サクセッションプランとは【2026年最新】後継者育成計画の作り方5ステップ
最終更新日:2026.09.11
「次の経営トップを誰にするか」は、多くの企業で先送りされがちなテーマです。しかし2026年7月に確定したコーポレートガバナンス・コード(CGコード)の改訂版では、CEOの後継者計画(サクセッションプラン)に取締役会が主体的に関与すべきことが、あらためて原則として明記されました。
この記事では、サクセッションプランの基本と、人事部門が実務として進めるための5つのステップ、つまずきやすい注意点を整理します。
サクセッションプラン(後継者育成計画)とは
サクセッションプランとは、経営トップや重要ポジションの後継者をあらかじめ見極め、計画的に育成・選抜していく仕組みのことです。
日本語では「後継者育成計画」「後継者計画」と訳されます。突発的な退任や不測の事態に備えるリスク管理の側面と、経営戦略の実現に必要な人材をあらかじめ準備しておく人材戦略の側面を併せ持ちます。
金融庁と東京証券取引所が2026年7月21日に確定したCGコード(2026年改訂版)では、原則4-3において、取締役会はCEOの選解任について、会社の経営理念や経営戦略を踏まえ、CEOの後継者計画の策定・運用に主体的に関与すべきだとしています。
あわせて、後継者候補の育成と、資質を備えたCEOの選任が十分な時間と資源をかけて計画的に行われるよう、適切に監督すべきことが示されています。
CEOが十分に機能を発揮していないと認められる場合の解任手続についても、客観性・適時性・透明性の確保が求められています。
今回の改訂は「コードの実質化」を狙いとしたもので、原則そのものは抽象的・概念的な内容に絞り込み、実務上の具体的な内容は新設された「解釈指針」に整理されました。
上場会社は、遅くとも2027年7月末日までに、改訂版コードに関する事項を記載したコーポレート・ガバナンス報告書を提出する必要があるとされています。
形式的なチェックリスト対応ではなく、自社の状況に応じた実質的な取り組みと説明が問われる改訂だといえます。
なぜ今、後継者育成に取り組む必要があるのか
後継者を巡る状況は、上場企業に限った話ではありません。帝国データバンクが2025年11月21日に公表した全国「後継者不在率」動向調査(2025年)によると、全国の後継者不在率は50.1%で、前年から2.0ポイント低下しました。
7年連続で前年を下回り、調査期間で最も高かった2017年と比べると16.4ポイントの低下です。改善傾向にあるとはいえ、依然として約半数の企業が後継者を確保できていない計算になります。
同調査では、社長就任の経緯にも変化が見られます。2025年は内部昇格が36.1%で、同族承継の32.3%を上回りました。
M&Aほかが20.6%、外部招聘が7.6%と続きます。同社は事業承継における「脱ファミリー化」が進んでいるとしています。
親族に引き継ぐ前提が崩れつつある以上、社内から次の経営層を育てる仕組み、すなわちサクセッションプランの重要性は上場・非上場を問わず高まっているとみられます。
また改訂版CGコードでは、成長投資の対象として設備・研究開発と並んで人的資本や知的財産などの無形資産への投資が挙げられています。
人材育成を「コストの管理対象」ではなく「成長投資」として位置づける流れは、後継者育成の議論とも地続きです。
後継者育成計画の作り方 5ステップ
サクセッションプランは、次の順序で組み立てると実務に落とし込みやすくなります。
- 求める人材要件を定義する:経営戦略から逆算し、次期経営層に必要な経験・スキル・行動特性を言語化します。「優秀そうな人」ではなく、自社が向かう方向に必要な要件を先に決めることが出発点です。
- 候補者プールを可視化する:単独の本命候補ではなく、複数階層(すぐに就任可能/3年後/5年後)で候補者群を洗い出します。部門推薦だけに頼ると視野が狭まるため、人事データや評価情報と突き合わせて母集団を広げます。
- アセスメントでギャップを把握する:多面評価や外部のアセスメントを用い、要件と現状の差分を個人ごとに明らかにします。ここが曖昧なままだと、育成が一般的な研修の実施に流れがちです。
- 一人ひとりの育成計画を実行する:研修だけで経営人材は育ちにくいため、子会社や新規事業の責任者、海外・不採算部門の再建といった負荷の高い実務経験(タフアサインメント)を計画的に配置します。選抜研修や社外経験は、その経験を振り返り言語化する場として組み合わせます。
- 取締役会・指名委員会で定期的に検証する:候補者リストと進捗を年次で報告・レビューし、要件や候補者を見直します。人事部門だけで完結させず、取締役会が監督する仕組みにすることが、CGコードが求める「主体的な関与」につながります。
つまずきやすい3つの注意点
第一に、計画が「文書化して終わり」になることです。候補者リストを作っても、配置・登用に反映されなければ育成は進みません。
年次でレビューし、実際の異動に接続する運用設計が必要です。
第二に、候補者の偏りです。改訂版CGコードの原則2-2は、中核人材への登用における多様性の確保について、考え方と自主的かつ測定可能な目標を決めて状況を開示し、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針を実施状況と併せて開示すべきだとしています。
候補者プールが特定の部門や属性に偏っていないかは、開示の観点からも点検しておきたいところです。
第三に、中小企業では所有と経営の承継が絡む点です。株式の移転や税制、金融機関との関係といった事業承継固有の論点があり、人材育成だけでは完結しません。
経営人材の育成計画と、事業承継の枠組みは分けて検討することが求められます。
まとめ
サクセッションプランは、要件定義から候補者の可視化、アセスメント、育成、取締役会によるレビューまでを一つの流れとして回す取り組みです。
2026年改訂のCGコードは、この一連のプロセスに取締役会が主体的に関与し、時間と資源をかけて計画的に進めることを求めています。
改訂版に対応したコーポレート・ガバナンス報告書の提出期限は遅くとも2027年7月末日とされており、着手の適期は今です。
制度の詳細や自社の対応要否は、最新の一次情報と専門家の助言をもとに確認してください。
リスキリングドットコムの視点
リスキリングドットコムとしては、今回の改訂で注目すべきは「後継者計画が独立したテーマではなくなった」点だと考えます。
人的資本が成長投資として位置づけられ、中核人材の多様性と人材育成方針の開示が求められ、そのうえでCEOの後継者計画が監督対象になる。
これらは別々の宿題ではなく、一本の人材戦略として説明できるかが問われているのではないでしょうか。
実務的には、経営人材の育成と全社のリスキリングを分断しないことが重要です。次期経営層に必要な事業構想力やデータ・AIの理解は、日常の育成施策の延長線上で伸びる部分も少なくありません。
候補者だけを特別扱いする閉じた選抜ではなく、育成の土台を広く用意したうえで、そこから経営人材を引き上げる二層構造にしておくことが、結果として候補者の厚みにつながると考えます。
あくまで一つの見方ですが、後継者不在率が依然5割という現実を踏まえれば、着手を先送りする理由は見当たりません。



