AI時代の幸せな「はたらき方」――パーソルホールディングス グループデジタル変革推進本部本部長 朝比奈ゆり子氏インタビュー

インタビュー

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最終更新日:2024.05.31

進むべき方向性を「テクノロジードリブンの人材サービス企業」と定め、テクノロジーの活用によってサービスの価値を高めるとともに、”新たな価値の創造”を目指す戦略を掲げるパーソルグループ。独自の学習プログラムやキャリア形成の考え方について、グループデジタル変革推進本部本部長の朝比奈ゆり子さんに話を伺いました。

Photography:TOSHIYUKI MAEGAWA
Edit & Text: ERIKO AZUMA

 

アシスタントとしてChatGPTを日常に

ー御社独自の生成AIの活用について教えてください。

(朝比奈) 昨年8月から、内製開発したパーソル独自のChatGPTを導入しています。国内37のグループ会社
(2024年5月時点)で使える汎用的なもので、幅広い業務に活用されています。仕事の高度化、効率化だけでなく、目標設定や企画作成の壁打ち相手など、アシスタントのようなイメージで、活用してほしいですね。

 

 

ー生成AIを活用した、御社独自の教育プログラムについて教えていただけますか?

(朝比奈) まだ手探りではあるのですが、原理などを学びたい人を対象に講師を招いて講座を開いたり、「プロンプトカップ」という、社員同士が生成AIに入力するプロンプトを共有して学び合うようなイベントを開催しています。昨年は生成AIパスポート試験の団体受験に挑戦しました。勉強が大変なので応募者がいるか心配していたのですが、多くのグループ会社から希望者が手を挙げてくれて、約200人が受験しました。

 

 

ー生成AIの普及で、仕事の内容は変わっていくのでしょうか?

(朝比奈) 求められる仕事もどんどん変化していくと思います。まずは問いを立て、必要なことを形にして届けていく。仕事をする際に必要となる構想力や実行力は本質的に変わらないけれど、生成AIによってHOWが変化していくと思うので、そこをアップデートしていけばいいのではないでしょうか。

 

 

ーリスキリングの必要性について、どのようにお考えですか?

(朝比奈) リスキリングとアップスキリング、どちらも必要だと思います。リスキリングによって将来の可能性が広がるし、自身が望むはたらき方に近づくことができると思います。リスキリングによりデジタルリテラシーが高まれば、仕事だけでなく日常の様々な場面で効率化が進みますし、企業も作るべきサービスがシャープになってくるので社会の発達にも繋がると思います。

 

 

ー女性におすすめのリスキリングのジャンルはありますか?

(朝比奈) 特に女性だからというものはないのですが、未経験のジャンルにも尻込みせず積極的に挑戦してほしいです。デジタルやAIに苦手意識を持っている方もいるかもしれませんが、例えば最近は、SNSの写真の撮り方や編集に関して感度が高く、アプリなども積極的にアップデートしている方も増えていますよね? 情報収集のアンテナを、個人の楽しみとしてだけでなく同じ感覚で仕事にも活用してみてはどうでしょう。

 

 

ーリスキリング制度を積極的に活用していくために、どのようなモチベーションが必要でしょうか?

(朝比奈) 一番大切なのは、自ら積極的に学ぶ姿勢じゃないでしょうか。何かを学んでも、明日明後日にすぐに実力や収入が上がるわけではありません。将来への蓄えだと思って、ゆったり構えて少しずつ、学びを形にしていきましょう。

 

 

ーIT業界で活躍を続けている朝比奈さんは、どのようにキャリアを築いてきたのでしょうか?

(朝比奈) 学生時代は生意気だったので(笑)自分が会社員になるイメージが湧かず、就職活動はせずに大学院に進み、その途中で外資系のプロジェクトマネジメントソリューションベンダーに飛び込みました。ちょうどウィンドウズ95が出てきたインターネット創世記。営業アシスタントとしてワープロ打ちから始まり、パソコンの試作や社内のヘルプデスクを経て、プロダクト開発やローカライズなどに進みました。デジタル変革に伴い、IT技術がどんどん高度化していくのですが、私はプログラミングが苦手で、努力するほどにセンスのなさを実感していました。迷いましたが、私はエンジニアを応援する側に回ろうと決意して、社内で異動願いを出しました。

 

 

キャリア迷走期が次の仕事に繋がった

(朝比奈) そこからキャリアに迷い、プロダクトマーケティング、総務、人事、経理などを経験するのですが、キャリアチェンジすると年俸が下がるんです。一時期より年俸が200万円以上下がってしまい、辛い時期もありましたが、一から簿記を学んだりして勉強と挑戦を続けました。

 

 

ー38歳で初めての転職を経験されるんですよね

(朝比奈) 何度かM&Aされて経営方針が変わったことをきっかけに転職を決意。

色々やりすぎて、次が見えなかったのですが、転職先ではビジネスアナリストを提案されました。確かにITバックグラウンドもあるし、英語、マネジメント、人事、経理もできる。結果的に、迷いもすべて血肉になり、次のキャリアに繋がりました。その後日本企業に貢献したい、日本のIT業界にこれまでのキャリアで培ったスキルを還元したいと思うようになり、43歳の時に現パーソルキャリア(旧インテリジェンス)に転職し、今に至ります。

 

 

キャリアの棚卸しで次のステップへ

ービジネスパーソンとして成長するために必要なことは?

(朝比奈) どんな仕事にも共通するのはポータブルスキル。論理的に考えてアウトプットできる。コミュニケーションが取れることが基本です。その中で自分の強みを見極めて課題を整理していく、いわばキャリアの棚卸しが大切だと思います。失敗は再現性が高いので、何がその原因だったのかを整理して次に臨むこと、周囲の意見に耳を傾けることも大切です。次に進むべきステップが見えない時は、今の仕事をもっと楽にするには?もっといいものを作るには?そんな風に考えるだけで、前に進んでいけるのではないでしょうか。

 

 

ー転職に悩んでいる方へメッセージをお願いします。

(朝比奈) 以前は転職には年齢の壁があると言われていましたが、今はその人が転職したいと思う時がタイミング。年齢にとらわれず、その時々にどういう価値を創っていきたいかで仕事を選んでいけばいいと思います。忘れないでいただきたいのが、会社が人を選ぶだけではなく、はたらく人も会社を選ぶ、フラットな関係だということ。会社が目指すビジョンと価値に共感できたらそこにいればいいし、違うと思ったら場所を変えればいい。その時の選択肢や可能性を広げるために、リスキリングやアンラーニングを心がけていくことが大切なのではないでしょうか。

 

 

パーソルグループってどんな会社?

求職者と企業を結びつける人材サービスなど、労働、雇用の課題解決に総合的に取り組む事業を展開。「“はたらくWell-being”創造カンパニー」を目指すための事業成長のエンジンに「人的資本」と「テクノロジー」を掲げており、リスキリングとアップスキリングの両面で社員の育成に注力し、テクノロジー人材拡充に取り組んでいます。2023年には、グループ会社37社が使用する社内GPTを導入したことでも注目を集めました。

 

 

パーソル独自の生成AI学習プログラムとは?

対象に応じていくつかのレベルに分け、外部から講師を招いての研修や、社員たちが楽しみながら情報交換できるイペントなどを開催。社員が主体的に学べる環境を作っています。

あらゆる分野に共通するマインドスタンスをべースに、一人ひとりの段階的なアップスキルを目指すことで企業の生産性を向上し、結果としてグループ全体の効率性の向上を目指します。

 

 

はたらいて、笑おう。
パーソルグループで新しいはたらき方を見つけませんか?
https://www.persol-group.co.jp/recruit/group/

 

インタビュアー

パーソルホールディングス グループデジタル変革推進本部
本部長 朝比奈ゆり子さん

(経歴)

1996年 アルバイトとして外資系プロジェクトマネジメントソリューションベンダーに入社。営業アシスタントなどを務める。
1997年~アルバイトを経て同社の正社員に。製品開発、マーケティング、経理など幅広く担当する。
2008年~外資系ITセキュリティ会社2社に転職。コーポレートIT部門長などを務める。
2014年〜パーソルキャリア入社。アルバイトサービス「an」のIT責任者に就任。
2018年~パーソルホールディングスへ転籍し、新規事業創造・オープンイノベーション推進を担う新会社パーソルイノベーションの法人設立に従事。
2020年〜パーソルホールディングス グループデジタル変革推進本部ビジネスITアーキテクト部部長としてコーポレートIT部門の組織変革を推進。
2021年~現在 グループデジタル変革推進本部長に就任。オリジナルの生成AIを導入するなど、パーソルグループのDXを牽引する。