「AIで夢を諦めない未来へ」 生成AI女性リーダーが語る、リスキリングの極意

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最終更新日:2024.08.21

リスキリングの重要性が叫ばれる今、生成AIの登場は、私たちに更なる変化とチャンスをもたらしている。しかし、この大きな波を前に、「何をどう学べばいいのかわからない」「本当に自分にもできるのだろうか」と不安を感じている人も少なくないだろう。

「AIは、私たちが夢を諦めない未来を実現するための、強力なパートナーなんです」と語るのは、生成AIのスペシャリストとして活躍するCynthialy株式会社CEO國本知里氏だ。

最前線で活躍する國本氏に、未来への展望を聞いた。

生成AI時代に求められる多様性

國本氏は、大手企業向けの生成AI活用支援・活用スキルを向上させる人材育成支援を行うCynthialyの代表を務めるかたわら、Women AI Initiativeというコミュニティを立ち上げ、生成AI分野における女性の活躍を支援している。

「生成AIの分野は、まだまだ男性社会という側面があります。でも、AIを開発し、活用していく上で、女性の視点を取り入れることは本当に重要なんです」

國本氏がWomen AI Initiativeを立ち上げた背景には、自身の経験からくる強い想いがある。ある生成AI関連のカンファレンスを企画した際、國本氏自身を除いて、候補者が全員男性であることに気づき、強い危機感を抱いたという。

「さすがにこれはまずいんじゃないか、と。AIは、学習データの偏りによって、偏ったアウトプットを生み出す可能性があります。過去のデータが男性社会のビジネス慣習に基づいていると、女性にとっては不公平な結果をもたらす可能性もある。だから、多様な価値観をAI開発に取り入れていくために、女性の参画は不可欠なんです」

Women AI Initiativeでは、AI分野で活躍する女性リーダーたちのイベントや勉強会などを開催し、参加者同士の交流や情報共有を促進している。フランクな交流の場も設け、参加者同士が気軽に相談したり、励まし合ったりできる環境づくりにも力を入れている。

「この活動を通して、一人でも多くの女性がAIスキルを身につけ、自分らしいキャリアを築き、そして社会全体をより良い方向へ変えていってほしい。それが私の願いです」

企業が取り組むべきリスキリング戦略

では、企業は生成AI時代にどのようなリスキリングに取り組むべきなのか。國本氏は、「従来型の業務効率化だけでなく、生成AIによって生まれた時間をどのように活用するかが重要」だと指摘する。

「例えば、営業担当者が生成AIによって資料作成の時間を短縮できたとします。でも、そこで満足してしまってはもったいない。その時間を、顧客とのコミュニケーションや新たな提案を考える時間に充てることができれば、より大きな成果を生み出せるはずです」

そのために必要不可欠だと國本氏が強調するのが、トップダウンでの推進と評価制度の見直しだ。

「経営層が率先して生成AIの可能性を理解し、全社的な活用を推進していくことが重要です。また、生成AIを活用した成果を適切に評価できるような制度を整備することで、従業員のモチベーション向上につなげていくことも必要でしょう」

実際にご支援している企業では、生成AIの活用によって顧客との接触時間を大幅に増やすことに成功。顧客との関係性が強化され、成約率向上につながっているという。

個人が身につけるべき「5K」と、AIと共存する未来

企業がリスキリングを推進する一方で、私たち一人ひとりもまた、生成AI時代に必要とされるスキルを身につける必要がある。國本氏は、生成AIを使いこなすために必要なスキルとして「5K」を挙げる。

好奇心 生成AIの可能性を探求し、「何ができるのか」「何に使いたいのか」という好奇心を持ち続ける。
仮説思考 生成AIに指示を出す前に、どのような結果が欲しいのか、どのような質問をすれば良いのかを仮説立てておく。
解像度の高さ 生成AIに曖昧な指示ではなく、具体的で明確な指示を出すために、聞きたいことへの解像度を高める。
構造化 生成AIへの指示を構造化し、前提知識やアウトプット形式などを明確にすることで、より精度の高い結果を得る。
教養 生成AIが出した結果が正しいかどうかを判断するのは人間。幅広い分野における教養を身につけておくことが重要になる。

國本氏は、「生成AIはあくまでツールであり、それを使うのは人間です。生成AIを使いこなすためには、これらのスキルに加えて、人間性や業務知識といった、AIには代替できない強みを磨くことも重要です」と強調する。

変化を恐れず常に学び続ける姿勢を大切に

「生成AIは、私たちに新たな可能性を与えてくれる存在です。例えば、これまで時間やスキルの制約で諦めていたことに挑戦したり、複数の仕事を両立させたりすることが可能になります。

もちろん、生成AIが出力したものをそのまま使うわけではありません。あくまでベースとして活用し、そこに自分の経験や想いを加えることで、より質の高いアウトプットを生み出せると思っています」

変化を恐れず、常に学び続ける姿勢を持つこと。そして、國本氏の言葉のように、「AIを、私たちが夢を諦めない未来を実現するための、強力なパートナー」と捉えていくこと。それが、生成AI時代を生き抜くための鍵となるだろう。