「生成AI時代のリスキリングサミット2024」開催。Day1イベントレポート

  • AI
  • イベントレポート

最終更新日:2024.10.17

2024年9月11日(水)および12日(木)に東京国際フォーラムにて「生成AI時代のリスキリングサミット2024」が開催された。

Day1である9月11日は、衆議院議員 小林 史明氏と、本サミットのエグゼクティブアドバイザーを務めるジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 後藤 宗明氏が登壇した基調講演から始まり、2ステージにて15の講演・対談などのセッションや企業のブース出展があった。本記事ではその模様をハイライトでお伝えする。

 

【生成AI時代のリスキリングサミット2024 開催概要】

生成AI時代のリスキリングサミットは、リスキリングを「人材を起点とした変革の手段」と定義し、リスキリングが日本企業の文化として根付くことを目的としたシンポジウム。2024のコンセプトは「VISIONING 〜経営ビジョンから逆算するリスキリングの第一歩〜」とし、産官学の有識者の方々による基調講演やパネルディスカッションを通じて、経営ビジョンの実現に向けたリスキリングの第一歩を踏み出すきっかけを提供した。

【基調講演①】8掛け社会のリスキリング(衆議院議員 小林 史明氏)

8掛け社会に向けた日本の成長戦略とリスキリングの重要性

小林史明衆議院議員は、人口減少社会における日本の成長戦略について講演を行った。2050年までに日本の人口は1億人を下回り、2040年にはエッセンシャルワーカーの人手不足が約2割に達すると予測されている。しかし、小林氏はこれを前向きに捉え、「10人でやっている仕事を8人で回せる社会」を目指すべきだと提言した。

そのために政府は、アナログ規制の撤廃やスタートアップ支援を積極的に行い、加えて生産性向上による供給力増加、賃上げによる消費拡大、成長産業への労働移動とリスキリング、そして産業構造の変革という好循環を作り出す戦略を立てている。さらに、社会課題をビジネスチャンスに変え、国内で生み出したソリューションを海外展開することで、人口減少下でも経済成長を実現する構想を示した。

この変革の中心となるのが人材であり、一人一人の個人がもっと意欲と能力を発揮する社会へと繋げるために、ジョブ型雇用の導入や、個人の目的意識に基づいた働き方の実現が重要だと強調した。

抜粋)自由民主党 新しい資本主義実行本部経済構造改革委員会 提言(概要)

企業の価値を高め、個人の付加価値を上げることで豊かになる

小林氏は、企業の成長戦略として二つの道筋を示した。一つはDX、ロボティクス、AIの導入による生産性向上で組織規模を維持しながら収益性を上げる方法、もう一つはM&Aを活用して組織を拡大し、成長産業へ人材を移動させる方法である。政府は昨今特にM&Aを推進しており、年間2社以上のM&Aを行う企業への税制優遇や、中堅企業という枠組みを作り支援拡大を行っている。

また、日本の国際競争力を高める分野として、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を挙げた。日本の強みであるケミカル、素材、ものづくりの技術を活かし、電子機器からのレアメタル回収などで世界をリードできる可能性を指摘。そのために必要な人材のスキル変革=リスキリングの重要性を強調した。さらに、グローバル人材の獲得にも注力しており、就労ビザの取得しやすさを活かしつつ、より高度な人材を呼び込むためのグローバルスタートアップキャンプの設立も計画している。

小林氏は最後に、8掛け社会は決して暗いものではなく、10人分の仕事を8人で行い、付加価値を高めることで個々人および社会は豊かになることができると締めくくった。この変革に向けて、個人と組織がどのように変わっていくべきか、参加者に考えを促した。

【基調講演②】経営ビジョンから逆算するリスキリングの第一歩(ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 後藤 宗明氏)

AI時代におけるリスキリングの重要性と本質

ジャパン・リスキリング・イニシアチブの代表理事である後藤宗明氏は、AI時代におけるリスキリングの重要性について講演を行った。後藤氏は自身の経験として、40歳からデジタルテクノロジー分野へのリスキリングを開始し、現在はAI関連の仕事にも携わっている。講演では、リスキリングが注目される背景として、技術的失業の問題を挙げた。世界経済フォーラムの予測によると、今後5年間で新しいテクノロジーやグリーン分野で6900万件の雇用が生まれる一方、8300万件の雇用が自動化等によって失われる可能性がある。このような状況下をふまえ、リスキリングの本質について説明した。

リスキリングとは日本で誤解されがちな個人の自己啓発ではなく、組織が従業員を再教育することを指し、組織の戦略上の必須事項であると強調。ハーバードビジネスレビューの特集を引用し、リスキリングは全てのリーダーとマネージャーの責任であり、組織のチェンジマネジメントの一環であることを指摘した。また、従業員のキャリアパスと組織のリスキリング方向性の一致が重要であり、特に中小企業においては官民連携の支援が必要であると述べた。

AI時代に求められる人間のスキルと学際的アプローチ

続いて後藤氏は、AI時代に人間に求められるスキルについて考察を展開した。AIが得意とする「正解を出すこと」や「特定のタスクを深掘りすること」以外の領域で人間が活躍する必要性を説き、具体的には、AIの不正解を見抜けるレベルの専門性、課題を発見する力、マネジメントスキル、利害関係者を調整するスキル、そしてストリートスマートさ(世渡り上手力)が重要になると指摘した。

特に注目すべきなのが「学際的スキル」である。これは、複数の異なる分野の知識を統合し応用するスキルを指す。複雑な問題解決や新たな洞察、イノベーションの創出に不可欠であり、それぞれが現在持つスキルに何を掛け合わせたら学際的スキルとなり、向かっている課題を解決することに近づくのかぜひ考えて欲しいと呼びかけた。また、高齢者の雇用環境の変化にも触れ、定年後も個人事業主やフリーランスとして活躍できるよう、リスキリングを通じて新しい価値を創造することの重要性を強調した。最後に、リスキリングは「人材を基点とした変革の手段」であると定義した今回のサミットのテーマに共感を示し、改めて組織や会社の変革のために不可欠な取り組みであると締めくくった。

「生成AI時代のリスキリングサミット2024」Day1では、2つのステージで15のセッションが行われ、未来学者エイミー・ウェブ氏の特別講演など 産官学それぞれの有識者から生成AIやリスキリングについて参加者・視聴者にメッセージが届けられた。