セルフ・キャリアドックとは【2026年最新】導入手順5ステップと無料の国の支援

最終更新日:2026.09.14

社員が自分のキャリアを考え、学び直しにつなげる仕組みとして、厚生労働省が普及を進めているのが「セルフ・キャリアドック」です。

一方、2026年7月31日に公表された令和7年度「能力開発基本調査」では、正社員に対してキャリアコンサルティングを行うしくみがある事業所は48.4%にとどまりました。

この記事では、セルフ・キャリアドックの定義と法的な位置づけ、導入の5ステップ、形だけの面談にしないための注意点を、厚生労働省の公的資料をもとに解説します。

セルフ・キャリアドックとは

厚生労働省の資料では、セルフ・キャリアドックを「キャリアコンサルティングとキャリア研修などを組み合わせて行う、従業員のキャリア形成を促進・支援することを目的とした総合的な取組み」と定義しています。

同省の委託事業サイトでは、年齢や昇進などのキャリアの節目に面談や研修を行い、リスキリングの支援を含めて主体的なキャリア形成を後押しする取り組みと説明されています。

背景には法律上の規定もあります。職業能力開発促進法第10条の3は、事業主が必要に応じて講ずる措置として、能力開発の各段階や労働者の求めに応じてキャリアコンサルティングの機会を確保することを挙げています。

あわせて、その際はキャリアコンサルタント(国家資格)を有効に活用するよう配慮するものとしています。

厚生労働省が挙げる期待効果は、従業員側ではキャリア目標の明確化や計画的な能力開発、働く満足度の向上です。

企業側では人材の定着や組織の活性化、生産性の向上への寄与が期待されるとしています。属性別には、新卒採用者の定着、育児・介護休業からの職場復帰、高年齢層社員の活性化にも効果が期待されるとしています。

データで見る導入状況と課題

令和7年度「能力開発基本調査」(常用労働者30人以上の企業・事業所が対象)によると、キャリアコンサルティングを行うしくみがある事業所は正社員向けで48.4%、正社員以外向けで30.1%でした。

おおむね企業規模が大きいほど割合は高く、1,000人以上では正社員向けが72.6%です。

正社員向けの実施時期は「1年に1回、3年に1回など定期的に実施」が55.2%、「労働者から求めがあった時」が49.6%、「人事評価のタイミング」が47.4%の順でした。

しくみがある事業所のうち、相談を受けているのがキャリアコンサルタントだと答えたのは11.7%にとどまります。

実施上の問題点(正社員)では「相談を行っても効果が見えにくい」が42.2%で最も多く、「相談件数が少ない」41.6%、「相談を受けられる人材を内部で育成するのが難しい」37.1%、「相談の時間を確保するのが難しい」36.8%が続きました。

制度を置くだけでは使われにくいことが、数字からもうかがえます。

セルフ・キャリアドック導入の5ステップ

厚生労働省のパンフレットと委託事業サイトが示す流れをもとに、導入の手順を5つに整理しました。

  1. 人材育成ビジョン・方針を明確にする:経営者と人事部門で人材育成の課題を整理し、何のために導入するのかを決めます。経営者自らが導入を全従業員に宣言すると、組織全体の推進力になるとされています。
  2. 実施計画を策定し、社内体制を整える:社内で一定の影響力を持つポストから推進責任者を選び、就業規則や社内通達で制度として定めます。小規模企業では形式にこだわらず柔軟な方法も考えられるとしています。対象者と実施の節目(入社後の一定年数、昇進時、育休からの復帰時など)もここで決めます。
  3. キャリアコンサルタントを確保する:社内で担う場合は、国家資格「キャリアコンサルタント」かキャリアコンサルティング技能検定(1級・2級)の保有が原則です。社外に依頼する場合は、経営戦略や人材育成計画、現状の課題を事前に十分共有する必要があります。
  4. ガイダンス・キャリア研修・個別面談を実施する:対象者向けの説明の後、集合形式のキャリア研修でキャリアの棚卸しと目標・行動計画づくりを行い、続いて1対1のキャリアコンサルティング面談を実施します。
  5. フォローアップと継続的な改善を行う:キャリアコンサルタントからは、全体のキャリア意識の傾向や組織的な課題が報告されます(個別面談の内容は守秘義務により原則として報告されません)。組織課題には経営層が対応し、対象者や上司へのアンケートで変化を定期的に確認して、次回の進め方を見直します。

形だけの面談にしないための注意点

第一に、上司の面談との役割分担です。厚生労働省の資料は、キャリアコンサルティングを人事評価目的の「定期面談」「業績評価面談」とは異なり、従業員の自己洞察を促してキャリア形成の方策を考える場と位置づけています。

会社への要望を伝える場合も本人の同意が前提です。1on1が定着している企業ほど、評価と切り離した相談の場として設計することが重要です。

第二に、「効果が見えにくい」への備えです。導入前に、キャリア意識や仕事ぶりの変化をどう測るか(アンケート項目や確認時期)を決めておくと、見直しの判断がしやすくなります。

第三に、現場管理職の巻き込みです。管理職が目的を理解し、人事やキャリアコンサルタントと一緒に支援に関わることで効果が高まるとされています。

なお、厚生労働省の委託事業「キャリア形成・リスキリング支援センター」(全国47都道府県に拠点)では、企業向けにセルフ・キャリアドックの導入支援を無料で行っています。

経営層との相談やガイダンスセミナー、面談の実施などが支援内容として示されています。受付状況や詳細は最寄りのセンターか公式サイトで確認してください。

まとめ

セルフ・キャリアドックは、キャリアの節目に研修と面談を組み合わせ、社員の主体的なキャリア形成を支える仕組みです。

導入はビジョンの明確化、体制整備、キャリアコンサルタントの確保、研修・面談の実施、フォローアップの5ステップで進めます。

調査では「効果が見えにくい」が最大の課題となっており、評価面談との切り分けと効果の測り方を最初に決めておくことが定着の鍵になります。

リスキリングドットコムの視点

リスキリングドットコムとしては、セルフ・キャリアドックを「リスキリングの入口」として位置づけることが重要だと考えています。

学び直しの施策が進まない理由の一つは、社員が「何のために、何を学ぶか」を描けていないことにあるとみているためです。

今回の調査で「効果が見えにくい」が最大の課題だったことは、面談が面談で終わり、配置や研修、学び直しの支援につながっていない実態を映している可能性があります。

面談で出たキャリア目標を、教育訓練休暇や研修受講、社内公募などの制度に接続できるかどうかが分かれ目になるでしょう。

まずは無料の導入支援を活用し、対象を若手や育休復帰者など一つの節目に絞って試すのが現実的な一歩です。

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