【2024年版】リスキリング関連補助金まとめ。助成率や対象事業も解説

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最終更新日:2024.08.19

2022年10月3日、岸田文雄総理大臣は第210臨時国会にて所信表明演説を行いました。その中で、リスキリング(学び直し)を支援する法整の検討を表明しています(参照:リスキリング支援「5年で1兆円」 岸田首相が所信表明|日本経済新聞)。

政府や自治体は、リスキリングを支援するための補助金・助成金を充実させてきました。この記事では、自社の従業員のリスキリングを後押しする補助金・助成金と、個人のリスキリングを後押しする補助金・助成金をまとめて紹介します。

※今回ご紹介する補助金・助成金は、いずれも2024年6月時点で申請可能なものをまとめています。補助金・助成金を利用する場合は、申請時期や給付金額を事前に確認してください。

企業向けの補助金・助成金【政府】

政府が実施している企業向けの補助金・助成金は、大きく3つ挙げられます。厚生労働省の「人材開発支援助成金」と「特定求職者雇用開発助成金」、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」です。それぞれの特徴をまとめました。

人材開発支援助成金|厚生労働省

「人材開発支援助成金」は、事業主などが労働者に対して、業務に必要とされる専門的な知識やスキルを習得させるための職業訓練を実施する場合に利用できる制度です。実施された訓練にかかった経費や、訓練中の賃金の一部などが助成されます。

公式Webサイト:

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

人材開発支援助成金は、以下の7つから目的に合ったコースを選択・申請します。一部のコースでは、中小企業に対する助成金の割合や賃金が高く設定されています。

人材育成支援コース

「人材育成支援コース」は、次に該当する訓練を従業員に実施した場合、経費や訓練期間中の賃金の一部を助成します。

  • 業務に関連した知識やスキルを習得させる訓練
  • 厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練
  • 非正規雇用労働者を対象とした、正社員化を目指す訓練

助成額は企業規模によって変わりますが、賃金助成は1人1時間あたり760円(中小企業以外は380円)に定められています。経費助成は訓練内容によって45〜100%の助成が得られます。

教育訓練休暇等付与コース

「教育訓練休暇等付与コース」は、企業が有給の教育訓練等制度を導入した上で、従業員が制度を活用して休暇を取得して訓練を受けた場合に申請できる助成金です。有給の教育訓練等制度を導入した企業に対して、30万円が支給されます。

また、業務命令ではなく自発的に自社以外が実施する「教育訓練」「各種検定」「キャリアコンサルティング」の、いずれかの講座を受講することなども支給条件に含まれます。

人への投資促進コース

「人への投資促進コース」は、従業員にデジタルや成長分野、IT分野などの教育訓練を受けさせる場合、訓練の経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成するコースです。訓練の内容や分野に応じて、助成率や賃金助成額が定められています。

【助成率・賃金助成額の一例】

訓練メニュー 経費助成率 賃金助成額
高度デジタル人材訓練 中小企業:75%

大企業:60%

中小企業:960円

大企業:480円

成長分野等人材訓練 75% 960円

※国内大学院の場合

定額(サブスクリプション)訓練 中小企業:60%

大企業:45%

なし

事業展開等リスキリング支援コース

「事業展開等リスキリング支援コース」新規事業の立ち上げなどの事業展開を行うとき、進出する分野で必要な知識・スキルを従業員に訓練させる場合に申請できるコースです。助成率・助成賃金は以下のように定められています。

経費助成率 賃金助成額
中小企業:75%

大企業:60%

中小企業:960円

大企業:480円

建設労働者認定訓練コース

「建設労働者認定訓練コース」は、従業員に建設関連の訓練を実施した場合や、有給を取得して認定訓練を受講させた場合の、経費や賃金を助成するコースです。経費助成率は、対象経費の1/6まで、賃金助成額は1人あたり1日3,800円とされています。

建設労働者技能実習コース

「建設労働者技能実習コース」は、従業員の技能向上を目的として実習を、有給を取得して受講させた場合に、訓練経費や賃金の一部を助成するコースです。従業員数によって、経費助成率と賃金支給額は次のように異なります。

経費助成率 賃金助成額
中小企業(従業員数が20人以下)

対象経費の3/4まで

中小企業(従業員数が21人以上)

対象経費の7/10まで

中小企業(従業員数が20人以下)

1人あたり1日8,500円

中小企業(従業員数が21人以上)

1人あたり1日7,600円

障害者職業能力開発コース

「障害者職業能力開発コース」は、障がい者に教育訓練を継続的に実施するために必要な施設を設置・運営する場合、その費用を一部助成するコースです。施設や設備の設置・整備、更新に要した費用の3/4が助成されます。

特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)|厚生労働省

「特定求職者雇用開発助成金」は、高年齢者や障害者といった就職困難者を、ハローワークなどを通じて雇用している事業主が対象となる助成金です。特定求職者雇用開発助成金には2つの助成メニューがあります。

コース名 対象となる条件
助成メニュー(1)【成長分野】 従業員を成長分野(デジタル、DX化に関連する分野)に従事させ、職場環境の改善・能力開発に取り組んでいる
助成メニュー(2)【人材育成】 就労経験のない分野・職業を希望する従業員に対して、人材開発支援助成金を活用した訓練を行った上でその業務に従事させている

各メニューの支給額は共通していて、労働時間や労働者の分類によって、1人あたり最大360万円の助成額が3年間支給されます。

公式Webサイト:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_seichou_00008.html

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業|経済産業省

「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、リスキリングならびに労働者のキャリア形成を促進する観点から、以下の活動を支援する事業です。

  • キャリア相談対応:自らのキャリアについて民間の専門家に相談
  • リスキリング提供:キャリア相談を参考に、リスキリング講座を受講
  • 転職支援:キャリア相談・リスキリング提供を踏まえた職業紹介

「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、3つの活動を無料で提供します。それに加えて、3つの活動を提供する事業者は、サービス提供の経費に対する補助が受けられます。具体的な補助金の支給額は、以下の通りです。

補助金の支給条件 補助金の支給額
リスキリング講座を提供して、受講者が修了した場合 受講費用の1/2(上限40万円)
受講者がリスキリング講座を経て実際に転職し、1年間継続的に転職先にて就業している 上記に追加で講座受講費用の1/5(上限16万円)

公式Webサイト:

https://careerup.reskilling.go.jp/worker/

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業|経済産業省

企業向けの補助金・助成金【自治体】

各地方自治体は、企業のリスキリングを推進する補助金・助成金をそれぞれ実施しています。今回は一例として、東京都、宮城県、広島県などが実施している補助金・助成金を紹介します。

DXリスキリング助成金|東京都

東京都が実施している「DXリスキリング助成金」は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)に関する職業訓練を実施する際に経費を助成する制度です。職業訓練は民間の教育機関などが提供しているものが条件で、都内の中小企業・個人事業主が対象となります。助成対象となる経費の2/3(1社ならびに1年度につき64万円が上限)が支給されます。

公式Webサイト:

https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/dx.html

オンラインスキルアップ助成金|東京

同じく東京都が実施している「オンラインスキルアップ助成金」は、eラーニングを利用した職業訓練にかかる経費を助成する制度です。都内の中小企業などが支給対象で、助成額は事業者区分によって以下のように定められています。

事業者区分 経費助成率 上限額
小規模企業者 2/3 27万円
その他の中小企業など 1/2 20万円
中小企業など(非正規雇用労働者の参加者が受講者全体の2割以上だった場合) 2/3 27万円

公式Webサイト:

https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/online.html

宮城県中小企業等デジタル化支援事業|宮城県

「宮城県中小企業等デジタル化支援事業」は、県内の中小企業・小規模企業を対象に、生産性向上を目的としたデジタル化の取り組みに対する補助事業です。具体的には、デジタル化に伴うアドバイザーの派遣や、導入経費の補助が実施されています。経費の最大1/2(上限250万円、下限50万円)の金額が支給されます。

公式Webサイト:

https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/chukisi/r5digital-shien.html

金沢市中小企業デジタル人材リスキリング促進助成金|石川県

「金沢市中小企業デジタル人材リスキリング促進助成金」は、中小企業のデジタル人材育成促進や、生産性向上・新たな付加価値の創出を図るための助成金制度です。金沢市内で勤務する従業員や役員を対象として、以下の試験を受験したり対策講座を受講したりする場合、試験合格者数の費用(受験手数料、講座受講料)を助成します。

  • ITパスポート試験
  • 基本情報技術者試験
  • 応用情報技術者試験

経費助成率は、受験手数料・講座受講料ともに1/2です。限度額は対策講座受講料の場合は1人あたり10,000円(応用情報技術者試験のみ 20,000円)、受験手数料は1人あたり3,000円とされています。

公式Webサイト:

https://www4.city.kanazawa.lg.jp/soshikikarasagasu/sangyoseisakuka/gyomuannai/3/4/25104.html

ITパスポート取得支援補助金|広島県

広島県が実施している「ITパスポート取得支援補助金」は、県内の企業や団体の生産性向上や新たな付加価値創出の促進を目的とした補助金です。

従業員や役員を対象に「ITパスポート試験」の受験を実施する際、経費の一部を試験合格者数に応じて補助します。補助対象経費となるのは以下の3つです。

  • 試験受講料(補助限度額:1人あたり6,800円)
  • 対策講座受講料(補助限度額:1人あたり20,000円)※大手企業は1人あたり10,000円
  • 資格手当(補助限度額:1人あたり26,800円)※大手企業は1人あたり16,800円

公式Webサイト:

https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/72/reskilling-ipasshojokin.html

個人向けの補助金・助成金【政府】

ここからは、個人のリスキリングに活用できる補助金・助成金を紹介します。政府が実施している制度には、厚生労働省の「教育訓練給付金制度」があります。

教育訓練給付金制度|厚生労働省

教育訓練給付制度とは、働く人々のスキルアップ、キャリアアップを支援して、雇用の安定や就職の増加を目的とした制度です。厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了したとき、かかった費用の一部が給付金として支給されます。

教育訓練給付金の支給対象は幅広く、雇用保険に加入している会社員や、週20時間働いているパート・アルバイトが該当します。給付金の支給対象となる教育訓練は3種類あり、それぞれに以下のような支給金額が設定されています。

教育訓練の種類 対象となる講座・資格の例 支給金額
一般教育訓練 ・中小企業診断士、TOEIC、TOEFL、日商簿記などを取得するための講座

・大学院

受講費用の20%

(上限10万円)

特定一般教育訓練 ・社会保険労務士、税理士、行政書士、司法書士、宅地建物取引士、ファイシャンナルプランニングなどを取得するための講座

・基本情報技術者試験などのIT関係資格取得の講座

受講費用の40%

(上限20万円)

専門実践教育訓練 ・専門職大学院(MBA、法科大学院など)

・専門学校(経理・簿記、情報、デザインなど)

・大学院の職業実践力育成プログラム(社会科学、工学・工業)

・応用情報技術者試験などのIT関係資格

・AI、IoT、データサイエンス関係の講座

最大で受講費用の70%

(年間上限56万円、最長4年)

公式Webサイト:

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html

個人向けの補助金・助成金【自治体】

各自治体は、eラーニング受講を補助する事業や大学と連携してリスキリングを促す制度など、さまざまな事業を展開しています。ここでは、東京都や大阪府などが実施している、個人向けの補助金・助成金を紹介いたします。

短期集中型資格取得支援訓練事業|東京都

東京都が実施する「短期集中型資格取得支援訓練事業」は、求職者に対して短期での資格取得を支援して、早期の再就職につなげる事業です。

同事業は「eラーニング」と試験直前の「合宿訓練」を無料で提供します。2つの学習を通じて、ITパスポートや宅地建物取引士、3級ファイナンシャル・プランニング技能検定の合格などを目指します。

公式Webサイト:

https://www.shikaku-shien.metro.tokyo.lg.jp/

金沢市大学連携リスキリング促進助成金|石川県

「金沢市大学連携リスキリング促進助成金」は、金沢市と連携協定を締結している高等教育機関(金沢大学、金沢工業大学など)でのリスキリングを支援する助成事業です。市内に居住している人、市内の事務所に勤務している人を対象にして、入学料・受講料の1/2(上限額2万円)を支給します。

過去の講座には、「大規模データ取得・管理・活用人材」育成プログラム(金沢大学)、組織活性化に向けたDXリスキル教育プログラム(金沢工業大学)などがあります。

公式Webサイト:

https://www4.city.kanazawa.lg.jp/soshikikarasagasu/chiikiryokusaiseika/gyomuannai/1/24788.html

ものづくりDX人材育成リスキリング事業|岐阜県

岐阜県の「ものづくりDX人材育成リスキリング事業」は、県内企業への求職者や、県内企業の従業員を対象として、デジタルスキルに特化した雇用型訓練を実施する事業です。雇用型訓練は無料で提供され、研修期間中は、事業参画企業から給与が支払われます。

公式Webサイト:

https://www.pref.gifu.lg.jp/site/pressrelease/305022.html

大阪府スキルアップ支援金|大阪府

「大阪府スキルアップ支援金」は、離職期間や求職期間が長引いている人や、非正規雇用で長期間働いている人を対象とした支援事業です。大阪府が指定した教育訓練講座を受講・修了した場合、講座受講費の1/2を支給し、スキルアップを通じた転職、就職を支援します。

公式Webサイト:

https://www.pref.osaka.lg.jp/koyotaisaku/nextstage/skillup.html

広島県未来チャレンジ資金|広島県

「広島県未来チャレンジ資金」は、県内産業の発展に欠かせない人材を育成するための制度です。大学院等専門課程で高度な知識を身につけて、将来的に広島県内の企業で働きたいという人に、修学資金を無利子で貸し付けます。

加えて、高等教育機関での課程修了後9年間のうち、広島県内の企業・団体などで8年間収容すると、貸付金全額の変換が免除されます。

公式Webサイト:

https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/72/challenge-koubo.html?utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=GSN&gclid=Cj0KCQiA5fetBhC9ARIsAP1UMgFOt454Pj3pH8gWZL8H-dv_tG3H7y-QH7bfKWT1hIJivYczgaMUQhIaArv0EALw_wcB

まとめ

政府や自治体は、人々のリスキリングを促進するためにさまざまな補助金・助成金を実施しています。今回紹介した制度をうまく活用して、従業員のリスキリングを推進していきましょう。