【2026年最新】人的資本開示の進め方|有報・女性活躍推進法の5ステップ
最終更新日:2026.10.14
人的資本開示は、上場企業の有価証券報告書だけの話ではなくなりました。2026年4月1日施行の改正女性活躍推進法で、女性管理職比率と男女間賃金差異の公表義務が従業員101人以上の企業に広がり、同年3月には国の「人的資本可視化指針」が改訂されています。
この記事では、人事・経営企画の担当者が開示を実務として進めるための手順を、確認できた制度の事実にそろえて整理します。
まず押さえたい人的資本開示の制度の全体像
有価証券報告書の人的資本開示は、令和5年3月31日以後に終了する事業年度に係る報告書から適用されています。
金融庁によると、開示項目は大きく2つです。1つ目は、人材の多様性の確保を含む人材育成の方針と社内環境整備の方針、およびその方針に関する指標の内容で、こちらは必須記載です。
2つ目は、女性管理職比率・男性の育児休業取得率・男女間賃金格差で、女性活躍推進法などに基づき公表している場合にあわせて記載します。
記載欄はサステナビリティ情報の「戦略」と「指標及び目標」とされています。
一方、上場していない企業にも関係するのが女性活躍推進法です。2026年4月1日の改正で、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表義務の対象が、常時雇用する労働者101人以上の企業に拡大されました(従来、賃金差異は301人以上)。
100人以下は努力義務です。
| 区分 | 根拠 | 主な開示内容 |
|---|---|---|
| 上場企業等 | 有価証券報告書(金融庁の開示府令) | 人材育成方針・社内環境整備方針(必須)、女性管理職比率・男性育休取得率・男女間賃金格差(公表している場合) |
| 従業員101人以上 | 改正女性活躍推進法(2026年4月1日施行) | 男女間賃金差異・女性管理職比率に加え、301人以上は2項目以上、101〜300人は1項目以上を選択して公表 |
| 従業員100人以下 | 同法(努力義務) | 公表に努める |
2026年3月に改訂された「人的資本可視化指針」のポイント
内閣官房・金融庁・経済産業省は、令和8年(2026年)3月23日に「人的資本可視化指針(改訂版)」を公表しました。
別紙「戦略に焦点をあてた人的資本開示」は、2部構成で、第1部が「経営戦略と人材戦略の連動」、第2部が「4つの要素(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標及び目標)に従った開示」です。
財務諸表だけでは、必要な人的資本投資が行われているかが分からないという投資家の見方を背景に、人材戦略を経営戦略と関連付けて具体的に書くことが重視されています。
なお、同資料は規範性を持たず、チェックリストや開示のテンプレートとして使うことは想定していないと明記されています。
指標を並べるだけで終わらせず、自社の戦略に沿って何を示すかを考える材料として使うのが適切です。
人的資本開示の進め方:5ステップ
- 対象となる制度を確認する。上場企業は有価証券報告書、従業員101人以上の企業は女性活躍推進法の公表義務、といった形で、自社に適用される開示ルールと期限を洗い出します。
- 経営戦略から人材戦略を言語化する。中期経営計画などの方針を起点に、「その実現にどんな人材が、いつまでに、どれだけ必要か」を整理します。指針改訂版が重視する「連動」の部分です。
- 開示する指標と数値の算出ルールを決める。女性管理職比率、男女間賃金差異、男性育休取得率などの必須・準必須の指標に加え、自社の戦略に合う指標(研修投資額、エンゲージメント、スキル充足度など)を選びます。算出方法や対象範囲は社内で統一し、注記として説明できる状態にします。
- データを集め、部門横断で整合を取る。人事システム、給与、労務の各データを突き合わせ、定義のズレを解消します。差異が生じている場合は、その理由の仮説まで用意すると説明がしやすくなります。
- 公表し、毎年見直す。女性活躍推進法の公表先としては、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」が案内されています。公表後は、数値の推移と施策の関連を振り返り、翌年の開示に反映します。
実務でつまずきやすい注意点
最も多いのは、指標の定義や対象範囲が部署や子会社ごとに違い、数値が比較できない問題です。連結子会社を含めるのか、管理職の定義は何か、といった点を最初に決めておく必要があります。
次に、数値だけを示して背景を語らないケースです。投資家や求職者が知りたいのは、数値が示す課題と、それに対する自社の打ち手です。
最後に、法令の要件は改正されることがあるため、実際の提出・公表の前に所管官庁の最新資料で要件を確認してください。
リスキリングドットコムの視点
ここからは当編集部の意見です。人的資本開示は「作業」として数字をそろえるだけだと、翌年も同じ苦労を繰り返します。
一方で、開示のために人材戦略を言語化する過程は、リスキリングや配置の見直しを経営の言葉で語る好機でもあります。
まずは女性管理職比率や賃金差異など、すでに義務となった指標を正確に出すことから始め、次の段階で研修投資やスキルの可視化といった自社の戦略指標を1〜2個だけ足していく、という進め方が現実的ではないでしょうか。
完璧な開示を目指して止まるより、毎年少しずつ深める運用をおすすめします。



