勉強したい社会人へ!学習して損しないスキルと挫折を防ぐコツを紹介
最終更新日:2024.05.11
現代社会は常に進化を遂げており、新しい価値観や技術が次々と生まれています。 このような時代にあって、私たち一人ひとりが学び続けることの重要性は高まる一方です。
特に社会人にとって、学習は自身のスキルアップやキャリアアップに直結します。 しかし、仕事と家庭の両立で時間が取れないなど、社会人の勉強にはさまざまな障壁があります。
そこで、この記事では、社会人の勉強事情や社会人が勉強するメリットを踏まえ、身につけて損のないスキル、挫折を防ぐコツを紹介します。これから本格的に勉強をしたいと考えている人の参考となれば幸いです。
社会人の勉強事情
内閣府が2022年7月に行った「生涯学習に関する世論調査」によれば、「この1年くらいの間に、月に1日以上学習した」と回答した18歳以上の人の割合は約74.8%でした。
これらの人が実際に学習した内容で最も多かったのは「仕事に必要な知識・技能や資格に関すること」で40.1%。18~59歳の人に限ると50%を超え、最も多い内容となっています。
また、この1年くらいの間に、月に1日以上学習していないと回答した人に、学習していない理由を聞いたところ、「特に必要がない」という回答が45.5%でしたが、18~59歳の人に限ると「仕事が忙しくて時間がない」という回答が最も多く約40%。「きっかけがつかめない」「学習するための費用がかかる」なども、「特に必要がない」より基本的には割合が高くなっています。
他方、株式会社ベネッセコーポレーションが行った2024年2月に行った「社会人の学びに関する意識調査2024」によれば、18~64歳の男女のうち、社会人になってから何らかの学習経験をした人は約45%でした。その一方で、今後1年間に学習したいと思わない人が挙げた理由として、お金や時間がない、学びたいと思えることが見つからない、という回答が多かったとも報告されています(参照:ベネッセ、「社会人の学びに関する意識調査2024」最新結果を公開 リスキリング理解度は高まるが3年連続で社会人の約4割は学習意欲なし丨PR TIMES)。
一部の調査結果ではあるものの、学習意欲はありながら、さまざまな要因で勉強の一歩を踏み出せずに悩んでいる社会人は少なくないと言えます。
社会人が勉強するメリット
社会人が勉強することには、さまざまなメリットがあります。特に大きいのが、多くの人が勉強する理由として挙げているように、自身のキャリアアップや仕事の質の向上につながる点です。
新しいスキルを身につければ、プロフェッショナルとしての価値が高まり、昇進や年収アップのチャンスが広がるでしょう。また、今の自分の仕事の効率化が図れ、短い時間で高いパフォーマンスを出せるようにもなります。
社会人の場合、学生のときのように、新しいスキルを学べる機会は多くありません。一方で、VUCAと呼ばれる変化の激しい時代においては、既存のスキルは陳腐化しやすいと指摘されています。今までと同じ知識やスキルでうまくやりくりしていく、いわゆる切り売り状態を続けていると、いよいよ変化に対応するのが難しくなり、仕事や、ひいては将来にも影響が出てきてしまうかもしれません。
社会人が勉強することには、自身をアップデートするだけでなく、キャリアと人生を守り、豊かにするというメリットもあるのです。
社会人が勉強して身につけるのにおすすめのソフトスキル
では、社会人が身につけておきたいスキルには、どんなものがあるのでしょうか。
上記で見てきたように、社会人が勉強する意義の一つには、新しい知識を身につけてキャリアを充実させることがあります。
そこで、この記事ではソフトスキル(仕事の基礎能力)とハードスキル(業務を遂行する上で必要となる特定の技術や専門知識)に分けて、おすすめのスキルをご紹介します。
コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルとは、自分の意見をわかりやすく伝える力、相手の意図を引き出す的確な質問力、相手の意見や考えを丁寧に聞き入れる姿勢などを指します。多くの企業が重視しているため、身につけておきたいスキルです。
帝国データバンクの「令和3年度中小企業実態調査委託費 中小企業の経営力及び組織に関する調査研究報告書」によれば、中小企業経営者の多くが従業員に求めるスキルとして「チームワーク」(68.4%)、「コミュニケーション力」(64.6%)、「営業力」(50.1%)を挙げています。
社内外の人と意思疎通がうまく取れていないと感じている人は、会話のコツを解説した本を読んだり、セミナーに参加したりしてコミュニケーションスキルを磨いていきましょう。
マネジメントスキル
マネジメントスキルとは管理する能力を指し、リソースや進捗を調整しながら課題を解決し、目標達成を目指すスキルです。コミュニケーションスキルと同様、重視している経営者は少なくないため、身につけておくことをおすすめします。
上述の帝国データバンクの調査においても、従業員に求めるスキルとして「マネジメント」を挙げた中小企業経営者が45.1%で、同調査の5年前のデータ(25.6%)から大きく伸びる結果となっています。
マネジメントスキルは、組織の管理能力という文脈で使われることが多い言葉ですが、自らを管理するときにもよく用いられます。例えば、自身のタスク管理・スケジュールのコントロールをするタイムマネジメント、ストレスを必要以上抱えないように行うストレスマネジメントなどです。
働き方改革による労働時間の規制や、人手不足による教育時間の確保の難しさから、従業員自身でもリソースや進捗の管理や課題解決ができるようになってもらいたいと望む上司や経営者は少なくありません。
その意味においても、マネジメントスキルは今から身につけておいても遅くはないスキルでしょう。
リーダーシップスキル
リーダーシップとは、チームや組織を引っ張る力のことを言います。具体的にはメンバーの長所を引き出し、一体感を持たせながら高いパフォーマンスを発揮させる力(チームビルディング力)や、チームを牽引するための影響力、課題にぶつかったときの迅速かつ的確な判断力などが含まれます。
チームや組織の掲げる目標に向かってメンバーを導くリーダーシップは、チームや組織を管理するマネジメント(特にチームマネジメント)を実現させる上で不可欠なスキルです。そのため、このスキルもまた多数の企業から重視されています。
ProFuture株式会社/HR総研が2022年8月に行った「【HR総研】「若手社員の育成」に関するアンケート」によれば、企業の人事責任者・担当者が近年の若手社員について物足りないと感じるスキルとして、ストレスマネジメント(45%)に次いで、リーダーシップ(38%)があり、その次が課題解決力(36%)でした。
マネジメントと合わせて今のうちから身につけておくことで、現在働いている企業を含め、いずれの企業においても一定の貢献ができる人材となれるでしょう。
社会人が勉強して身につけるのにおすすめのハードスキル
次に、社会人が勉強して身につけるのにおすすめのハードスキルをご紹介します。
プログラミングスキル
DX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すものの、DXに対応できる人手が足りていないことから、思うように進められないともどかしくなっている企業は少なくありません。
その流れで、社内の人材に教育を施し、人材を確保するリスキリングにおいては、DXに必要な新しい技術(AIやIoT)の開発や、ビッグデータの分析に不可欠なプログラミングスキルがしばしば選択されます。
昨今はこうした状況であるため、先んじてプログラムングスキルを習得しておくと、自身のビジネスチャンスを大きく広げられるようになります。
なお、主要なプログラミング言語には以下のようなものがあります。
言語 | 特徴 |
Python | データ解析、機械学習、Web開発などで幅広く利用 |
Java | 企業の基幹システムなどで活用 |
JavaScript | Webブラウザ上での動的な処理に必須 |
ぜひ自分の目的にあった言語を選択し、勉強を始めることをおすすめします。
データ分析スキル
データを読み解き、事実に基づく意思決定を行うことができるデータ分析のスキルは、今後ますます重要になってきます。
企業や組織が生み出す情報資産は年々増加の一途をたどっており、それらのデータから有益な知見を引き出すことが求められています。
株式会社マイナビが、2022年12月に行った雇用施策に関する調査結果をまとめている「企業の雇用施策に関するレポート(2023年版)」によると、採用に携わる人事担当者が「技術革新やビジネスモデルの変化に対応するため、必要だと思うリスキリング内容」として最も多く挙げたのはビッグデータの分析・処理能力(39.3%)でした。
データ分析に必要な具体的なスキルは、統計分析手法の理解、データベースの操作スキル、データマイニングツールの使用経験などです。
これらを身につけることで、業務の効率化や新規ビジネスチャンスの創出など、さまざまなメリットが期待できます。統計やプログラミングの基礎知識があると、よりスムーズに習得できるでしょう。
AIスキル
これまでのAIはデータ分析や予測 ・自動化などが主で活用分野が限定的でした。しかし、2022年末に大規模言語モデル(LLM)を利用した生成AI「ChatGPT」が登場したことを皮切りに、これまでAI導入が進んでいなかった分野にも多く取り入れられ始めています。
生成AIは、利便性が高い一方で、プロンプト(指示文)によって回答精度が大きく変わる、嘘の情報を出力することがある(ハルシネーション)、著作権などに抵触する恐れがあるなど、注意しなければいけない面も少なくありません。
機械学習や自然言語処理などの基本的な技術に加え、プロンプトエンジニアリングの習得やLLMの実用性に関する評価、生成物を利用するときの倫理的な配慮など、生成AI特有の課題に対応できるスキルも身につけておくと、より選択の幅が広がるでしょう。
社会人が挫折せずに勉強に取り組むコツ
社会人は学生と異なり、限られた時間の中で、自発的に勉強に取り組む必要があります。
そのため、挫折しないようにするには、モチベーションを維持しながら、いかに効率よく学習を進めるかが重要となります。具体的なコツをご紹介します。
勉強の目的を言語化する
学生時代に、勉強することに意味を見いだせない教科の授業が退屈でつらかった、という経験を持つ人は多いのではないでしょうか。
勉強を継続して行うためには、勉強の目的(何のために勉強するのか)を明確にし、言葉にすることが大切です。
目的は具体的であることが望ましいですが、新しいスキルの習得や資格の取得、転職や昇進などざっくりしたものでも問題ありません。自分自身が「この勉強には意味がある」と納得できるかが重要です。
勉強に確かな納得感があれば、やる気も自然と湧き、挫折しそうになったときも自分を今一度奮い立たせることができます。
勉強するスキルを吟味する
目的を定めたら、実際にどんなスキルが必要になるか吟味しましょう。
上記で紹介したスキルは、あくまで多くの企業から求められるソフトスキルとハードスキルです。目指したいキャリア、現在の仕事環境などによって、例えばAIスキルよりも財務スキル、語学スキル、ICTスキルを優先したほうがよい場合ももちろんあります。
このように、勉強によって身につけるべきスキルは、一人ひとり異なります。自分に本当に役立つスキルは何か、勉強を具体的に始める前に吟味することが重要です。この工程を挟むことで、目的とスキルが一致し、勉強の意義がより深まります。
吟味の仕方はさまざまですが、おすすめはソフトスキルとハードスキルをバランスよく学ぶことです。
ソフトスキルは、仕事の基礎能力を指すため、習得するとどのような仕事・職場においても一定以上のメリットが得られます。一方、ハードスキルと比較して「これをすれば身につけたと言える明確な指標」があまりないため、何が足りていないのかがわかりにくく、勉強のモチベーションを保つのが難しい面があります。
一方、ハードスキルは、資格試験などが充実していて、自分の今のレベルや必要な対策を客観的に判断しやすくなっています。ただ、AIの登場によって多くのスキルが不要となったように、いずれ陳腐化してしまう可能性があります。
人生100年時代と言われる今、仕事のための勉強においても長期的な目線が重要です。ソフトスキルかハードスキルかではなく、どちらもバランスよく勉強することをおすすめします。
勉強の計画を立てる
勉強の目的の言語化と身につけたいスキルの吟味が終わったら、そのスキルを身につけて目的を達成するまでの計画を立てます。
こちらは目的と異なり、「目的達成のために1カ月目は◯◯ができるようにする。だから最初の日曜日は、テキストの◯◯の部分を読む」と、具体的にすることが重要です。
また、社会人の場合、イレギュラーな予定が入ってくることも多いため、余裕を持たせておくのも大切です。常にスケジュールが遅れているよりも、常に巻きで進んでいるほうがモチベーションも維持しやすくなります。
自分に合った形で勉強する
勉強の計画を立て、いよいよ勉強を始めるときになったら、自分に合った勉強スタイルで取り組みます。
いわゆる机に向かって本を読み、ノートを使いながら問題を解く、といった方法だけが勉強の形ではありません。人によって、適した勉強スタイルはさまざまです。
例えば、活字を読むと眠くなってしまう人でも、講義の動画を見たり、ポッドキャストで聞いたりするとすんなり覚えられることがあります。勉強した内容がすぐに頭から抜けてしまう人でも、誰かに話すことで忘れにくくなることもあります。
他にも、机よりカフェなど少し人気のある場所のほうが捗る、学習机よりリビングのテーブルのほうが勉強しやすい、という場合もあります。
社会人は勉強する時間が限られていることが多いため、自分は何をすると学習内容を覚えやすいのか、自分に適したスタイルをぜひ積極的に探してみてください。
まとめ
社会人が学習して損はありません。コミュニケーション力やマネジメント力、リーダーシップなどのソフトスキル、プログラミングスキルやデータ分析スキル、AIスキルなどのハードスキルを身につけることで、キャリアアップや転職、副業への可能性が広がります。
ただ、社会人の場合、勉強できる時間は限られています。勉強の目的を言語化し、スキルを吟味しつつ、計画に沿って自分に合った勉強スタイルで取り組むことが大切です。
この記事が、スキルアップに勇気を持って挑戦する人の後押しとなることを願っています。