【2025年】リスキリング関連助成金・補助金まとめ。助成率や対象事業も解説

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最終更新日:2025.02.13

2022年10月3日、岸田文雄総理大臣は第210臨時国会にて所信表明演説を行いました。その中で、個人のリスキリング支援に5年で1兆円を投じると表明しています

政府や自治体は、リスキリングを支援するための補助金・助成金を充実させてきました。この記事では、企業のリスキリングを支援する補助金・助成金と、個人のリスキリングを支援する補助金・助成金をまとめて紹介します。

※本記事にて解説する補助金・助成金は、いずれも2025年2月時点で申請可能なものをまとめています。補助金・助成金を利用する場合は、申請時期や給付金額を事前に確認してください。

企業向けリスキリングの補助金・助成金【政府】

政府が実施している企業向けの補助金・助成金は、大きく3つ挙げられます。厚生労働省の「人材開発支援助成金」と「特定求職者雇用開発助成金」、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」です。それぞれの特徴を以下にまとめました。

人材開発支援助成金|厚生労働省

「人材開発支援助成金」は、事業主等が雇用する労働者に対して、業務に必要とされる専門的な知識やスキルを習得させるための職業訓練を計画に沿って実施する場合に利用できる制度です。実施された訓練にかかった経費や、訓練中の賃金の一部などが助成されます。

公式Webサイト:

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

人材開発支援助成金は、以下の7つから目的に合ったコースを選択・申請します。一部のコースでは、中小企業に対する助成金の割合や賃金が高く設定されています。

人材育成支援コース

「人材育成支援コース」は、下記3つの助成メニューから構成されています。

  1. 人材育成訓練:職務に関連した知識や技能を習得させるための10時間以上の訓練
  2. 認定実習併用職業訓練:厚生労働大臣の認定を受けた実習併用職業訓練
  3. 有期実習型訓練:有期契約労働者等に対し、正規雇用労働者等に転換するための訓練

助成額は企業規模によって変わりますが、賃金助成は1人1時間あたり760円(中小企業以外は380円)に定められています。賃金要件などを満たす場合は960円(中小企業以外は480円)へと増額されます。経費助成率は訓練内容によって30%〜100%となります。

教育訓練休暇等付与コース

「教育訓練休暇等付与コース」は、企業が3年間に5日以上の取得可能な悠久の教育訓練休暇を導入した上で、従業員が制度を活用して休暇を取得して訓練を受けた場合に申請できる助成金です。有給の教育訓練等制度を導入した企業に対して、30万円(賃金要件などを満たす場合36万円)が支給されます。

人への投資促進コース

「人への投資促進コース」は、デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練などを実施した場合、訓練の経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成するコースです。訓練の内容毎の助成率や賃金助成額は以下の通りです。

2024年4月から、自発的職業能力開発訓練における訓練時間数要件が「20時間以上」から「10時間以上」と緩和されました。

訓練メニュー 経費助成率 賃金助成額(/1時間)
高度デジタル人材訓練 中小企業:75%

大企業:60%

中小企業:960円

大企業:480円

成長分野等人材訓練 75% 960円
情報技術分野認定実習併用職業訓練 中小企業:60%

大企業:45%

中小企業:760円

大企業:380円

定額制訓練 中小企業:60%

大企業:45%

自発的職業能力開発訓練 45%
長期教育訓練休暇制度 20万円 中小企業:960円*New

大企業:760円*New

教育訓練短時間勤務等制度 20万円

事業展開等リスキリング支援コース

「事業展開等リスキリング支援コース」新規事業の立ち上げなどの事業展開を行うとき、進出する分野で必要な知識・スキルを従業員に訓練させる場合に申請できるコースです。助成率・助成賃金は以下のように定められています。定額制サービスによる訓練の場合、助成上限額は1名1か月あたり2万円までです。

経費助成率 賃金助成額
中小企業:75%

大企業:60%

中小企業:960円

大企業:480円

建設労働者認定訓練コース

「建設労働者認定訓練コース」は、従業員に建設関連の訓練を実施した場合や、有給を取得して認定訓練を受講させた場合の、経費や賃金を助成するコースです。経費助成率は、対象経費の1/6です。

建設労働者技能実習コース

「建設労働者技能実習コース」は、従業員の技能向上を目的として実習を、有給を取得して受講させた場合に、訓練経費や賃金の一部を助成するコースです。従業員数によって、経費助成率と賃金支給額は次のように異なります。

経費助成率 賃金助成額
中小企業(従業員数が20人以下)

対象経費の3/4まで

中小企業(従業員数が21人以上)

対象経費の7/10まで

中小企業(従業員数が20人以下)

1人あたり1日8,550円

中小企業(従業員数が21人以上)

1人あたり1日7,600円

障害者職業能力開発コース

「障害者職業能力開発コース」は、障がい者に教育訓練を継続的に実施するために必要な施設を設置・運営する場合、その費用を一部助成するコースです。施設や設備の設置・整備、更新に要した費用の3/4が助成されます。本コースは、2024年4月から障害者雇用納付金制度に基づく助成金へ移管しています。

特定求職者雇用開発助成金|厚生労働省

「特定求職者雇用開発助成金」は、下記5つのコースから構成されています。

  1. 特定就職困難者コース:高齢者、障碍者、母子家庭の母など就職困難者を雇っている場合
  2. 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース:発達障碍者または難治性疾患患者を雇っている場合
  3. 就職氷河期世代安定雇用実現コース:十分なキャリア形成ができず、正規雇用が困難なものを雇っている場合
  4. 生活保護受給者等雇用開発コース:ハローワーク就労支援の要請などがあった生活保護受給者など雇っている場合
  5. 成長分野等人材確保・育成コース:本助成金対象労働者を成長分野などの業務に従事する者として雇っている等の場合

5の成長分野など人材確保・育成コースでは、2つの助成メニューがあります。

コース名 対象となる条件
助成メニュー(1)【成長分野】 従業員を成長分野(デジタル、DX化に関連する分野)に従事させ、職場環境の改善・能力開発に取り組んでいる
助成メニュー(2)【人材育成】 就労経験のない分野・職業を希望する従業員に対して、人材開発支援助成金を活用した訓練を行った上でその業務に従事させている

各メニューの支給額は共通していて、労働時間や労働者の分類によって、1人あたり最大360万円の助成額が3年間支給されます。

公式Webサイト:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_seichou_00008.html

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業|経済産業省

「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、リスキリングならびに労働者のキャリア形成を促進する観点から、以下の活動を支援する事業です。

  • キャリア相談対応:自らのキャリアについてキャリアコンサルタントもしくはキャリア相談従事者に相談
  • リスキリング提供:キャリア相談を参考に、リスキリング講座を受講
  • 転職支援:キャリア相談・リスキリング提供を踏まえた職業紹介

「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、3つの活動を無料で提供します。それに加えて、3つの活動を提供する事業者は、サービス提供の経費に対する補助が受けられます。具体的な補助金の支給額は、以下の通りです。

補助金の支給条件 補助金の支給額
リスキリング講座を提供して、受講者が修了した場合 受講費用の1/2(上限40万円)
受講者がリスキリング講座を経て実際に転職し、1年間継続的に転職先にて就業している 上記に追加で講座受講費用の1/5(上限16万円)

ただし、2025年4月以降に採択された事業の支給額は下記の通り変更されます。*New

補助金の支給条件 補助金の支給額
リスキリング講座を提供して、受講者が修了した場合 受講費用の1/3(上限40万円)
受講者がリスキリング講座を経て実際に転職し、1年間継続的に転職先にて就業している 上記に追加で講座受講費用の1/5(上限16万円)

公式Webサイト:

https://careerup.reskilling.go.jp/

企業向けリスキリングの補助金・助成金【自治体】

各地方自治体は、企業のリスキリングを推進する補助金・助成金をそれぞれ実施しています。今回は一例として、東京都、宮城県、広島県などが実施している補助金・助成金を紹介します。

DXリスキリング助成金|東京都

本補助金は2025年2月現在、募集を休止しています。再開した場合はこちらにてお知らせいたします。

東京都が実施している「DXリスキリング助成金」は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)に関する職業訓練を実施する際に経費を助成する制度です。職業訓練は民間の教育機関などが提供しているものが条件で、都内の中小企業・個人事業主が対象となります。助成対象となる経費の2/3(1社ならびに1年度につき64万円が上限)が支給されます。

公式Webサイト:

https://www.koyokankyo.shigotozaidan.or.jp/jigyo/skillup/dx-risk.html

事業内スキルアップ助成金|東京

同じく東京都が実施している「事業内スキルアップ助成金」は、短時間の研修を実施した際の経費を一部助成することで、企業における従業員のスキル開発・向上を促進することを目的としており、都内の中小企業が対象となります。助成額は一人あたり760円/時間であり、1企業当たり150万円が上限となります。

公式Webサイト:

https://www.koyokankyo.shigotozaidan.or.jp/jigyo/skillup/skill-jigyonai.html

宮城県中小企業等デジタル化支援事業|宮城県

「宮城県中小企業等デジタル化支援事業」は、県内の中小企業・小規模企業を対象に、生産性向上を目的としたデジタル化の取り組みに対する補助事業です。具体的には、デジタル化に伴うアドバイザーの派遣や、導入経費の補助が実施されています。経費の最大2/3*New(上限250万円、下限50万円)の金額が支給されます。

公式Webサイト:

https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/chukisi/r6digital-shien.html

金沢市中小企業デジタル人材リスキリング促進助成金|石川県

「金沢市中小企業デジタル人材リスキリング促進助成金」は、中小企業のデジタル人材育成促進や、生産性向上・新たな付加価値の創出を図るための助成金制度です。金沢市内で勤務する従業員や役員を対象として、以下の試験を受験したり対策講座を受講したりする場合、試験合格者数の費用(受験手数料、講座受講料)を助成します。

  • ITパスポート試験
  • 基本情報技術者試験
  • 応用情報技術者試験

経費助成率は、受験手数料・講座受講料ともに1/2です。限度額は対策講座受講料の場合は1人あたり10,000円(応用情報技術者試験のみ 20,000円)、受験手数料は1人あたり3,000円とされています。

公式Webサイト:

https://www4.city.kanazawa.lg.jp/soshikikarasagasu/sangyoseisakuka/gyomuannai/3/4/25104.html

ITパスポート取得支援補助金|広島県

広島県が実施している「ITパスポート取得支援補助金」は、県内の企業や団体の生産性向上や新たな付加価値創出の促進を目的とした補助金です。

従業員や役員を対象に「ITパスポート試験」の受験を実施する際、経費の一部を試験合格者数に応じて補助します。補助対象経費となるのは以下の3つです。令和6年5月から試験受講料および対策講座受講料の補助は無くなりました。

  • 試験受講料(補助限度額:1人あたり6,800円)
  • 対策講座受講料(補助限度額:1人あたり20,000円)※大手企業は1人あたり10,000円
  • 資格手当(補助限度額:1人あたり20,000円)※大手企業は1人あたり10,000円

公式Webサイト:

https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/hcm-reskilling/ipasshojokin.html

個人向けリスキリングの補助金・助成金【政府】

ここからは、個人のリスキリングに活用できる補助金・助成金を紹介します。政府が実施している制度には、厚生労働省の「教育訓練給付金制度」があります。

教育訓練給付金制度|厚生労働省

教育訓練給付制度とは、働く人々のスキルアップ、キャリアアップを支援して、雇用の安定や就職の増加を目的とした制度です。厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了したとき、かかった費用の一部が給付金として支給されます。

教育訓練給付金の支給対象は幅広く、雇用保険に加入している会社員や、週20時間働いているパート・アルバイトが該当します。給付金の支給対象となる教育訓練は3種類あり、それぞれに以下のような支給金額が設定されています。2024年10月から、特定一般教育訓練の給付率が40%から50%、専門実践教育訓練給付金が70%から80%と、いずれも10%増大しています。

教育訓練の種類 対象となる講座・資格の例 支給金額
一般教育訓練 ・TOEIC、ITパスポート、日商簿記などを取得するための講座

・修士・博士

受講費用の20%

(上限10万円)

特定一般教育訓練 ・社会保険労務士、税理士、行政書士、司法書士、宅地建物取引士、中小企業診断士、ファイシャンナルプランニングなどを取得するための講座

・基本情報技術者試験などのIT関係資格取得の講座

受講費用の50%*New

上限25万円

専門実践教育訓練 ・専門学校等の講座(経理・簿記、情報、デザインなど)

・大学院の職業実践力育成プログラム(社会科学、工学・工業)

・AI、IoT、データサイエンス関係の講座

最大で受講費用の80%*New

年間上限64万円、最長4年)

公式Webサイト:

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html

下記記事では、より詳細に個人向けの補助金や助成金に関して解説しています。もしよければコチラもご覧ください。

個人向けリスキリングの補助金・助成金【自治体】

各自治体は、eラーニング受講を補助する事業や大学と連携してリスキリングを促す制度など、さまざまな事業を展開しています。ここでは、東京都や大阪府などが実施している、個人向けの補助金・助成金を紹介いたします。

短期集中型資格取得支援訓練事業|東京都

東京都が実施する「短期集中型資格取得支援訓練事業」は、求職者に対して短期での資格取得を支援して、早期の再就職につなげる事業です。

同事業は「eラーニング」と試験直前の「合宿訓練」を無料で提供します。2つの学習を通じて、ITパスポートや宅地建物取引士、3級ファイナンシャル・プランニング技能検定、ウェブデザイン技能検定3級の合格などを目指します。

公式Webサイト:

https://www.shikaku-shien2024.metro.tokyo.lg.jp/

金沢市大学連携リスキリング促進助成金|石川県

「金沢市大学連携リスキリング促進助成金」は、金沢市と連携協定を締結している高等教育機関(金沢大学、金沢工業大学など)でのリスキリングを支援する助成事業です。市内に居住している人、市内の事務所に勤務している人を対象にして、入学料・受講料の1/2(上限額2万円)を支給します。

過去の講座には、「大規模データ取得・管理・活用人材」育成プログラム(金沢大学)、組織活性化に向けたDXリスキル教育プログラム(金沢工業大学)などがあります。

公式Webサイト:

https://www4.city.kanazawa.lg.jp/soshikikarasagasu/chiikiryokusaiseika/gyomuannai/1/24788.html

大阪府スキルアップ支援金|大阪府

「大阪府スキルアップ支援金」は、大阪府民のうち、雇用保険に加入したことがない方、雇用保険の受給資格を喪失して1年以上の方などを対象とした支援事業です。大阪府が指定した教育訓練講座を受講・修了した場合、講座受講費の最大3/4を支給し、スキルアップを通じた転職、就職を支援します。

公式Webサイト:

https://www.pref.osaka.lg.jp/o110100/koyotaisaku/skillup2/index.html

広島県未来チャレンジ資金|広島県

「広島県未来チャレンジ資金」は、県内産業の発展に欠かせない人材を育成するための制度です。大学院等専門課程で高度な知識を身につけて、将来的に広島県内の企業で働きたいという人に、修学資金を無利子で貸し付けます。

加えて、高等教育機関での課程修了後9年間のうち、広島県内の企業・団体などで8年間収容すると、貸付金全額の変換が免除されます。

公式Webサイト:

https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/72/challenge-koubo.html

まとめ

政府や自治体は、人々のリスキリングを促進するためにさまざまな補助金・助成金を実施しています。今回紹介した制度をうまく活用して、従業員のリスキリングを推進していきましょう。

下記記事では、「そもそもリスキリングって何なの?」という人向けへ、リスキリングの定義から実用的な利用方法まで丁寧に解説しています。もしよければコチラもご覧ください。