リスキリングとリカレント教育の違い【2026年最新】定義・費用負担・支援制度を比較

最終更新日:2026.08.31

「リスキリング」と「リカレント教育」は、どちらも社会人の学び直しを指す言葉として使われますが、公的機関の説明では主体も費用負担も使える支援制度も異なります。

この記事では、両者の定義を公的資料で確認したうえで、比較表で違いを整理し、2026年時点で企業・個人が使える支援制度と使い分けの考え方までをまとめます。

リスキリングとリカレント教育の定義

厚生労働省のポータル「みんなの労働ナビ」は、リスキリングを「新しいスキルや知識を習得して、別の職務や業務に対応できるようになること」と説明しています。

経済産業省の「デジタル時代の人材政策に関する検討会」(2021年2月26日)に提出された資料でも、リスキリングは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義されており、「獲得させる」という企業側の働きかけを含む点が特徴です。

つまり、業務の変化に合わせて企業が必要なスキルを設計し、働きながら身につけてもらう取り組みを指します。

一方、文部科学省のリカレント教育ポータル「マナパス」は、リカレント教育を「自分に必要な学び」「時代のニーズに即した能力・スキル」「職業とは直接結びつかない技術や教養」を社会に出た後も身につけること、またその社会的なシステムと説明しています。

仕事と学びを繰り返し循環させる点、そして職業に直結しない学びも含む点が、リスキリングとの大きな違いです。

学ぶ内容を決めるのは基本的に働く個人であり、大学や専門学校などの教育機関が受け皿になります。

6つの観点で違いを比較

公的資料の記述をもとに、実務で判断しやすい6つの観点で整理すると次のようになります。

観点リスキリングリカレント教育
主な目的職務の変化への適応、新しい職務への配置転換個人のキャリア形成、専門性や教養の再構築
主導する人企業(事業主)が設計し、従業員に習得させる働く個人が自ら選んで学ぶ
学ぶ場社内研修・OJT・eラーニングなど大学・専門学校・公開講座など教育機関
仕事との関係就業を続けながら学ぶ仕事と学びを交互に繰り返す(休暇・休職を伴う場合もある)
費用負担企業負担が中心個人負担が中心(公的給付で軽減)
代表的な公的支援人材開発支援助成金(事業主向け)教育訓練給付金・教育訓練休暇給付金(個人向け)

両者は対立する概念ではありません。企業が業務起点で設計するのがリスキリング、個人が人生設計の中で学び直すのがリカレント教育であり、社員が大学の講座で学んだ成果が社内の新しい役割につながることもあります。

制度設計の場面では「誰がテーマを決め、誰が費用を負担するのか」で切り分けると混乱が起きにくくなります。

2026年に使える支援制度

企業が従業員に訓練を実施する場合の中心は、厚生労働省の人材開発支援助成金です。事業主が雇用する労働者に職業訓練等を実施した際に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度で、人材育成支援コース、教育訓練休暇等付与コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースなど7つのコースで構成されています。

2026年(令和8年)に入ってからも改正が続いており、同年4月8日に人材育成支援コースへ「中高年齢者実習型訓練」、事業展開等リスキリング支援コースへ「設備投資加算」が新設され、8月3日にも改正が行われています。

要件の変更が多いため、計画時点で必ず最新の公式資料を確認することが重要です。

個人が学び直す場合は教育訓練給付金が中心になります。一般教育訓練は受講費用の20%(上限10万円)、特定一般教育訓練は40%(上限20万円)で、資格取得のうえ就職等をした場合は50%(上限25万円)に上がります。

専門実践教育訓練は受講中が50%(年間上限40万円)、資格取得等をして修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合が70%(年間上限56万円)、さらに修了後の賃金が受講前より5%以上上がった場合は80%(年間上限64万円)が支給されます。

加えて2025年(令和7年)10月には教育訓練休暇給付金が創設されました。業務命令によらず、就業規則等に基づいて連続30日以上の無給の教育訓練休暇を取得した雇用保険の一般被保険者に、基本手当に相当する給付を行い、学びに専念する期間の生活費を支える仕組みです。

企業側が無給の教育訓練休暇制度を整えることで、社員のリカレント教育を後押しできる点で、企業施策と個人給付が接続する制度といえます。

学べる講座は厚生労働省の教育訓練給付制度の検索システムや、文部科学省のマナパスで探せます。

企業はどう使い分けるか

使い分けの起点は「学ぶテーマを誰が決めるべきか」です。事業計画に直結し、習得後の配置まで想定できるスキルは企業主導のリスキリングで進め、助成金の対象になるよう計画届などの手続き要件を先に確認します。

一方、社員個人の関心や中長期のキャリアに根ざした学びは、教育訓練給付や休暇制度で支える方が続きやすく、結果として定着や自律的なキャリア形成につながります。

注意点は3つあります。第一に、公的給付の対象講座は指定制であり、社内で選んだ講座が必ず対象になるとは限りません。

第二に、助成金は事前の計画提出や訓練時間などの要件を満たさないと支給されません。第三に、制度は毎年見直されており、2026年も年度途中で複数回の改正がありました。

社内資料の数値や要件は年度単位で更新し、申請前に公式ページで確認する運用にしておくことが求められます。

まとめ

リスキリングは企業が業務の変化に合わせて社員にスキルを習得させる取り組み、リカレント教育は個人が仕事と学びを循環させる学び直しで、支援制度も企業向けと個人向けに分かれています。

厚生労働省が2026年7月31日に公表した令和7年度「能力開発基本調査」では、教育訓練費用を支出した企業は54.4%(前回比0.5ポイント低下)、自己啓発を実施した労働者は35.5%(同1.3ポイント低下)と、いずれも前回を下回りました。

制度が拡充される一方で、企業・個人ともに学びへの投資は伸び悩んでいるのが現状です。

リスキリングドットコムの視点

リスキリングドットコムとしては、この2つを言葉の違いとして整理するだけでは実務は動かないと考えます。重要なのは、企業の育成計画と個人の学びのどちらか一方に寄せないことです。

人材開発支援助成金だけに頼ると学ぶテーマは事業計画の範囲に閉じ、教育訓練給付だけに委ねると学びが個人の中に留まり、組織の力になりません。

能力開発基本調査で企業の教育訓練費の支出も個人の自己啓発も前回を下回った事実は、制度の不足よりも「学んだ後の役割が見えないこと」が壁になっている可能性を示しているとみられます。

まず社内で必要なスキルと配置の道筋を示し、そのうえで個人の学びを休暇制度や給付でつなぐ。この順番が、投資を成果に変える設計だと考えます。

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