地方・企業・個人の未来を変える「リスキリングJAPANカンファレンス2024」開催

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最終更新日:2024.09.27

2024年7月11日、ミッドタウン日比谷にて「リスキリングJAPANカンファレンス2024」が開催された。

国・自治体・企業・個人とあらゆる立場でリスキリングに取り組む専門家が登壇。それぞれの挑戦や、リスキリングによって目指す未来について語られた。

リスキリングで実現する雇用創出と地方創生 ~徳島県小松島市の挑戦~

都市部への人口流出などによる人口減少が課題となる中、地方都市においてもリスキリングへの期待が高まっている。四国に位置する小松島市も、そうした課題を抱える都市のひとつだ。

しかし、同市ではシェアエックス株式会社の支援を受け、地域人材の育成を推進する「リスキリングプロジェクト」をスタートさせた

オープニングセッション「リスキリングという選択を迷っている自治体・企業・人へのメッセージ」では、シェアエックス代表取締役で小松島市 最高リスキリング責任者を務める中川りょう氏がモデレーターとして登壇。小松島市長の中山俊雄氏、株式会社シケン代表取締役の島隆寛氏、「リスキリングプロジェクト」に参加した林佳澄氏も同セッションに参加し、自治体・企業・個人の三者の想いを語った。

2023年8月よりスタートした同プロジェクトは、デジタルスキルの習得にとどまらず、リモート職務体験を経て首都圏企業への在宅就労を支援している点が特徴的だ。プロジェクトに23歳で参加した林氏は、プロジェクトを経て都内のIT企業にリモート正社員として就労。現在は、Webサービスの開発責任者を務めるまでに成長した。

「リスキリングのおかげで、プログラミングを仕事にすることができました。僕のように地方で活躍できる若者が増えれば、日本社会はもっとよくなると思います」(林氏)

セブンセンスマーケティング株式会社システムエンジニア  林佳澄氏
セブンセンスマーケティング株式会社システムエンジニア  林佳澄氏

小松島市を本拠地に置く歯科技工所シケンは、産休明けの従業員とともに在宅就労のあり方を模索。リスキリングプロジェクトを通じて、在宅でのインサイドセールスの方法を確立させた。

働き方改革を成功させただけでなく、4〜6月期の新規開拓数が前年比1.3倍という結果にもつながっているという。

「従来のアナログな営業スタイルから、データに基づいた合理的な手法を用いた営業活動に切り替えるうえで、リスキリングは必要不可欠でした」(島氏)

㈱シケン代表取締役 島隆寛氏
㈱シケン代表取締役 島隆寛氏

地方の雇用創出という点で、小松島市はリスキリングで大きな成果を生み出している。リスキリングプログラムは現在も受講生を募集中で、受講生も60名を突破した。

「リスキリングは、地方に暮らすダイヤの原石を磨く素晴らしい手段となり得ます。自治体の皆さんは、ぜひ一歩先の未来を見据えてリスキリングにチャレンジしてください」(中山市長)

徳島県小松島市市長 中山俊雄氏
徳島県小松島市市長 中山俊雄氏

専門家が議論。企業のリスキリングを成功させる「実務との連結」と「トップを動かすコツ」

「企業;Reskilling to Growth & DX〜リスキリングが本当に、企業の成長とDXを加速させるのか?〜」のセッションは、住友生命保険 エグゼクティブ・フェローの岸知良氏、株式会社デジライズ 代表取締役の茶圓将裕氏、株式会社ローンディール代表取締役の原田未来氏、WHITE株式会社 代表取締役の横山隆氏が登壇。

横山氏をモデレーターとして、企業がリスキリングに取り組む意義や、成功に導くためのポイントについて熱い議論が交わされた。

WHITE株式会社代表取締役 横山隆氏
WHITE株式会社代表取締役 横山隆氏

まずは「リスキリングは企業の成長とDXを加速させるのか」という本質的なテーマで議論はスタート。

茶圓氏は、リスキリングは企業の成長を加速できるとの見解を事例を交えながら示した。

「私たちが支援したGMOインターネットグループ株式会社様は、グループ全体で月間9万時間の業務時間削減を実現しました。リスキリングによるAI技術活用は間違いなく大きな成果を生みます」(茶圓氏)

株式会社デジライズ代表取締役 茶圓将裕氏
株式会社デジライズ代表取締役 茶圓将裕氏

ただし、こうした成果を得るには、一定の条件が必要だと参加者は話す。

「生成AIに関する研修をおこなうと、序盤はわからないことだらけで多くの参加者が苦労します。しかし、終盤である程度の知識を身に着けるころには、AIを用いた事業アイディアを発想するまでに成長します。事業の目的や実務、やりたいこととリスキリングが直結すれば、成功の確率は大きく上がると思います」(岸氏)

住友生命保険エグゼクティブ・フェロー デジタル共創オフィサー 岸和良氏
住友生命保険エグゼクティブ・フェロー デジタル共創オフィサー 岸和良氏

「学ぶ環境」と「得た知識を実務につなげられる環境」が、リスキリングには不可欠だという点に、茶圓氏も原田氏も同意する。では、経営陣がリスキリングに積極的ではない場合、どのように説得すべきなのだろうか?

リスキリング推進はトップダウンによる実施が大切だという前提で、岸氏と茶圓氏が提案するのは「他社事例の提示」だ。

「『A社やB社、C社もリスキリングに取り組んでいます。うちはやらないのですか?』こういった呼びかけは、意外と経営層を動かす言葉として有効です」(岸氏)

「パナソニックコネクト株式会社が、『ChatGPT時代に企業はAIとどう向き合うべきか』という資料を公開しています。社内でAIツールを導入した成果や課題などが、とてもキレイにまとめられています。この資料を見せれば、どの経営層もAI活用やリスキリングに興味を示すはずです」(茶圓)

一方、リスキリングをボトムアップで進めざるを得ないケースも少なくない。そこで求められるのは「担当者自身の熱意」だと、原田氏は考える。

「会社をもっと成長させたい。自分たちの働く環境をもっとよくしたい。そうした想いを持って、粘り強く交渉していく姿勢は非常に大切です」(原田氏)

株式会社ローンディール代表取締役 原田未来氏
株式会社ローンディール代表取締役 原田未来氏