主要AI5種、返品・保証案内の4割が正答できず 企業に求められるAI回答の検証体制
最終更新日:2026.07.22
生成AIを業務や顧客対応に活用する企業が増えるなか、回答内容だけでなく、参照した情報の正確性をどのように担保するかが課題となっています。
Stellagent株式会社が、家電量販店の返品・保証ポリシーについて主要AIサービス5種を検証したところ、100の質問パターンのうち、正しく案内できたのは60.0%でした。残る40.0%は、誤答が25.0%、具体的に回答できなかったケースが15.0%となっています。
家電量販店5社と主要AI5種を調査
調査は2026年7月21日に実施されました。
対象となった家電量販店は、ビックカメラ、ヨドバシカメラ、ヤマダデンキ、ケーズデンキ、エディオンの5社です。AIサービスは、ChatGPT、Claude、Gemini、Perplexity、Microsoft Copilotの5種を対象としました。
「初期不良時の返品・交換」「長期保証の年数と補償率」「ポイント払い分の返金」「エアコン保証修理」の4つのシナリオについて、5社×5種のAI×4シナリオ、合計100パターンを評価しています。
各質問は原則として2回実行し、判定の揺れや出典の問題などが見られた場合は3回目を追加。合計268件の回答ログを、各社の公式FAQや規約、保証ページと照合しました。
15%には実害につながる可能性のある誤答
100パターンのうち、正答は60件、誤答は25件、回答不能は15件でした。
誤答25件のうち15件では、利用者の行動や企業への問い合わせに影響する可能性がある「実害リスク」が確認されています。
具体的には、返品・交換が可能な期限を公式情報より長く案内する、長期保証の年数を実際より長く回答する、補償範囲を実態より広く見せるといったケースが含まれていました。
シナリオ別では、「長期保証の年数・補償率」の正答率が48.0%と最も低い結果になりました。企業ごとに保証制度の名称や年数、無料・有料の区分などが異なり、AIが古い規約や別の制度を参照しやすい領域だと考えられます。
回答が正しくても出典に問題があるケース
今回の調査で注目されるのは、回答の正誤だけではありません。
存在しないURLや非公式サイト、公式サイトではあるものの質問と異なるページなど、出典に問題が含まれていた質問パターンは62.0%に上りました。
出典の問題は、誤答だけでなく正答にも含まれています。つまり、AIが結果として正しい回答を示していても、その根拠となる情報源が適切とは限りません。
企業が生成AIの回答を確認する際には、「URLが表示されているか」だけでなく、公式情報か、質問に対応したページか、最新の規約かという点まで検証する必要があります。
企業に求められるのは「AIに読まれる情報」の整備
今回の結果は、生成AIを使わないことを求めるものではありません。重要なのは、AIが正確に回答できる環境と運用体制を企業側が整えることです。
返品、初期不良、保証、ポイント返金などは、似た用語が多く、条件も複雑です。人間には理解できるFAQでも、情報が複数のページに分散していたり、古い規約が検索可能な状態で残っていたりすると、AIが異なる制度を混同する可能性があります。
公式FAQや規約は、人間にとって読みやすいだけでなく、AIが内容や適用条件を区別しやすい構造にすることが求められます。
また、顧客対応にAIを使う場合は、回答できない質問に対して推測させない設計も重要です。「分からない」と回答したうえで、確認先や問い合わせ窓口、必要な情報を案内する仕組みが、誤案内の防止につながります。
リスキリングドットコムの見解
生成AIの業務活用が広がるほど、従業員に求められる能力は、プロンプトを入力する技術だけではなくなります。
AIの回答と出典を照合する力、公式情報と非公式情報を見分ける力、古い情報を特定する力、回答できない領域を人に引き継ぐ判断力が必要です。
企業は、AIツールの操作研修だけでなく、出典確認やファクトチェック、回答の承認フロー、誤答発生時の対応まで含めたAIリテラシー教育を設計する必要があります。
同時に、AIが正確に利用できるよう、社内規程や商品情報、顧客対応マニュアルを整理し、更新責任者を明確にすることも重要です。
AI活用の成否は、モデルの性能だけでは決まりません。人材育成、情報管理、業務フローを一体として設計できるかが、企業のAIガバナンスを左右するといえるでしょう。
なお、本調査は2026年7月21日時点の探索的調査であり、統計的な一般化を目的としたものではありません。AIごとにモデルや契約プラン、検索設定などの条件が異なるため、特定のAIサービスの優劣を示す結果ではない点にも注意が必要です。



