【2026年最新】高年齢者雇用安定法とシニアのリスキリング|70歳就業確保措置と助成金

最終更新日:2026.08.24

2025年4月に経過措置が終了し、企業は希望者全員を65歳まで雇用する義務を負うようになりました。次の焦点は「70歳まで」の就業確保措置と、長く働くシニア人材のリスキリングです。

この記事では、2026年時点の最新データと制度をもとに、高年齢者雇用安定法の要点、企業の実施状況、実務の進め方、活用できる助成金を整理します。

65歳までは「義務」、70歳までは「努力義務」

高年齢者雇用安定法は、定年を65歳未満と定めている事業主に対し、①定年制の廃止、②65歳までの定年引上げ、③希望者全員を対象とする65歳までの継続雇用制度の導入、のいずれかを講じることを義務づけています。

かつては労使協定で継続雇用の対象者を限定できる経過措置がありましたが、これは2025年3月31日で終了しました。

2025年4月1日以降は、希望者全員に65歳までの雇用機会を確保する必要があります。ただし厚生労働省は、これは「定年を65歳にすること」を義務づけるものではないとしています。

一方、70歳までの高年齢者就業確保措置は努力義務です。措置は5種類あり、70歳までの定年引上げ、定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度の導入に加えて、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度、70歳まで社会貢献事業に従事できる制度が認められています。

後者2つは「創業支援等措置」と呼ばれ、実施計画を作成したうえで過半数労働組合または労働者の過半数を代表する者の同意を得る必要があります。

データで見る実施状況|70歳までの措置は34.8%

厚生労働省が2025年12月19日に公表した令和7年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果によると、2025年6月1日時点で常時21人以上を雇用する企業237,739社(中小企業220,466社、大企業17,273社)のうち、65歳までの雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%でした。

措置の内訳は継続雇用制度の導入が65.1%(前年比2.3ポイント減)、定年の引上げが31.0%(同2.3ポイント増)で、定年そのものを引き上げる企業が増えています。

65歳以上を定年とする企業(定年制の廃止を含む)は34.9%(同2.3ポイント増)でした。

これに対し、70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は34.8%(同2.9ポイント増)にとどまります。

規模別では中小企業35.2%、大企業29.5%で、中小企業のほうが実施率は高い状況です。人手不足を背景に、規模の小さい企業ほど高年齢者の戦力化を先行させている構図がうかがえます。

【比較表】65歳までの措置と70歳までの措置の違い

項目65歳までの雇用確保措置70歳までの就業確保措置
法的性格義務努力義務
対象となる事業主定年を65歳未満と定めている事業主定年を70歳未満と定めている事業主、65歳までの継続雇用制度を導入している事業主など
措置の種類①定年制の廃止 ②65歳までの定年引上げ ③希望者全員の継続雇用制度の導入①70歳までの定年引上げ ②定年制の廃止 ③70歳までの継続雇用制度の導入 ④業務委託契約を締結する制度 ⑤社会貢献事業に従事できる制度
労使の同意法律上の同意要件はなし④⑤(創業支援等措置)は計画作成と過半数労働組合等の同意が必要
実施率(令和7年報告)99.9%34.8%

2026年に押さえたい制度変更|高年齢雇用継続給付は上限10%へ

実務で影響が大きいのが、高年齢雇用継続給付の縮小です。厚生労働省は2025年4月1日から支給率を変更しており、60歳に達した日が2025年3月31日以前の人は従来どおり賃金の15%を限度とする一方、2025年4月1日以降に60歳に達した人は10%が限度となります。

定年後に賃金を大きく下げ、公的給付で補う設計は成り立ちにくくなっており、仕事の内容と処遇そのものを見直す必要性が高まっています。

国の方向性も示されています。2026年3月31日に告示された「高年齢者等職業安定対策基本方針」(令和8年度から令和11年度までの4年間)は、60〜64歳の就業率79.0%以上、65〜69歳の就業率57.0%以上、70歳までの就業確保措置の実施率40.0%以上という目標を掲げています。

同方針は事業主が講ずべき措置として、デジタル化への対応を含む新たなスキル習得の支援、OJTを組み込んだ実践的な職業能力開発機会の確保、教育訓練給付制度の活用推進などを挙げています。

高年齢者施策が「雇用の維持」から「能力開発」へ広がっていることが読み取れます。

シニア人材のリスキリングを進める4ステップ

  1. 職務の棚卸し:60歳以降に任せる業務を「これまでの延長」で決めず、事業計画から逆算して切り出します。定型業務の縮小と、技能伝承・品質管理・顧客対応など経験が効く領域への配置を分けて考えます。
  2. スキルギャップの可視化:必要なスキルと現状の差を職務ごとに整理します。デジタル基礎(社内システム、データ入力・集計)と生成AIの業務活用は、年齢を問わず共通の土台になります。
  3. 学習機会の設計:集合研修だけに頼らず、実務に紐づくOJTと短時間の反復学習を組み合わせます。基本方針が示すとおり、外部の教育訓練機関や教育訓練給付の活用も選択肢です。
  4. 評価・処遇への接続:学んだ結果が役割と処遇に反映されなければ学習は定着しません。60歳以降の評価制度や賃金テーブルの見直しとセットで設計することが重要です。

費用面では、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の「65歳超雇用推進助成金」が使えます。

定年引上げや定年制の廃止などを対象とする「65歳超継続雇用促進コース」、高年齢者の評価制度や雇用管理制度の整備を対象とする「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」、有期契約者の無期転換を対象とする「高年齢者無期雇用転換コース」の3コース構成です。

評価制度等雇用管理改善コースの令和8年度の支給額は、実施する措置の区分に応じて中小企業事業主で30万円または60万円、中小企業事業主以外で23万円または45万円とされています。

JEEDは予算の状況により支給申請の受付を停止する場合があるとしており、申請期限や要件を含めて最新の内容は公式サイトで確認してください。

リスキリングドットコムの視点

リスキリングドットコムとしては、シニア雇用の議論を「何歳まで雇うか」から「どの仕事を任せるか」へ移す時期に来ていると考えます。

65歳までの措置は実施率99.9%とすでに横並びで、差がつくのは70歳までの設計と、その手前にある職務・スキルの再設計です。

継続雇用制度から定年引上げへ移行する企業が増えている事実は、雇用形態を変えるだけでは成果につながりにくいと多くの企業が気づき始めた表れとも読めます。

高年齢雇用継続給付の縮小も、処遇を給付で補う発想からの転換を促す要因です。50代のうちにデジタル基礎と生成AI活用を学び直す機会を用意し、60歳以降の役割と接続しておく。

この準備の有無が、10年後の人材ポートフォリオを大きく左右すると見ています。あくまで当サイトの見解ですが、シニアのリスキリングは福利厚生ではなく、人手不足下の経営戦略として位置づけるべき領域です。

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