【2024年最新版】リスキリングすべき12の人気資格。導入事例や注意点も

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最終更新日:2024.11.07

この図は、デジタルトランスフォーメーション(DX)に対応するために有用な資格を分野別に示しています。それぞれの分野でチェックされている資格は以下の通りです: 1.AI関連 G検定 E資格 生成AIパスポート 2.プログラミング関連 VBAエキスパート Pythonエンジニア 3.情報処理関連 ITパスポート 4.データ分析関連 統計検定 5.経営関連 中小企業診断士 MBA 6.法律関連 社会保険労務士 司法書士 行政書士

リスキリングは、従業員がこれまでとは異なる仕事に就いたり、業務に対応したりできるように、企業が従業員に対してスキル習得を支援する取り組みを指します。

生成AI(ジェネレーティブAI)が注目を浴び、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進がますます重要視されるなかで、企業や従業員がともに生き残るための欠かせない施策となっています。

最近では、このリスキリングをよりスムーズに実施するために、DXに役立つ資格を活用する企業も増えてきました。

この記事では、リスキリングすべきおすすめのDX資格と、資格取得を推進するうえでの注意点をご紹介します。

【総括】リスキリングすべき人気のDX資格

 

この図は、リスキリングに役立つ様々な資格やスキルを示しており、それぞれがデジタルトランスフォーメーション(DX)に関連しています。資格は大きく分けて5つのカテゴリーに分類されています。 1.AI関連の資格 G検定 E資格 生体AIパスポート 2.プログラミング関連の資格 VBAエキスパート Pythonエンジニア認定基礎試験 3.情報処理の資格 ITパスポート 4.データ分析関連の資格 統計検定 5.経営関連の資格 中小企業診断士 MBA 社会保険労務士 司法書士 行政書士

リスキリングすべきDX資格には次のようなものがあります。

リスキリングすべき資格:AI分野

G検定

昨今、AIの進歩は著しいものがあり、ビジネスにも大きな影響をもたらしています。今やDX推進にはAIの活用が欠かせないといえるでしょう。
G検定(ジェネラリスト検定)は、日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施している検定です。AI・ディープラーニングに関する基本的な知識(手法、仕組み、法律や倫理といった問題など)を持っているか、その知識を事業に活用できる能力を有しているかを判定します。

G検定をリスキリングに導入すると、従業員がAI・ディープラーニング分野に強くなるため、DXをよりスピーディーに推進することができます。新たなデジタル事業の展開、既存事業への利便性の高いITツールの導入などを迅速に行いたいなら、最初に検討しておいて損のない資格です。

公式Webサイト:https://www.jdla.org/certificate/general/

E資格

E資格は、ディープラーニングの理論を理解し、それを実装できる能力を持っている人に与えられる資格です。G検定と同じく、JDLAが主催しています。

E資格の認定試験を受けるには、先にJDLA認定プログラムを試験日の過去2年以内に修了している必要があります。試験の出題範囲は、応用数学、機械学習、深層学習、開発・運用環境です。

ディープラーニングは、問い合わせに対する自動応答や言語の自動翻訳、精度の高い検査システムなど、利便性の高いシステムを開発するのに重要な技術です。企業がE資格をリスキリングに導入すると、業務の質を上げながら、自動化や省人化を実現できるようになるでしょう。

公式Webサイト:https://www.jdla.org/certificate/engineer/

生成AIパスポート

生成AIパスポートは、生成AIを正しく理解し、活用できる人に与えられる資格です。情報技術の進化により、AIが文章や音楽、画像などを自動生成する技術が注目されている現代において、その理解と活用能力を評価します。生成AI活用普及協会(GUGA)が、その認定試験を実施しています。

生成AIパスポートをリスキリングに導入すれば、例えば生成AIを使って新規商品のアイデアを効率よく出す、コンテンツの制作コストを削減するなど、従業員が生成AIをさまざまな場面で率先して用いるようになるでしょう。そのため、よりスピーディーなDXを進めるのに役立つ資格といえます。

公式サイト:https://guga.or.jp/outline/

リスキリングすべき資格:プログラミング分野

VBAエキスパート

VBAエキスパートは、Excel、Accessのマクロ・VBA(Visual Basic for Applications)のスキルを一定レベル以上持っている人に与えられる資格です。
VBAエキスパートの認定試験は「Excel VBA ベーシック」「Excel VBA スタンダード」「Access VBA ベーシック」「Access VBA スタンダード」の4種類がありますが、いずれも実務に即した内容で構成されています。

そのため、リスキリングに導入すれば、事務作業の効率化やデータ処理の自動化などができる従業員の育成につながるでしょう。

公式Webサイト:https://vbae.odyssey-com.co.jp/

Pythonエンジニア認定試験

Pythonエンジニア育成推進協会が実施している資格試験です。「Python 3 エンジニア認定基礎試験」「Python 3 エンジニア認定実践試験」「Python 3 エンジニア認定データ分析試験」があり、2024年には「Python 3 エンジニア認定データ分析実践試験」が実施される予定となっています。

Pythonは、AIの開発に適しているプログラミング言語とされ、画像解析を始めとするさまざまなシーンに活用されています。アプリ開発やブロックチェーン技術の開発なども可能です。Pythonエンジニア認定試験をリスキリングに導入すれば、プログラミングに精通した従業員が増え、開発系にも強い企業としてアピールできるようにもなるでしょう。

公式Webサイト:https://www.pythonic-exam.com/

リスキリングすべき資格:情報分野

ITパスポート試験

ITパスポート試験は、情報処理推進機構(IPA)が実施している国家試験です。社会人が身につけておきたいITの基礎知識を習得しているかを判定します。試験内容はストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系の3つの柱からなり、受験者は対策勉強するなかで、ITの業務活用に必要な知識を体系的に身につけられます。

ITパスポート試験は、社会人のほか、学生も対象としていることから、比較的取り組みやすいのが魅力です。DX推進の第一歩として、まずは社内全体のITスキルの底上げをしたいときに役立つ資格といえるでしょう。2022年度の試験に応募した社会人のうち、82%が非IT系企業に所属しているというデータもあります。

公式Webサイト:https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/index.html

リスキリングすべき資格:データ分析分野

統計検定

統計検定は、統計質保証推進協会が実施している検定です。統計に関する知識があるか、統計を活用するスキルは身についているかを判定します。1~4の等級があるほか、統計調査やデータサイエンスのスキルを問う検定もあります。

統計検定をリスキリングに導入すれば、従業員の蓄積されたデータを読み解き、経営戦略やマーケティングにおいて重要な方針や課題解決案を提示するスキルの習得に寄与します。

公式サイト:https://www.toukei-kentei.jp/

リスキリングすべき資格:経営分野

中小企業診断士

中小企業診断士は、中小企業の経営課題を発見し、適切な解決策を提案できると認められた人に与えられる国家資格です。

中小企業診断士の資格を得るには、経営全般に関わる「経済学・経済政策」「財務・会計」などの理解を深めたうえで、実例をもとに実際に診断したり、実務に従事したりする必要があります。中小企業診断士の資格をリスキリングに導入することで、DX推進に対する的確なアドバイスができる、既存事業の課題を抽出して改善策を提案できる従業員の育成につながります。

公式サイト:https://www.j-smeca.jp/index.html
MBA

MBA(Master of Business Administration)は経営学の修士号であり、厳密に言えば資格とは異なりますが、リスキリングにしばしば導入されています。

企業がMBAをリスキリングに導入し、従業員がその取得を目指した場合、従業員は大学院で経営戦略からマーケティング、財務会計、組織行動学に至るまで、幅広い分野を学ぶことになります。それらはDX推進における意思決定や問題解決に寄与する重要なスキルです。

また、MBAではリーダーシップとチームワークが重視されるため、当該の従業員が他のメンバーのデジタル化への対応を適切に導くこともあるでしょう。

そのほか、MBAプログラムは、同じ目標を持つプロフェッショナルや産業リーダーと出会うための場であるため、企業のDXに不可欠なパートナーシップを築くための機会を増やすことにもつながります。

リスキリングすべき資格:法律分野

社会保険労務士

法律関連の資格には社会保険労務士、司法書士、行政書士が挙げられます。いずれも国家資格であり、試験の難易度が高いことで有名ですが、従業員が資格を取得すれば企業のDX推進に大きく寄与します。
社会保険労務士は、社会保険や労働に関する法律の専門家であり、その業務範囲は社会保険手続きの代行から労働法令に関するアドバイス、従業員への手続き説明、就業規則作成など多岐にわたります。

企業が社会保険労務士の資格をリスキリングとして導入すると、DXに伴う労働トラブルの未然防止や、就業規則の適切な運用・改定などを内部でできるようになります。それによって、業務を外部に委託するコストを減らすことも可能です。

公式サイト:https://www.sharosi-siken.or.jp/

司法書士

司法書士は、日本の司法制度に関する深い知識と理解を持ち、主に民事法務を担当する専門家です。その資格取得には法律知識、法文書作成能力、法律問題解決能力などが求められます。

企業が司法書士の資格をリスキリングの一環として導入すると、DXに伴う文書の電子化、電子署名に関する法的な対応がスムーズに行えるようになるでしょう。コンプライアンス活動を内部で行う体制が整っていることは、企業の対外的な信頼性にもつながります。また、社会保険労務士同様、外部委託費用の削減が見込めるのもメリットです。

公式サイト:https://www.shiho-shoshi.or.jp/

行政書士

行政書士は、国や地方公共団体が出している各種許認可に関する業務を代行したり、訴訟代理人として行政訴訟を取り扱ったりする専門家です。広範な行政法規を学び、その知識を試す国家試験に合格しなければなりません。

従業員が行政書士資格を取得すると、各種許可申請や届出などの行政手続きのオンライン化に内部で対応できるようになり、業務のスムーズな遂行やトラブルの未然防止にもつながります。

このほか、社会保険労務士や行政書士同様、外部委託コストの削減、対外的なイメージアップなどのメリットもあります。

公式Webサイト:https://www.gyosei.or.jp/

リスキリングで資格取得を推進するときの注意点

資格取得の推進は従業員の学習を促進する有効な手段ですが、注意点もあります。特に、以下の点に気をつけたほうがいいでしょう。

(1)資格取得と人事評価は別にする

リスキリングで資格取得を推進する際、資格取得と人事評価は別にしましょう。

リスキリングは、冒頭でも触れたように、従業員がスキルを習得し、新たな事業や業務に対応できるようになるために行われる施策です。その過程を経て、企業がDXを進め、継続・発展につなげていくのが目的としてあります。

資格取得と評価を一緒にすると、資格取得がゴールになってしまい、リスキリング本来の目的が達成されにくくなります。また、資格取得を目指して勉強したけれど惜しくも叶わなかった従業員や、そもそも勉強する時間がなくて資格取得が難しい従業員のモチベーションを下げることにもつながりかねません。

資格取得をリスキリングに導入するときは、資格取得と人事評価は必ずしもつながっていないことを周知しておきましょう。

(2)資格取得をした先のキャリアを明示する

リスキリングの一環として資格取得を活用するとき、従業員に資格取得によって将来自身のキャリアにどのようにつながるのかを明示することも重要です。目的意識は学習のモチベーションの維持に不可欠な要素です。

例えば、「Pythonエンジニア認定試験」の資格を取得したときに、自社のAI開発やデータ分析の領域で活動できるとなれば、従業員も前向きに挑戦するようになるでしょう。

人事評価と結びつけないからこそ、資格取得をするメリットを明示することがポイントになります。

(3)本人のレベルに適した資格取得を促す

リスキリングでは、一律に同じ資格取得を進めるのではなく、本人のスキルレベルや経験に応じた資格を提案することが重要です。

ただし、本人がどの資格が適しているのか把握できていないケースもあります。資格の難易度を適切に伝えられるようにするためにも、資格試験の内容はもちろん、本人のスキルの程度を事前に把握しておく必要があります。

(4)ソフトスキルも重視する

資格取得は確かに技術力や知識を証明する一助となりますが、それだけでは新たな事業や業務に対応できるようになったり、企業にプラスの効果をもたらすとはかぎりません。現場では、問題解決能力やコミュニケーション能力など、資格では証明できない”ソフトスキル”も不可欠だからです。

たとえ高いスキルを持っていても、周囲の調和を乱すようなコミュニケーションをしていると、全体のパフォーマンスが落ちるなど、高スキルによるプラスの効果以上のマイナスが生じてしまいます。

資格取得を導入する際には、ソフトスキルをどう向上させるかもリスキリングの戦略に組み込むようにしましょう。

リスキリングで資格取得を推進している企業の事例

リスキリングで資格取得を推進している2社をご紹介します。

日本情報通信

日本情報通信では、全社員にDX推進に必要なスキルを身につけてもらうために、2021年12月から「スキルアップ支援プログラム」を始め、推奨資格としてPythonエンジニア認定試験を始めとする開発言語系の資格や、G検定や統計検定などのAI/Security系の資格などを指定しています。各分野のスペシャリストそれぞれの視点から顧客の業務内容・現状を把握、課題を捉えたうえで解決に導く、質の高いサービスを展開しています。

大林組

大林組では、2022年3月に発表した中期経営計画2022で、デジタル人材育成を経営計画の柱の一つとし掲げ、同年にビジネスパーソンが身につけるべきデジタルリテラシー範囲「Di-Lite」を導入しています。同社ではその一範囲を担うITパスポートに特に注力し、2022年4月からの3年で資格取得者を500人にするという目標を掲げています。資格取得のための対策研修を開始してすぐに、データを活用するときのリードタイムが短くなるなどプラスの効果が生まれ始めているようです。

まとめ

リスキリングにおける資格の導入には、企業は習得スキルの内容が明確なのでリスキリングの計画を立てやすくなる、従業員は自分のキャリアに直結する証を得られる、と双方にメリットがあります。

本記事が、そのメリットを享受するための参考材料となれば幸いです。