーケットバリューは何だよ』と問われるので、それを意識してきたってことと、学びと自分の市場価値は常に1つのものとして考えていますね。」
次原氏:「学ぶという言葉はなかなかしっくりは来ないんだけれど、私自身は究極のジェネラリストだと思っています。何か特別長けている才能があるわけでもなく、専門分野が全くないのだけれども、とにかくどんな球が出されても何となく返せるくらいの。あとは、多岐にわたるプロジェクトをやらせていただいているという意味では、ものすごく幅広く色々なことを知れてますね。そういう意味では、1個1個は浅いかもしれないけれども、幅広く色んなことの知識を持てるということには、絶えず一生懸命アンテナを張っていますね。」
次原悦子氏と山中雅恵氏が注目している学びの分野
──現在お二人が注目している学び、次に学びたい分野をお聞かせいただけますか。
次原氏:「今、私の仕事には欠かせないのは、ChatGPTなんですよね。技術系のAIだと自分はデジタルには疎いっていう風に感じていたんだけど、最近になって全然違うなと思っていて。逆に、ものを書いたりとかコミュニケーションするのが得意な私たちのジャンルは、ChatGPTのやり取りの中でプロンプトをどう書けばどんな答えが出るかとか、それって実は結構得意なんですよね。
そういう意味で言うと、AIとの掛け合いはまさに、全く遠いところにいた私たちが『できるんじゃないか』って感じましたね。ChatGPTとは、毎日毎日色んなことを覚えさせながらたくさん会話をして、お仕事に役立っていますけど、もっと極めたいなと思いますね。」
山中氏:「ウェルビーイングとかヘルスケアって、興味がない人はいないと思うんですよね。とっても深いテーマだなと。仕事というだけでもなく、ここに関してはちゃんと学んでいきたいなと思ってます。」
時折、顔を見合わせながら楽しげに講演する次原氏と山中氏
これからの働く女性たちへのメッセージ
山中氏:「体とか健康、そして時間の使い方を意識すると人生変わると思っています。自分の市場価値を高めるために、常に学び続けることが大切です。自分の時間も限られてるので、本当に大切な人のために自分の心と時間を使って、頑張ってもらいたいなと思います。」
次原氏:「仕事してると嫌なこともたくさんありますよ。嫌なことも全部含めたとしても、ポジティブでいることが大切です。朝、会社に来たら誰よりも大きい声で『おはよう!』と言っていつも笑っていると、ポジティブな人も集まってくれる。そうすると、またポジティブなことも起こったりもします。40年間振り返って、つくづくそう思います。今日も元気に。明日も元気に。乗り越えていきましょう!」
次原氏と山中氏による本セミナーを通じて、キャリアに正解はなく、自分らしい道を切り拓いていくことの大切さが浮き彫りになりました。両氏の経験から、働く女性たちが自分のキャリアをデザインし、輝く未来を創造していくためのヒントが詰まったセミナーとなりました。
イベント情報 |
名称 :東京はたじょセミナー『キャリアは自分でデザインできる! ~これからの時代に求められる”学び”とは~』
開催日時:2024年12月11日18:30-20:30 開催場所:東京都渋谷区神宮前5-53-67 はたらく女性スクエア 主催:東京都はたらく女性スクエア |