「NoMaps2024」開催。夢への挑戦とAI共存が示す全世代リスキリングの可能性

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最終更新日:2024.09.27

「NoMaps2024」開催。夢への挑戦とAI共存が示す全世代リスキリングの可能性

2024年9月11日から15日にかけて、北海道札幌市にて「NoMaps2024」が開催された。

「クリエイティブでよりよい世界を作ろうとする人の出会いと刺激の場」をコンセプトとして同イベントには、多種多様な才能が集った。リスキリングドットコムを運営しイベントを協賛するKIZASHIもまた、2つのセッションを開催。その様子をレポートにてお届けする。

若者・親子リスキリングで鈴木奈々、キャリコンを目指す!

「全世代リスキリング。若者・親子リスキリングで鈴木奈々、キャリコンを目指す!」のセッションでは、タレントの鈴木奈々さんがキャリアコンサルタント資格取得を宣言。ゲストたちとともに、リスキリングの重要性や新たな挑戦をすることの素晴らしさについて語り合った。

左:一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事、後藤 宗明 氏 真ん中:タレント 鈴木 奈々氏、右:株式会社ノーサイド・ウイング 代表取締役 平野 龍一 氏

左:一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事、後藤 宗明 氏 真ん中:タレント 鈴木 奈々氏、右:株式会社ノーサイド・ウイング 代表取締役 平野 龍一 氏

「人の役に立ちたい」キャリアコンサルタント挑戦への想い

一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事の後藤宗明氏がモデレーターを務めた本セッションにて、鈴木氏はキャリアコンサルタントを目指したきっかけを語った。

「私自身、挑戦したいという気持ちや人の役に立ちたいという気持ちがありました。最近、仕事をしていると後輩の子たちから相談を受けることが多いんです。彼女たちのために、何をしてあげられるのかを真剣に考えたいなと」(鈴木氏)

タレント 鈴木 奈々氏

タレント 鈴木 奈々氏

キャリアコンサルタントの資格取得では、父親と一緒に勉強するという鈴木氏。彼女の宣言に対して、周囲から大きな反響が起きたという。

「(周りの反応が)すごかったです!『私も取りたい』『資格取得を通じて手に職を付けたい』と、興味津々にいろいろ聞いてくれる友人もいました」(鈴木氏)

鈴木氏の宣言をきっかけに、多くの人々がチャレンジ精神を刺激されているようだ。9月22日より、資格の総合スクール・LEC東京リーガルマインド(以下、LEC)のオンラインスクールにて鈴木氏は勉強を開始する。後藤氏は、鈴木氏がこれから勉強を始めるにあたり、7つのポイントを大切にしてほしいと伝えた。

「私が新しいことに挑戦するとき、大切にしているのが次の7つです。

  1. まずはやってみること
  2. 健全な危機意識
  3. 6割理解で突き進む
  4. 忘れても落ち込まず反復する
  5. 違うなと思ったら別の道に進んでもOK
  6. すぐ成果が出なくても焦らない
  7. 自分の頑張りに自信を持つ

鈴木さんも、ぜひこの7つを大切にしてください」(後藤氏)

7つのリスキリング・マインドセット

後藤氏は、自身も40歳からデジタルテクノロジーの分野に飛び込んだ経験を踏まえ、リスキリングは年齢に関係なく、誰でもいつでも始めることができると強調する。ゲストであり北海道イエロースターズ株式会社、株式会社ノーサイド・ウイング 代表取締役の平野龍一氏も、後藤氏の発言に同意する。

平野氏は警察官、ベンチャー企業、上場企業を経て独立、現在はプロバレーボールチームの経営にも携わるなど、多彩なキャリアを築いてきた。

「私は警察官から、まったく未経験の分野に転職して未経験の営業職に就きました。情報源は本以外にないなか、必死に勉強したのを覚えています。その後も、マネジメントやスポーツの世界、経営の知識などを学び直してきました。だからこそ、リスキリングの重要性を肌身に感じています。リスキリングをしてこなければ、今の人生はなかったでしょう」(平野氏)

株式会社ノーサイド・ウイング 代表取締役 平野 龍一 氏

株式会社ノーサイド・ウイング 代表取締役 平野 龍一 氏

夢を叶えるための挑戦を応援してほしい

鈴木氏は会場に集った参加者にも声をかける。参加者に「夢はありますか?」と質問する鈴木氏は、自身の経験を交えながら次のようにアドバイスした。

「ああなりたいとか、こうなりたいという想いが皆さんにもあると思います。どんなに小さなことでもいいから、全部ノートに書いてください。素敵な人と巡り合って結婚したい、親に家をプレゼントしたい、モデルになりたい……。私は書いてきた夢をすべて叶えてきました!ぜひノートで想いを形にしてみてください」(鈴木氏)

鈴木氏は、18歳の時に渋谷で出会った益若つばささんとのエピソードを披露した。

「益若つばさちゃんの握手会に行って、その時に彼女から『モデルにならない?』って言われたんです。そこから18歳から23歳までPopteenモデルをやって、23歳の時に『踊る!さんま御殿!!』に出演しました」(鈴木氏)

鈴木氏は会場の参加者に、夢に向かって一歩踏み出す勇気の大切さを力説。最後は参加者に向けて、これからの挑戦を見守っていてほしいと伝えた。

「私はおバカキャラで勉強も本当に苦手ですが、そんな私がキャリアコンサルタントの資格を取れたとなれば、きっと『私も何か挑戦してみよう』と思ってくれる気がするんです。ぜひ、これからの私の挑戦を応援してください!」(鈴木氏) 

リスキリング起点で考える、生成AI時代の企業経営

「リスキリング起点で考える、生成AI時代の企業経営」と題したセッションでは、生成AI時代のリスキリングという観点で、ゲストたちが議論。これから身につけるべきスキルや、そのスキルを「どのように身につけるべきか」について話された。

左:一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)事務局次長 小村 亮 氏、右:一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 後藤 宗明 氏

左:一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)事務局次長 小村 亮 氏、右:一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 後藤 宗明 氏

スキルとリテラシー両方の観点でAI時代のリスキリングを進める

一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)事務局次長の小村亮氏は、セッション冒頭で生成AIのインパクトについて前向きに捉えていることを明かした。

「生成AIの登場はAI業界だけではなく、マーケティングも含めて全ての産業・職種にゲームチェンジの可能性をもたらすという期待感を持っています」(小村氏)

企業の間でも生成AIの導入は急速に進んでいるが、従来の仕事がAIに代替される可能性も懸念されている。AIを活用できる人材やノウハウが不足していることが大きな壁となり、足踏みしている企業も少なくない。

「AIやロボットの活用により、今後世界で1,400万件分の雇用がなくなると予想されています。こうした『技術的失業』に対応して、人間側がスキルをアップデートする必要があります。そこで全世界で注目されているのがリスキリングです」(後藤氏)

生成AI時代において、私たちはどのようなスキルを身につけていけば良いのだろうか。後藤氏は、AIが得意なことを理解した上で、人間ならではの強みを活かすことが重要だと述べている。

「AIが得意なのは、特定のタスクの深掘りや高速かつ正確なタスク処理です。それに対して、人間に今後求められるスキルとは、AIの不正解を見抜けるレベルの専門性を持てるかどうかだと思います」(後藤氏)

AIが出した答えが本当に正しいのか、倫理的に問題はないのか、などを判断できる専門性が、今後ますます重要となる。その上で、後藤氏は、人間が本来得意とする「問いを立てる力」に注目する。

「問いを立てる力を、私はよく『課題を発見する力』と置き換えて考えています。正解を出すのはAIの方が得意。であれば、人間はその手前の課題設定を担うことになると考えています」(後藤氏)

こうしたスキルを身につけるうえで、小村氏は「リテラシー」と「スキル」の2つの側面からアプローチすることの重要性を説く。

「多くの人々は『プロンプトをどのように設計すれば精度の高い回答が得られるだろう』など、スキルばかりに注目しがちです。しかし、そうしたテクニックを活かす土台となる心構えや知識といった『リテラシー』を身につけることも、非常に重要です。

利便性の裏側には必ずリスクがあります。誤情報やフェイクニュースなど、AIを悪用するケースはいくつも報告されています。企業が生成AI活用を進めるには、まずは従業員のリテラシーを向上し、安全にAIを活用できる土壌を整える必要があるでしょう」(小村氏)

一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)事務局次長 小村 亮 氏 一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)事務局次長 小村 亮 氏

類似スキル・隣接スキル・学際的スキルでAIとは異なる価値を生み出す

生成AI時代におけるリスキリングを成功させるひとつの考え方として、後藤氏は「類似スキル」「隣接スキル」という考え方を紹介した。

「仮に皆さんが、仕事の中でA・B・Cというスキルを持っているとします。そして、将来就きたい仕事ではA・D・Eというスキルが必要です。どちらの仕事にも共通して必要となるAが、いわゆる『類似スキル』です。新しい分野に移って活躍するには、この類似スキルを活かして他のスキルを身に着けていくことが大切です」(後藤氏)

一方、隣接スキルは何かというと、異なる分野に移るときの”架け橋”となるスキルだという。

「例えばデジタルマーケティングの世界では、Web上の口コミなどから投稿者の抱く感情を分析する『センチメント分析』という手法があります。この分析手法にはAIを用いられることが多いため、センチメント分析のスキルを身につけることが、AI分野へ移るきっかけになります」(後藤氏)

類似スキルと隣接スキルをかけ合わせることで、スムーズなキャリアチェンジが可能になると後藤氏は語る。さらに後藤氏は、異分野の知識やスキルを組み合わせる「学際的スキル(IDスキル)」の重要性も強調する。

「学際的スキルとは、複雑な問題を解決し新たな洞察を生み出しイノベーションを起こすために、2つ以上の異なる分野の知識を統合し応用するスキルのことです。学問の世界では、人文科学・自然科学・社会科学の3学問を組み合わせて、今までにはない価値を生み出していくことを指します。

現時点において、皆さんはなんらかのスキルを持っています。すでに持っているスキルと新しいスキルを、いかに組み合わせていくか。学際的スキルの発想で、スキルの足し算やかけ算をしていくことで、AIとは異なる価値を生み出していると思います」(後藤氏)

「ストリート・スマート」を身につけて多くの失敗を重ねよう

質疑応答では、さまざまな質問が寄せられた。参加者からの「人と人とのコミュニケーションもAIに置き換わっていくのか」という質問に、後藤氏は「ステークホルダーマネジメント」について言及する。

「ステークホルダーマネジメントとは、複雑な人間関係の中で関係者と協力し物事を進めていくコミュニケーション能力やマネジメント能力を指します。産官学とさまざまな利害関係者と協力するためのコミュニケーションは、まだAIにはできない領域だと思います」(後藤氏)

一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)事務局次長 小村 亮 氏

一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 後藤 宗明 氏

「中高生からやるべきことは?」という質問に対して、後藤氏はAIが決して持ち得ない、人間ならではの強みとして「ストリート・スマート」の重要性を説く。

「アカデミック・スマートとは、勉強など学問の面で優れていることです。それに対してストリート・スマートとは、人に溶け込む力や周囲に対する観察力、状況判断力、トラブルを回避する力など生きていくための知恵を持つことを指します。AIが正解を次々と生み出すこれからの時代、AIとは真逆の能力であるストリート・スマートはとても重要だと思うんです。

ストリート・スマートを身につける方法はひとつだけ。それは『失敗すること』です。失敗を糧に知恵を身につけよう・学ぼうという考えが生まれ、ストリート・スマートが養われます。これからは正解を求める時代ではなく、探索の時代です。ぜひこれから、たくさんの失敗を重ねてください」(後藤氏)

AI時代において、変化を恐れず自ら行動して失敗から学び続ける姿勢こそが、新しい時代を生き抜くために不可欠な要素と言えるのではないだろうか。