生成AIの学び方を完全解説!おすすめの学習ステップとポイント
最終更新日:2024.03.21
生成AI(ジェネレーティブAI)は、ありとあらゆる仕事で活用できる非常に便利な存在です。一方で、自由度が高すぎるために、どうやって生成AIを活用すればいいのかが分からないという人も少なくありません。
従業員が生成AIの活用方法を知り、自分の仕事で生成AIを用いられるようになれば、仕事の効率性・生産性は大きく向上することでしょう。
この記事では、生成AIの学び方を解説します。従業員の育成を担当する人は、ぜひ参考にしてください。
STEP1 生成AI(ジェネレーティブAI)の基礎知識を学ぶ
生成AIについて勉強を始める最初のステップとして、「生成AIとは何か」という基礎知識を身につけましょう。このステップでは、AIの特徴や仕組み、従来のAIと生成AIとの違いを理解することが重要です。
AIの理解を深める
今やAI(人工知能)は、仕事やプライベートで使用するさまざまなガジェットで用いられています。しかし、AIとは具体的に何を意味するのかを説明できる人は少ないでしょう。AIには明確な定義は存在しませんが、大量の知識データを学習させて、人間が普段行っているタスク(言語の理解や意思決定など)を実行できるようにする技術を指します。
AIでは、機械学習によって大量のデータから特定のパターンを抽出させます。抽出されたパターンをもとに、さまざまな情報の識別と予測を実行できるようにするのです。機械学習によって、AIは次のようなタスクを実行できます。
画像認識 | 画像や動画から、人物・動物・文字などを識別します。手書きの帳簿から文字を認識し、データにするといった作業も可能です。 |
音声認識 | 音声データをもとに、声を発している人物の特定や、音声内容のテキストデータ化などを行います。 |
自然言語処理 | 自然言語とは、私たち人間が日常で使用している言語(日本語や英語など)です。コンピューターが自然言語を理解することで、Web検索や文字入力、機械翻訳などを行います。 |
異常検知 | 大量のデータと比較して、通常のパターンとは異なる挙動・データを見つけ出す技術です。機械の故障、クレジットカードの不正利用、システム障害の発見など、さまざまな分野で利用されています。 |
予測 | 蓄積されたデータをもとに、さまざまな予測を行うことも可能です。気象データから1週間の天気を予測したり、商品の販売実績から今後の需要を予測したりできます。 |
AIがどのような技術であり、生活のどのような場面で用いられているのかを知ることにより、AIや生成AIをより身近な存在に感じられるようになります。
生成AIの理解を深める
生成AIは名称のとおり、「多種多様なコンテンツを生成できるAI」です。従来のAIは、機械学習をもとに、情報の特定や予測といった「適切な回答を探し出す」ことが主な目的でした。一方で生成AIは、学習したデータから「新しいデータ・情報を創り出す」ことが目的のAIという点に大きな違いがあります。
従来のAIと生成AIは、機械学習で用いられるデータも異なります。従来のAIは、「顧客データ」「販売データ」「過去の将棋の対戦データ」など、構造化されたデータによる機械学習が行われます。生成AIは、テキストデータや画像データ、音声データなど、構造化されていないデータをもとに機械学習が進められるのです。
生成AIが生成できるコンテンツは、テキスト・画像・音楽・音声・動画と多岐にわたります。使用される場面も、記事作成や画像作成、作曲、ゲーム開発などさまざまです。「生成AIはテキストやイラストなど、さまざまなコンテンツを作ることができる」。この点を押さえておくことが、生成AIを学ぶ第一歩といえます。
生成AIは、コンピューターサイエンスの発達により学習できるデータ量が劇的に増えていきました。その結果、生成するコンテンツの精度が一気に向上したのです。また、エンジニアではない人々にも使いやすいアプリケーションが登場したことで、一気に普及していくこととなりました。
STEP2 生成AIでできることを知る
次のステップでは、「生成AIを仕事のどのような場面で利用できるかを知る」です。一例として、生成AIがどのような仕事に役立つのかをまとめました。自社の仕事のどのような場面で、生成AIを利用できるのかを考えることで、実践も想定した生成AIの勉強ができるようになります。
メール作成
取引先に送るメールやお客様に送るメールマガジンの作成などでは、適切な文章の作成に多くの時間がかかってしまいます。生成AIを用いれば、それぞれのシーンに合わせた文章を短時間で生成できるため、作業時間の短縮やより効果的なメール文章の作成につながります。
コンテンツ制作
自社で運営しているオウンドメディアでの記事制作や、見込み顧客に見せる営業資料の作成にも、生成AIが役立ちます。記事や資料の本文の生成、コンテンツのアイディア企画、魅力的なタイトルの立案など、さまざまな活用法が考えられます。
デザイン
自社のホームページや記事、メールマガジンなどに用いる画像・イラストのデザインも、生成AIで作成可能です。非デザイナー人材がカンタンなデザインを自作できるようになれば、コスト削減や生産性向上につながります。
言語翻訳
生成AIを活用すると、海外のクライアントやお客様とのやり取りもとても楽になります。相手への返答内容に対して、「フォーマルな言葉選びにしたい」「カジュアルに返信したい」といった要望に応じて、生成AIは適切な文章を作成してくれます。
議事録作成
会議やミーティングの議事録作成は、正確さとスピードが求められます。生成AIを用いることで、会議・ミーティングの音声を書き起こして、議事録を自動作成してくれます。
マーケティング
市場調査や競合分析など、事業戦略を考える上で欠かせないタスクにおいても、生成AIを用いる人は増えています。ネット上に公開されているデータを元にした調査や、ユーザーインタビューの作成、イラストによる戦略の整理など、生成AIはさまざまな業務で活躍します。
STEP3 生成AIの種類を知る
生成AIは生成できるデータから、「テキスト生成」「画像生成」「動画生成」「音声生成」「音楽生成」の5種類に分けられます。それぞれの生成AIにおける、代表的なサービスをまとめました。
テキスト生成AI
テキスト生成AIは、コンテンツ作成をはじめとしたさまざまなテキストコンテンツの生成に使用されています。ユーザーからの指示内容に沿って適切かつ流暢なテキストを生成するため、生成AIとの対話を重ねてアイディアや企画のブラッシュアップをさせるという人もいます。
①ChatGPT
「ChatGPT」はOpenAI社が提供するAIチャットツールであり、生成AIブームの火付け役ともいわれるサービスです。無料で利用でき、有料プランでは画像の生成も可能なため、汎用性の高さから生成AIの定番ツールとして知られています。
②Bard
「Bard(Google Bard)」はGoogle社が提供している生成AIです。質問内容に応じて、インターネット検索による情報を盛り込んだ文章を作成・回答します。
③Bing AI
「Bing AI」は、Microsoft社が提供している生成AIです。Bardと同様に、チャット形式で知りたい情報について質問をすると、検索結果をまとめて情報を提供してくれます。
④Notta
「Notta(ノッタ)」はNotta社が提供しているAI自動文字起こしツールです。音声認識機能とAI要約機能を備えており、音声の文字起こしや要約の作成ができます。
画像生成AI
画像生成AIは、既存の画像データを学習して新しい画像を生成します。ビジネスシーンでは、記事のアイキャッチやメールマガジンに添付するイラストのデザイン、画像の合成・修復などの領域で活用されます。
①Midjourney
「Midjourney」はMidjourney社が手がける画像生成AIです。「Blue, Car, Sky」など、入力したテキストに応じて画像を生成します。「Discord」というチャットアプリでも画像生成できるという特徴もあります。
②Stable Diffusion
「Stable Diffusion」は、Stability AI社が提供する画像生成AIです。実写的・イラスト的など画像のスタイルを選択し、テキスト入力によって画像を生成します。テキスト入力に基づいて画像を生成するという点から使い勝手がよく、オプションも豊富に用意されています。
③DALL-E2
「DALL-E2」はOpenAI社が提供する画像生成AIです。テキスト入力をもとに画像を生成できるほか、生成画像を参考に異なるバージョンの画像を生成できます。
④Canva
「Canva」はCanva社が提供するオンラインデザインツールですが、テキスト入力によるAI画層生成機能を利用できます。また、テキスト入力で動画生成する機能も備えています。
⑤Adobe Firefly
「Adobe Firefly」はAdobe社が提供する、無料のオンライン画像生成AIツールです。テキスト入力によって画像を生成できるほか、エンタープライズ版を契約することで商用利用も可能です。
動画生成AI
動画生成AIは、テキスト入力をはじめとした必要な情報を入力することで、リアルなプレゼン動画からアニメ風の動画まで、幅広い動画コンテンツを生成できます。
①Gen-2 by Runway
「Runway」は、Runway社が開発した動画生成AIプラットフォームです。そして、同社は2023年に新たなAIモデル「Gen-2」を発表しました。Gen-2は、テキストや既存の画像・映像から新たな動画を生成できます。スマートフォンアプリでも短い動画であれば制作可能など、使い勝手がよいAIモデルとされています。
②DomoAI
「DomoAI」はDomo社が提供するサービスで、Discord上でAIアニメを生成できます。テキスト・写真・動画を入力後、シンプルな入力コマンドを指示するだけで、入力情報をアニメーションに変換します。出力された動画は、再生成可能です。
③Stable Video Diffusion
「Stable Video Diffusion」は、「Stable Diffusion」同様にStability AI社が提供する動画生成AIです。「Stable Diffusion」はテキスト入力で画像を生成しますが、「Stable Video Diffusion」は画像を入力することで、動画を生成できます。
音声生成AI
音声生成AIは、合成音声を用いてさまざまな音声コンテンツを生成できる機能です。これまでも、合成音声技術を用いたツールはありましたが、音声生成AIはより流暢なイントネーションを実現しています。
①Murf.AI
「Murf.AI」は、120種類以上のナレーターの声をもとに、音声コンテンツを作成できます。日本語を含む、20種類の言語で利用可能です。「Murf.AI」には、テキスト読み上げや機能音域・音量・速度などの調整機能があるほか、テキスト文書の文法の間違いなどを指摘・検出する機能も備えています。
②ElevenLabs
「ElevenLabs」は、使用したい音声モデルの設定と生成したいテキストを入力することで、MP3音源の音声データを出力できる生成AIです。音声の生成時は、声の抑揚や明瞭さなど、複数の項目で出力結果を調整します。
音楽生成AI
音楽生成AIは、曲のコンセプトや歌詞を入力することで、AIがその内容に合った音楽を生み出します。単調な音楽しか生成できないことが課題でしたが、最近は目覚ましい進歩を遂げています。
①Suno AI
「Suno AI」は歌詞・曲のスタイル・曲名を入力することで、音楽を生成します。生成できる楽曲の幅はバラードやJ-POP、バラードなどとても幅広く、日本語の歌詞にも対応しています。
②AIVA
「AIVA」はAIVA Technologies社が提供する音楽生成AIです。13種類の音楽ジャンルやキー、テンポといった項目を設定して、音楽を生成できます。
STEP4 生成AIの使用目的・目標を明確にする
生成AIを学ぶなかで、重要なのは「生成AIをなぜ・どのように使用するかを明確にすること」です。ここまでに紹介したように、生成AIは多種多様なコンテンツを作成できます。どの生成AIを使用する場合においても、まずは「こういうコンテンツを生成AIで作ろう」と決めるようにしましょう。
【生成AIの使用目的と利用する生成AI・使い方の一例】
使用目的 | 生成AI | 生成AIの使い方 |
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ChatGPT |
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Adobe Firefly |
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STEP5 生成AIを使用してみる
生成AIの使用目的と利用する生成AIが定まったら、いきなり仕事に導入するまえに一度生成AIを使用してみましょう。生成AIでは、「メルマガの文章を考えてくれませんか?」といった文章による指示を行います。
生成AIへの指示を「対話」と表現することがあります。生成AIは、最初の質問で求める答えが得られないケースが珍しくありません。「もっと丁寧に教えて」「具体的に書いて」など、何度も対話を重ねることによって、回答の精度を高めていくのです。このプロセスを重ねることによって、生成AIの使用感や効率的な活用方法がわかるようになります。
STEP6 プロンプトエンジニアリングを学ぶ
生成AIへの指示内容を「プロンプト」と呼びます。生成AIから望ましいコンテンツを生成できるように、プロンプトの内容を工夫することを「プロンプトエンジニアリング」といいます。
例えば、ChatGPTで「青い空」と入力すると、それに対してChatGPTは次のように回答します。
それに対して、「青い空にまつわる熟語を教えて」と伝えると、ChatGPTはこちらが欲しいと思う情報を正確に回答しました。
プロンプトエンジニアリングでは、プロンプトを構成する要素、プロンプトの質を高めるテクニック、プロンプトの応用方法などを学べます。プロンプトエンジニアリングへの理解を深めることで、生成AIの活用の幅が大きく広がります。
※プロンプトエンジニアリングに関する記事のリンクを添付します
STEP7 生成AIに関連する資格を取得する
生成AIの勉強の一環として、従業員に生成AIに関連する資格を取得させるのもおすすめです。従業員の独学に任せず、資格取得を支援することによって、生成AIの知識を効率よく身につけることができます。生成AIにまつわる、代表的な資格をまとめました。
資格名 | 資格について |
生成AIパスポート | 生成AIの技術に関する知識・技能の認定資格です。試験内容は生成AIの基本知識、原理、活用法など広範囲にわたるため、生成AIの勉強につながります。 |
G検定 | AI、機械学習、ディープラーニングなどの知識に関する認定試験です。AIに関連する技術を学ぶ必要があるため、生成AI・AIにまつわる知識を学ぶきっかけになります。 |
E資格 | 生成AIの基礎知識に関する認定資格です。生成AIの概要や、応用領域などについての試験が出題されます。資格取得を通じて、生成AIを使いこなすスキルの向上を図れます。 |
※生成AI スキルに関する記事のリンクを添付します
生成AIの学びを深める情報源
生成AIの情報は、日々アップデートされていきます。今後新たな技術やサービスが、次々と生まれるでしょう。ここでは、そうした生成AIの最新情報をチェックして、学びを深めるためにおすすめな情報源をまとめました。
それぞれの情報源には、5段階評価による学習難易度(☆が多いほど難易度が高い)を表示しています。生成AIに対する習熟度に合わせて、情報源をチェックするようにしましょう。
情報源 | 学習難易度 | 特徴 |
SNS | ☆ | リアルタイム性が高く、情報量も比較的少ないのでチェックしやすい情報源といえます。情報に誤りがあるケースも見られるため、信頼できる情報源を探してフォローするようにしましょう。 |
書籍 | ☆☆ | 情報のリアルタイム性は高くないものの、ある程度まとまった知識を吸収できるというメリットがあります。 |
技術系ニュースサイト | ☆☆☆ | リアルタイム性・情報の信頼性の両方で優れた情報源といえます。専門性の高いニュースを読み解くには、ある程度生成AIの技術に関する知見が必要となります。 |
オープンソース | ☆☆☆☆ | オープンソースとは、サービスなどに用いられているプログラム(ソースコード)を、無償で一般公開することです。オープンソースの生成AIを見ることで、より詳細にそれぞれの技術を学べますが、非常に高い専門知識が求められます。 |
学術論文 | ☆☆☆☆☆ | 生成AIに関連する学術論文も、生成AIへの理解を深める重要な情報源となります。論文の大半は英語で書かれていますが、自動翻訳AIなどを用いることで日本語訳できます。 |
生成AIの学ぶ上でのポイントと注意点
生成AIを学び、仕事に活かす上で知っておきたいポイントと注意点を3つにまとめました。
試行錯誤を繰り返す
「STEP4 生成AIを使用してみる」でも触れたように、生成AIはテキストや画像を入力して、すぐに望む出力結果が得られるとは限りません。仕事にも使用できるクオリティの高いコンテンツを出力するには、出力された結果をもとに、プロンプトを改善していく必要があるのです。生成AIの精度を高めるには、試行錯誤が不可欠だという点を忘れないようにしてください。
生成された数値・データが正確かをチェックする
生成AIで生成された数値やデータは、正確ではないケースがあります。例えば、ChatGPTのバージョンの1つである「GPT-4」は、2023年4月までに得られたデータを利用しています(2024年2月時点)。それ以降の情報に関しては参照できず、生成された数値は古いデータを参考にしているかもしれません。
また、生成AIが出力する情報には誤りもあるため、出力結果をそのまま用いず、必ず人の手でチェックしてから利用するという習慣をつけましょう。
企業・個人の大事な情報は入力しない
生成AIのプラットフォームに入力した情報は、外部に漏れるリスクがあります。法人向けプランでは、より安全な環境下でデータを出力することも出来ますが、基本的に企業秘密や個人情報などは、入力しないようにしましょう。
まとめ
今回紹介した生成AIの学び方のロードマップを参考に、効率的な生成AIの理解促進を従業員に促し、日々の仕事に生成AIを活用できるようにしましょう。同時に、従業員の生成AIに対するモチベーションを高められるために、生成AIの学習環境やスキル習得後のキャリア形成のサポート体制も整えていきましょう。