企業向け研修市場6,075億円、3.7%増 人的資本経営・AI人材育成が追い風
最終更新日:2026.08.25
矢野経済研究所は2026年8月24日、国内の「企業向け研修サービス市場」に関する調査結果を公表しました。
2025年度の市場規模は事業者売上高ベースで6,075億円となり、前年度比3.7%増。2026年度はさらに3.7%増の6,300億円へ拡大すると予測されています。
市場拡大を支えているのは、人的資本経営を背景とした教育投資に加え、次世代リーダーの育成、人材定着、DX・AIなど最新技術に対応する人材育成です。
企業向け研修サービス市場は2025年度6,075億円
矢野経済研究所によると、2025年度の企業向け研修サービス市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比3.7%増の6,075億円と推計されています。
2026年度についても同3.7%増の6,300億円まで拡大する見通しです。
調査は2026年4月から7月にかけて、企業向け研修サービスを展開する事業者を対象に、直接面談、アンケート、文献調査を組み合わせて実施されました。
ここでいう「企業向け研修サービス」とは、企業向けに事業として提供される研修・教育サービスを指します。
公開研修やカスタマイズ研修などのクラスルーム形式に加え、通信教育、eラーニング、組織診断・アセスメントなどが対象です。一方、企業が自社の研修部署で社員向けに実施する教育は市場規模に含まれていません。
なぜ企業向け研修市場は拡大しているのか?
矢野経済研究所は、市場拡大を後押しする要因の一つとして人的資本経営の広がりを挙げています。
2022年度決算から人的資本に関する情報開示が義務化されたことなどを背景に、企業の教育投資ニーズが高まっているとしています。
特に需要が拡大しているのが、経営層や経営幹部候補となる次世代リーダーの育成です。
サクセッションプラン(後継者育成計画)に対応した研修への投資が活発になっています。
人材不足で「今いる社員を育てる」需要も高まる
就労人口の減少も、研修市場を押し上げています。
採用だけで必要な人材を確保することが難しくなるなか、企業では在籍社員をさらに戦力化するための人材育成や、定着・離職防止を目的とした教育への意欲が高い水準で推移しています。
新人研修だけではなく、若手・中堅社員、中間管理職、次世代経営幹部など、幅広い階層を対象にした研修需要が市場拡大につながっています。
AI・DXの普及も企業研修の需要を押し上げ
もう一つ注目されるのが、AIをはじめとした最新テクノロジーへの対応です。
矢野経済研究所は、AIなど最新技術の急速な普及・進化に伴い、業務改革と人材育成の必要性が高まっていることも、市場を後押しする主要因としています。
実際、DX推進人材を対象とした技術・ビジネススキル研修も好調に推移しています。
生成AIをはじめとする技術が業務へ入り込むほど、「ツールの使い方」だけでなく、業務そのものを見直すスキルや、AIを活用して業務を設計できる人材の育成が企業の課題になっていきそうです。
2026年度の企業向け研修市場は6,300億円へ
矢野経済研究所は、人的資本経営に取り組む企業の増加に伴い、企業向け研修サービス市場は今後も拡大すると予測しています。
2026年度の市場規模は6,300億円、前年度比3.7%増の見通しです。
企業研修を「福利厚生」や単発の教育施策としてではなく、人材戦略や事業戦略に結びつけて投資する企業が増えるかが今後のポイントになります。
リスキリングドットコムの見解
リスキリングドットコムでは、今回の3.7%成長を単に「企業の研修予算が増えている」と捉えるのではなく、企業が求める研修の中身が変化している兆候として見ることが重要だと考えます。
今回、市場拡大の背景として挙げられた「サクセッションプラン」と「AI・最新技術への対応」には共通点があります。
どちらも、全社員に同じ研修を提供するのではなく、
どの人材に、何を学ばせ、どの役割を担ってもらうのか
を事業戦略から逆算して設計する必要がある点です。
外部研修への支出を増やしても、受講後に担う仕事やポジション、期待する成果が明確でなければ、人材投資の効果は測りにくくなります。
特にAI人材育成では、「生成AI研修を受講した人数」だけではなく、研修後に業務時間をどれだけ削減できたのか、新しい業務プロセスを設計できたのか、AIを活用できる社員がどの部門に増えたのかといった成果まで見る必要があります。
必要な人材を定義する → 必要なスキルを明確にする → 研修・リスキリングを行う → 配置・実践につなげる → 成果を測る。
研修市場が拡大する局面だからこそ、人事・経営層には「どの研修を買うか」より前に、何の経営課題を解決するための人材育成なのかを定義する力が求められています。



