社会人の学び直しとは?メリットと手段、企業による支援方法を解説

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最終更新日:2024.09.26

社会人の学び直しとは 変化の激しい時代を生き抜くために、社会人になってからも 常に新しい知識やスキルを身につける「学び直し」が重要視されている。 社会人の学び直しの手段 大学・大学院 オンライン学習プラットフォーム 資格取得 イベント・セミナー参加 読書 企業による学び直し支援の方法 休職・復職制度の整備と充実 時短勤務制度の導入 セミナー受講料などの一部支援 企業研修制度の充実 キャリア形成の支援

人生100年時代と言われる現代において、注目されているのが「社会人の学び直し」です。

社会人からの学び直しは単なるスキルアップの手段ではなく、自分の人生をより豊かに、より自分らしく生きるための重要な鍵と言えます。

この記事では、社会人の学び直しの意義や学び直しの手段、そして企業が従業員の学び直しを支援する方法等を解説します。

1. 社会人の学び直しが注目される理由

現代社会は、グローバル化やIT技術の進歩などにより、変化の激しい時代と言えます。このような変化の激しい時代を生き抜くためには、常に新しい知識やスキルを身につける「学び直し」が重要視されてきています。

学び直しが必要とされる背景には、下記のようなものがあります。

項目 内容
テクノロジーの進化 AI、IoT、ビッグデータなどの進化により、多くの仕事が自動化され、新しい仕事が生まれている
グローバル化 グローバル競争の激化により、語学力や異文化理解力、国際的なビジネススキルが求められている
働き方の変化 終身雇用制度の崩壊、転職の増加、フリーランスなど、働き方が多様化しており、自身のキャリアを自ら切り拓く力が求められている
人生100年時代の到来 人生100年時代を豊かに過ごすためには、社会人以降の学びが人生の生きがいや充実感につながる

このような社会の変化に伴い、企業や個人は、それぞれが変化に対応できるよう、常に学び続けることが求められているのです。

2. 3種類の「社会人の学び直し」

現代では「学び直し」という言葉が一般的になりつつありますが、自己啓発やスキルアップなど、文脈によってその意味合いはさまざまです。現在、社会人の学び直しといえば次の3種類が挙げられます。

(1)リカレント教育

リカレント教育とは、学校教育を終えた後に、人生のさまざまなタイミングで教育を受けたり勉強したりすることを指します。ちなみに、リカレント(recurrent)は、何度も繰り返される様子や循環を指す言葉です。

学校教育終了後も、すでに持っている知識や技術をアップデートしたり、関連するスキルを身につけたりすることが重要です。一般的に「社会人の学び直し」というと、このリカレント教育を指し示しています。

(2)リスキリング

リスキリングとは、従来の業務の枠にとらわれず、新しい技術やビジネスモデルに対応するために、社員の知識やスキルを学び直したり、新たに習得したりすることです。

近年、ビジネスの世界では、テクノロジーの進化やグローバル化が進み、企業は常に変化に対応していくことが求められています。 このような状況下で、企業が競争力を維持・強化していくためには、社員一人ひとりが新しい知識やスキルを身につける「リスキリング」が重要となります。

(3)生涯学習

生涯学習とは、文字通り人が生涯にわたって行う学習全体を指します。

生涯学習は、リカレント教育やリスキリングのように明確な目的や期間が定まっているわけではありません。むしろ、個人の興味や関心、そして人生の各段階における必要性に応じて、自由に学習活動を選び、取り組むことが可能です。

生涯学習の例としては、以下のようなものが挙げられます。

分野 具体的な例
文化・教養 絵画教室、書道教室、音楽教室、歴史講座、文学講座
スポーツ フィットネスクラブ、ヨガ教室、水泳教室、テニススクール
語学 英会話教室、中国語教室、韓国語教室
ITスキル パソコン教室、プログラミング教室、Webデザイン講座
趣味 写真教室、陶芸教室、ガーデニング教室、料理教室
ボランティア 地域活動への参加、NPO活動への参加

3. 社会人が学び直すメリット

社会人が学び直しをすることには、多くのメリットがあります。ここでは、主なメリットを3つ紹介します。

(1)キャリアアップ・転職の可能性を広げられる

学び直しによって得られた知識やスキルは、現在の仕事でキャリアアップを目指すのに役立ちます。また、新しい業界や職種に転向するキャリアチェンジにおいても、学び直しで得られた知識・スキルは大きな強みとなります。

学び直しによって自身の市場価値を高められれば、より多くの選択肢の中から自分の希望するキャリアを選べるようになるでしょう。

(2)最新の知識・スキルを習得できる

社会は常に変化しており、ビジネスの現場で求められる知識やスキルも変化しています。変化の激しい現代において、学び直しを通して常に最新の知識・スキルを身につけることは、自身の市場価値を高めるために不可欠です。

例えば、IT技術の進歩は著しく、日々新しい技術やサービスが登場しています。従来の働き方やビジネスモデルが通用しなくなる可能性もある中で、常に新しい情報や技術をキャッチアップしていくことが重要です。

(3)変化への対応力を高められる

現代社会は、技術革新やグローバル化が急速に進む、非常に変化の激しい時代です。こうした変化の波に乗り遅れず、柔軟に対応していくためには、常に新しい情報やスキルを学び続けることが重要となります。

学び直しを通して最新情報やスキルを習得することで、変化の兆候をいち早く察知し、対応できるようになります。

例えば、AIやIoTなどの新しいテクノロジーが登場したときに、これらの技術を理解し、自身の仕事にどう活かせるかを考えることができるようになります。

また、グローバル化が進む中で、異文化理解や外国語スキルを身につけることも重要です。海外企業との取引や海外進出など、新たなビジネスチャンスを掴むことができるかもしれません。

法律や経済状況の変化などに詳しくなれば、社会構造の変化にも柔軟に対応できるようになります。

このように、学び直しによって変化への対応力を高めることは、将来の予測が難しい現代社会において、自分自身の市場価値を高め、安定したキャリアを築くために必要不可欠と言えるでしょう。

4. 社会人が学び直す際の注意点

社会人にとって、学び直しは自身の成長やキャリアアップに繋がる大きなチャンスです。しかし、仕事やプライベートとの両立は容易ではありません。そこで、学び直しを成功させるために注意すべき点を3つお伝えします。

(1)目標設定の重要性

社会人生活を送りながら学び直しをするには、多くの時間と労力を必要とします。限られた時間の中、モチベーションを維持し、学びを継続していくには、明確な目標設定が重要です。

目標設定をする際には、以下の点を意識しましょう。

①具体的な目標を設定する

漠然とした目標ではなく、「〇〇の資格を取得する」「3ヶ月後に〇〇ができるようになる」など、具体的で測定可能な目標を設定しましょう。

②現実的な目標を設定する

自身の経験やスキル、使える時間や費用などを考慮し、達成可能な範囲で目標を設定することが大切です。

③定期的に目標を見直す

目標達成の過程において、状況の変化や新たな発見があるかもしれません。定期的に目標を見直し、必要があれば修正していく柔軟性も持ち合わせましょう。

(2)時間と費用の確保

社会人にとって、学び直しには時間と費用の確保が大きな課題となります。学生時代とは異なり、仕事や家庭の責任を負いながら学習時間を確保しなければならないからです。

項目 詳細 対策例
時間 ・仕事や家事・育児との両立
・残業や休日出勤が多い
・隙間時間を活用
・早朝や夜間の学習時間の確保
・家族の協力
費用 ・受講料
・教材費
・交通費
・給付金制度の活用
・教育ローンの利用
・費用を抑えた学習方法の検討
・キャリアアップによる収入増加の可能性

上記表のように、時間確保には隙間時間や早朝・夜間の活用、家族の協力が有効です。費用については、給付金制度や教育ローンを検討したり、費用を抑えた学習方法を選ぶなど工夫をしましょう。

(3)モチベーション維持

社会人になると、学生時代とは異なり、常に仕事やプライベートで忙しい日々を送ることになります。そのため、学び直しを始めようと思っても、モチベーションを維持することが難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。

モチベーションを維持するためには、以下のポイントを意識することが重要です。

ポイント 詳細
目標を明確にする なぜ学び直しをしたいのか、学び直しを通してどうなりたいのかを明確化することで、モチベーション維持に繋がります。目標は具体的な方がより効果的です。
現実的なスケジュールを立てる 仕事やプライベートの予定も考慮し、無理なく学習を進められる計画を立てましょう。
自分にご褒美を与える 試験合格や目標達成時など、自分にご褒美を与えることを決めておきましょう。目標を達成した喜びを味わうことで、さらなるモチベーションアップに繋がります。
周囲に宣言する 家族や友人、同僚に学び直しをしていることを伝えることで、周囲の理解と協力を得やすくなるだけでなく、自分自身のモチベーション維持にも繋がります。
コミュニティを活用する 同じ目標を持つ仲間と交流することで、モチベーションを維持することができます。オンラインコミュニティや勉強会などに参加してみましょう。
完璧主義にならない 完璧を目指しすぎず、時には休むことも大切です。

これらのポイントを参考に、モチベーションを高く保ちながら、学び直しを継続していきましょう。

5. 学び直しの方法・手段

働きながら学びたい、自分のペースでスキルアップしたいなど、社会人の方のニーズは様々です。ここでは、目的に合った学び方を見つけるためのヒントとして、具体的な学び直し方法と、それぞれの特徴について解説します。

上記以外にも、企業が提供する研修制度を利用する方法もあります。費用面や時間的な制約、学びたい内容などを考慮し、自分に最適な方法を見つけましょう。

参考資料:https://toyokeizai.net/articles/-/626989

(1)大学・大学院

社会人経験を活かして大学・大学院で学び直したいという方には、いくつかの選択肢があります。社会人の学び直しを支援している大学院の一覧をまとめました。

大学院名 特徴
法政大学大学院 社会学研究科 社会学・メディア学の観点から現代の社会課題について学べる
名古屋商科大学ビジネススクール マネジメント研究科 国内初、国際認証を取得した経営教育を学べる
日本女子大学 リカレント教育課程 管理会計、金融、マーケティングなどを幅広く学べる
関西大学大学院 経済学研究科 経済理論、地域経済、国際経済、経済史などカリキュラムが豊富
上智大学大学院 応用データサイエンス学位プログラム(修士課程) 実務家教員からデータサイエンス、プログラミング、AIなどを学べる
明治大学 専門職大学院 会計専門職研究科 IT・国際化にも対応した財務会計・管理会計、企業法などを学べる
武蔵野大学大学院 法学研究科 実務に直結するビジネス法務をさまざまなカリキュラムから学べる
北九州市立大学 i-Designコミュニティカレッジ 地域創生、心理学、データサイエンスなど5領域から選択できる
筑波大学大学院 人文社会ビジネス科学学術院 法曹実務、民事・刑事、知的財産法などを学べる
早稲田大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科) 経営戦略、グローバルビジネスなどを実践とともに学べる
仙台大学大学院 スポーツ科学研究科 子ども・福祉・情報戦略などスポーツ科学分野を幅広く学べる

こうした大学・大学院は平日夜・土日などに講義を実施していたり、eラーニングに対応していたりしています。忙しく働く社会人にとって、受講しやすいカリキュラム設計になっている点も魅力です。

ここで紹介した大学・大学院以外も、社会人向けのさまざまな学科・コースを開設しています。興味のある大学や大学院のウェブサイトなどから、自身のキャリアおける目標や学習スタイルに合った大学院・学科を選ぶようにしましょう。

①通信教育課程

通信教育課程は、仕事や家事などで忙しい社会人が自分のペースで学びたい場合に最適な学習形態です。大学に通学する必要がなく、テキストやオンライン教材を使って自宅で学習を進めることができます。

近年はインターネット環境の充実により、オンラインで講義動画を視聴したり、課題を提出したりすることができる大学も増えています。そのため、より柔軟で学習しやすい環境が整っています。

通信教育課程のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

メリット 説明
時間や場所の自由度が高い 通学の必要がなく、自分のペースで学習を進めることができるため、仕事や家事との両立がしやすい。
学費が比較的安い 通学課程に比べて学費が安い場合が多い。
サポート体制が充実している 大学によっては、学習相談や進路相談など、学生をサポートする体制が充実している。

通信教育課程は、自分のペースで学びたい、費用を抑えたい、仕事や家事と両立しながら学びたいという社会人にとって、魅力的な選択肢と言えるでしょう。

②MBA、専門職大学院

社会人の学び直しの中でも特にMBA(経営学修士)や専門職大学院は、キャリアアップやキャリアチェンジを目指す社会人に人気です。

MBAを取得できる大学院としては、参考資料によると名古屋商科大学ビジネススクールや早稲田大学ビジネススクールなどが挙げられます。これらの大学院では、週末や夜間などの時間帯に授業が行われているため、働きながらでも学びやすい環境が整っています。

専門職大学院では、法務、会計、金融、公共政策など、さまざまな専門分野を学ぶことができます。例えば、明治大学専門職大学院会計専門職研究科では、社会人向けにカリキュラムが組まれており、働きながら専門的な知識やスキルを身につけることが可能です。

これらの大学院で学ぶことで、高度な専門知識やスキルを身につけることができます。

(2)オンライン学習プラットフォーム

社会人の学び直しにおいて、手軽に取り組めるのがオンライン学習プラットフォームです。数多くのオンライン学習プラットフォームが存在する中で、有名なサービスが3つあります。

それぞれのサービスにはそれぞれの特徴があり、自分に合った学習スタイルや学びたい内容に合わせて適切なプラットフォームを選ぶことが重要です。

①Udemy(ユーデミー)

世界最大級のオンライン学習プラットフォームであり、 Udemyでは、ITスキルやビジネススキルなど、幅広い分野のコースが提供されており、その数はなんと18万本以上にも及びます。

②Schoo(スクー)

無料でビジネススキルを学べるオンライン学習プラットフォームです。生放送授業と録画授業の2つがあり、自分のペースで学習を進めることができます。

③Coursera(コーセラ)

世界トップレベルの大学や企業が提供する専門性の高いコースをオンラインで受講できるサービスです。人工智能やデータサイエンスなど、高度な内容のコースを受講したい方におすすめです

(3)資格取得

社会人にとって、資格取得はスキルアップを実証し、キャリアアップや転職を有利に進めるための有効な手段のひとつです。

現在の仕事やこれから就きたい仕事に役立つ資格や、これからのキャリアアップで身につけたいスキルなど、目的に合わせて資格を選択しましょう。以下の表では、特におすすめしたい5つの分野の資格をまとめました。資格選びに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

分野 資格例 メリット
営業 販売士、ビジネス実務法務検定試験、 営業スキルや法律知識を身につけることで、顧客満足度向上や業務効率化に貢献できる
事務 日商簿記検定、秘書検定、MOS試験 事務処理能力やパソコンスキルを証明することで、即戦力として活躍できる可能性が高まる
IT 基本情報技術者試験、応用情報技術者試験、ITパスポートなど ITに関する基礎知識から応用力を身につけることで、IT業界への転職やシステム開発など幅広い分野で活躍できます。
語学 実用英語技能検定(英検)、TOEICなど 語学に関する知識を身につけることで、海外企業とのやり取りや海外赴任などキャリアの選択肢を広げられる
経営 中小企業診断士、社会保険労務士、公認会計士など 実務に加えて経営に関する知識・スキルを得ることで、より広い視野で働くことができるようになる

上記の資格以外にも、ファイナンシャルプランナーや社会保険労務士など、さまざまな資格が存在します。業務関連資格を取得する際は、自身のキャリアプランや目指す方向性を明確にした上で、最適な資格を選択することが重要です。

(4)イベント・セミナー参加

学び直しには、興味関心のある分野のイベントやセミナーに参加するという方法もあります。イベントやセミナーは、最新の情報や実践的なスキルを短期間で習得できる絶好の機会です。

イベント・セミナーは、自分の興味やキャリアプランに照らし合わせて選ぶようにしましょう。オフラインのイベント・セミナーへの参加は、新たな知識やスキルを身につけるだけでなく、人脈形成やモチベーションアップにもつながるのでおすすめです。

(5)読書

学び直しというと大学やオンライン学習をイメージする方が多いかもしれませんが、読書も有効な手段のひとつです。費用面でも比較的安価で、自分のペースで進められるというメリットがあります。特にビジネス書は、実用的な知識やスキルを学べるため、キャリアアップを目指す社会人におすすめです。

しかし、闇雲に読書をするだけでは効果は期待できません。そこで、読書を効果的な学び直しの手段にするためのポイントを3つ紹介します。

  1. 学習の目的を明確にする
  2. 自分に合ったレベルの本を選ぶ
  3. アウトプットの機会を作る(SNSでの発信、業務への活用など)

読書をする前に「どんな知識やスキルを習得したいのか」を明確にしましょう。目的意識を持つことで、本選びの軸が定まり、学習効果を高めることができます。そして、最初から難しい本を選ぶのではなく、まずは入門書など、理解しやすい本を選ぶことが大切です。読書で得た知識やスキルを実際に活用してみたり、ブログやSNSで発信したりするのも有効な方法です。アウトプットすることで、より深く理解することができます。

6. 行政による学び直しの支援制度

学び直しには費用がかかる場合がありますが、国が用意した支援制度を活用すると、金銭的な負担を軽減できる場合があります。ここでは、代表的な支援制度を2つ紹介します。

なお、各種制度の給付額や対象者の条件は2024年9月時点のものです。支援制度の内容は時期による異なるため、各種制度の最新情報は厚生労働省等のホームページから確認してください。

(1)教育訓練給付金制度(個人を支援)

教育訓練給付金制度とは、働く方の主体的な学びを支援する制度です。厚生労働大臣が指定する講座を受講し修了した場合に、受講費用の一部が支給されます。 本制度を利用することで、金銭的な負担を軽減しながら、スキルアップやキャリアアップを目指せます。

教育訓練給付金には、大きく分けて以下の3つのコースがあります。

コースの種類 給付額 対象講座の一例
一般教育訓練給付金 受講費用の20%(上限10万円) ・資格の取得を目標とする講座(大型自動車、建設機械運転、税理士、社会保険労務士など)

・大学院などの課程(修士・博士の学位などの取得を目標とする課程)

特定一般教育訓練給付金 受講費用の50%(上限25万円~20万円) ・業務独占資格などの取得を目標とする講座(介護支援専門員実務研修、

大型自動車第一種・第二種免許など)

・デジタル関係の講座(ITSSレベル2の情報通信技術関係資格の取得を目標とする講座)

・大学等、専門学校の課程(短時間の職業実践力育成プログラム、短時間のキャリア形成形成促進プログラム)

専門実践教育訓練給付金 受講費用の80%(上限64万円) ・業務独占資格などの取得を目標とする講座(介護福祉士、社会福祉士、調理師など)

デジタル関係の講座(第四次産業革命スキル習得講座、ITSSレベル3以上の情報通信技術関係資格の取得を目標とする講座)

・大学院・大学・短期大学・高等専門学校の課程(専門職大学院の課程、職業実践力育成プログラムなど)

・専門学校の課程(職業実践専門課程、キャリア形成促進プログラム)

参考:教育訓練給付制度|厚生労働省

(2)人材開発支援助成金(企業への支援)

人材開発支援助成金は、企業が従業員のスキルアップや人材育成に取り組むことを支援する国の制度です。従業員への教育訓練にかかる費用の一部を助成することで、企業の成長と人材の育成を促進することを目的としています。

コース名 概要
人材育成支援コース 職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成
教育訓練休暇等付与コース 有給教育訓練等制度を導入し、労働者が当該休暇を取得し、訓練を受けた場合に助成
人への投資促進コース デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成
事業展開等リスキリング支援コース 新規事業の立ち上げなどの事業展開等に伴い、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成

引用:人材開発支援助成金|厚生労働省

7.企業による学び直し支援の方法

近年、企業は、従業員のスキルアップやキャリアアップを支援するために、学び直しを支援するさまざまな支援制度を導入しています。主な支援方法として、以下のようなものがあります。

(1)休職・復職制度の整備と充実

企業がリカレント教育を支援する上で、まず整備しておきたい制度のひとつに休職・復職制度があります。

従業員が安心して学習期間を取得できるように、休職制度の内容を充実させることが重要です。具体的には、休職期間中の給与や待遇、社会保険料の扱いなどを明確にしておく必要があります。

復職後には、円滑に職場復帰できるよう、研修制度などを利用して、ブランク期間中に生じた業務の変化や新しい知識・スキルを習得できるようなサポート体制を整えておくことも大切です。

(2)時短勤務制度の導入

時短勤務制度とは、従業員が業務の都合に合わせて始業・終業時刻を調整したり、1日の所定労働時間を短縮したりできる制度です。 従業員はこの制度を利用することで、仕事が終わった後や空いた時間に資格取得の勉強やスキルアップのためのセミナー受講などができます。

時短勤務制度は、従業員が仕事と学習を両立し、自己成長を図るための有効な手段となります。

(3)セミナー受講料などの一部支援

企業が従業員のリスキリングを促進するためには、金銭的なサポートも効果的です。例えば、従業員が自己啓発のためにセミナーを受講する場合、その受講料の一部または全部を企業が負担する制度を導入します。これにより、従業員の経済的負担を軽減し、学習意欲を高めることができるでしょう。

(4)企業研修制度の充実

企業研修制度とは、企業が従業員に対して業務に必要な知識やスキルを習得させるために実施する研修のことです。

企業研修制度を充実させるためには、以下のような方法が考えられます。

  • 研修内容の充実: 業務に必要な知識やスキルを習得できるような研修内容にする
  • 研修方法の工夫: eラーニングなど、従業員が自分のペースで学習できる研修方法を導入する
  • 研修費用の補助: 従業員が自己啓発のために外部の研修を受講する場合、研修費用の一部または全部を補助する

企業研修制度を充実させることで、従業員のスキルアップを図り、企業競争力の強化につなげることが可能になります。

(5)キャリア形成の支援

企業は、従業員が自らのキャリアプランを立て、主体的にスキルアップや学び直しに取り組めるよう支援することが重要です。具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

実施内容 説明
キャリアカウンセリングの実施 従業員が自身のキャリアプランやキャリアビジョン、能力開発の目標などを明確化できるよう、専門のカウンセラーによるカウンセリングの機会を提供する
メンター制度の導入 経験豊富な先輩社員が、若手社員のキャリア形成をサポートするメンター制度を導入する
キャリアパス制度の導入 従業員が将来どのようなキャリアを築きたいかを明確化し、その実現のために必要なスキルや経験を積めるよう、昇進・異動の道筋を示す
副業・兼業の推奨 従業員が社外での活動を通じて、新たなスキルや知識を習得できるよう、副業・兼業を推奨する

8.リカレント教育支援の実例

近年、多くの企業が社員のスキルアップやキャリアアップを目的とした、リカレント教育を積極的に支援しています。ここでは、企業が実際に行なっている支援内容の実例を具体的に紹介します。

(1)長期休暇制度(サバディカル制度)の導入(ヤフー株式会社)

ヤフー株式会社では、社員の長期休暇取得を支援する制度として、サバティカル制度を導入しています。サバティカル制度とは、一定期間勤続した社員に対して、数週間から数ヶ月の長期休暇を与える制度のことです。

ヤフー株式会社では、2013年と早い段階からサバディカル制度を導入。勤続10年以上の正社員は最長3ヶ月間の休暇を取得でき、休暇支援金として準給与1ヶ月分が支給されます。従業員は長期休暇を通じて、キャリア形成に必要な学習に集中できます。

参照:Yahoo! JAPAN、最⻑3ヶ⽉の⻑期休暇を取得できる「サバティカル制度」の導⼊を開始〜 社員が⾃らのキャリアや働き⽅を⾒つめなおす機会を創出 〜|ヤフー株式会社

(2)「アルムナイ制度」の導入(サイボウズ株式会社)

近年、企業が人材の定着を図るために、「アルムナイ制度」を導入する動きが広まっています。アルムナイ制度とは、退職者と企業が継続的な関係性を築くための制度です。退職後も企業とつながりを持ち続けることで、再就職を円滑に行うことができます。

サイボウズ株式会社は、退職者とのつながりを持ち続けるためにアルムナイ制度を採用。復職を希望する場合、選考ステップを減らしたり募集していないポジションへの受け入れも検討したりなど、退職者向けの採用フローを整備しています。

また、退職者に募集中のポジションの情報をタイムリーに届けたり、現役社員との交流の機会を増やしたりといった取り組みも企画しています。

参照:「育自分休暇」制度改め、「アルムナイ採用」始めます!|サイボウズの舞台裏

9.企業によるリカレント教育支援のメリット

企業が従業員の学び直しを支援するメリットは、大きく3点が挙げられます。

(1)高度な知識・スキルを持つ人材の育成に役立つ

現代社会においては、技術の進歩や社会構造の変化が激しいため、企業は常に最新の知識やスキルを習得し、競争力を維持していく必要があります。従業員に対して研修やセミナー、資格取得支援などを通じて、必要な知識やスキルを習得する機会を提供することができます。

(2)新たな知識・スキルの習得が生産性向上につながる

従業員が新たな知識やスキルを身につけることで、業務の効率化や質の向上が期待できます。

例えば、従来型の業務プロセスに最新のITツールを導入することで、大幅な時間短縮やコスト削減を実現できる可能性があります。また、従業員が専門的なスキルを身につけることで、顧客により質の高いサービスを提供できるようになり、顧客満足度の向上にもつながります。

企業が積極的に従業員の能力向上を図ることで、生産性の向上という大きなメリットを得られるのです。

(3)積極的な人材育成で人材が定着しやすくなる

従来型の日本企業では、終身雇用を前提とした人材育成が一般的でした。企業は新卒採用で人材を獲得し、長期的な育成計画に基づいて教育を提供してきました。しかし、現代社会では個人が自身のキャリアを自律的に形成していく必要性が高まっています。

このような背景から、従業員は企業に対して、自身のキャリア形成を支援してくれることを求めるようになっています。企業が積極的に人材育成に取り組むことは、従業員のキャリア形成を後押しし、企業へのエンゲージメントを高めることにつながります。

10.企業がリカレント教育を支援する際の注意点

企業がリカレント教育を支援する際には、いくつかの注意点があります。 社員のモチベーション向上や企業の成長を促進するためにも、これらの注意点を踏まえて、適切な支援体制を構築していくことが重要です。

(1)休暇・研修制度の事前が必要

企業が学び直しを支援するにあたっては、従業員が安心して学習に取り組めるよう、休暇や研修に関する制度を事前に整備しておくことが重要です。

休暇制度や研修制度が整っていない場合は、従業員の負担が大きくなり、学習意欲の低下や離職につながる可能性があるからです。

以下のような休暇・研修制度を整備することで、従業員のリカレント教育への参加を促進し、企業全体のスキルアップや人材育成を図ることができます。

制度名 内容
サバティカル休暇制度 長期休暇を取得し、自己啓発やスキルアップを目的とした活動に従事できる制度
短時間勤務制度 業務時間を短縮し、空いた時間で学習や自己啓発に取り組める制度
研修参加支援制度 社外研修やセミナーなどの受講費用を企業が一部または全額負担する制度
オンライン学習プラットフォーム利用補助 UdemyやCourseraなどのオンライン学習プラットフォームの利用料を補助する制度

(2)支援に向けて一定のコスト負担がある

企業がリカレント教育を従業員に提供する場合、金銭的な負担が発生することは無視できません。以下の例のように、企業がリカレント教育を支援するためには、一定のコスト負担は避けられないでしょう。

導入制度 想定されるコスト
研修費用 外部の研修プログラムの受講料や、講師を招く場合の謝礼など
教育訓練休暇制度 従業員が研修に参加するために休暇を取得している間の人的コスト
人材開発担当者の人件費 リカレント教育などを推進するための専任担当者を置く場合の人件費
教育効果測定 研修の効果を測定するための費用

しかし、人材育成は企業の成長にとって不可欠な投資です。中長期的な視点を持って、従業員のスキルアップを支援していくことが重要です。

(3)人材の流出リスクを防ぐためのキャリア支援

せっかく育成した人材が、学びを通じて転職市場での価値を高め、より良い条件を求めて転職してしまうというリスクはゼロではありません。

従業員の学習を支援する際には、従業員のキャリアアップやスキルアップを支援することも重要です。

人材流出リスクへの対応策 具体的な対応策
キャリアパス設計支援 従業員のキャリア目標を明確化し、実現に向けた具体的な道筋を提示する
社内公募制度の導入 スキルアップした従業員に社内で活躍できる機会を提供する
新規事業への参画機会の提供 リカレント教育で得た知識やスキルを活かせる場を社内に設ける
成長実感を得られる評価・報酬制度の導入 従業員の貢献やスキルアップを適切に評価し、昇給や昇進、賞与などに反映する
社内ネットワークの構築・活性化 従業員同士の交流を促進することで、帰属意識や一体感を醸成する
ワークライフバランスの推進 仕事とプライベートの両立を支援する

これらの対応策を講じることで、企業はリカレント教育による人材流出リスクを抑制し、投資対効果を高めることができます。

11. まとめ

ここまで、社会人の学び直しについて、その重要性やメリット、注意点、具体的な方法、そして行政による支援制度をご紹介しました。

人生100年時代と言われる現代において、学び直しはもはや特別なものではありません。変化の激しい時代を生き抜き、自分自身のキャリアや人生を豊かにするために、誰もが積極的に取り組むべきものと言えるでしょう。

ぜひ、ご自身のキャリアプランやライフプランを踏まえ、自分に合った学び方を見つけ、新たな一歩を踏み出してみてください。

記事監修

古今堂 靖

一般社団法人日本リスキリングキャリアコンサルタント協議会 理事長

大学中退後、ホスト、ブライダル司会者、青果市場、旅行添乗員、長距離トラック運転手、警備員、レコード会社勤務等を経て、財団法人関西カウンセリングセンター勤務、心理カウンセラー、キャリアコンサルタント養成の傍ら、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会の立上げに参画して国家検定キャリアコンサルティング技能検定制度の創設に携わる。2024年3月に一般社団法人日本リスキリングキャリアコンサルタント協議会を立上げ、生成AI時代のリスキリングキャリアコンサルタントの養成を開始。