職場の障害者虐待610人 経済的虐待83.1% 通報は1,953人で過去最多
最終更新日:2026.09.14
厚生労働省は2026年9月11日、「令和7年度使用者による障害者虐待の状況等」を公表しました。障害者虐待防止法に基づき、都道府県労働局が把握した事業主や上司など「使用者」による障害者虐待の状況を年度ごとに取りまとめたもので、今回は令和7年4月1日から令和8年3月31日までに通報・届出があった事案と、同期間に対応が完了した事案が集計対象です。
通報・届出のあった事業所は1,663事業所で前年度比4.4%増、対象となった障害者は1,953人で同6.9%増となり、公表資料でさかのぼれる令和3年度以降では最も多くなりました。
一方、実際に虐待が認められた事業所は421事業所で3.0%減、虐待が認められた障害者は610人で6.4%減と、いずれも前年度を下回っています。
認められた虐待の種別(延べ627人、重複計上)では、経済的虐待が521人で83.1%を占めて最多でした。
以下、心理的虐待62人(9.9%)、身体的虐待31人(4.9%)、放置等による虐待9人(1.4%)、性的虐待4人(0.6%)と続きます。
経済的虐待は障害者の財産を不当に処分するなど、不当に財産上の利益を得る行為を指します。
虐待に対して労働局が講じた措置は658件で前年度比5.9%減。うち労働基準関係法令に基づく指導等が561件(85.3%)を占め、そのなかで最低賃金法に基づく指導等が207件(31.5%)に上りました。
虐待を行った使用者の内訳は事業主が359人(83.7%)、所属の上司が45人(10.5%)です。
虐待が認められた事業所を業種別にみると、医療・福祉が102事業所(24.2%)で最も多く、製造業87事業所(20.7%)、卸売業・小売業58事業所(13.8%)、宿泊業・飲食サービス業46事業所(10.9%)が続きました。
規模別では5〜29人が168事業所(39.9%)、5人未満が70事業所(16.6%)で、30人未満の小規模事業所が過半を占めています。
被害を受けた障害者の就労形態は、パート・アルバイトが272人(44.6%)、正社員が203人(33.3%)でした。
リスキリングドットコムの見解
数字を読むと、職場の障害者虐待は「心ない言動」よりも賃金をめぐる問題として現れていることがわかります。
認定の83.1%が経済的虐待で、労働局の措置の3割強が最低賃金法に基づく指導でした。
虐待が認められた事業所の過半が従業員30人未満である点も見逃せません。人事の専任者が置きにくい規模で、最低賃金の減額特例の手続きや労働時間管理といった労務の基本が十分に共有されていない可能性がある、というのが当編集部の見方です(厚生労働省の公表資料は背景まで示していません)。
通報は増え、認定は減りました。周囲が気づいて声を上げる下地が広がったと前向きに捉えることもできます。法定雇用率の引き上げが続くいま、採用数だけでなく、現場責任者への労務知識の学び直しをセットで設計したいところです。
出典元
厚生労働省「『令和7年度使用者による障害者虐待の状況等』の結果を公表します」(2026年9月11日公表)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172598_00013.html



