AIでなくなる12の仕事。これからリスキリングが必要となる職業やスキルとは?
最終更新日:2024.08.19
近年、AI(人工知能)の技術が急速に発展し、さまざまな分野で人間にとって代わりつつあります。AIは、人間が行っていた単純作業や定型業務を自動化・効率化することで、人間の仕事を奪う存在と言われています。
この記事では、AIによって仕事がなくなる可能性が高い仕事をピックアップし、その一方で、AIに代替されにくい仕事や、AIによって新たに生まれる仕事についても紹介します。
また、AI時代に求められるスキルと、それらを身につける方法についても解説します。AIに仕事を奪われるのではなく、AIと上手に付き合っていくためのヒントを、この記事を通して見つけていただけたら幸いです。
AIによって仕事がなくなる……嘘のような本当の話
AIによって仕事がなくなるかもしれない……そうした話が大きく広まったきっかけの一つが、日本の野村総合研究所とイギリスのオックスフォード大学によって2015年に行われた共同研究です。
この研究では、日本国内の601の職業を対象に、AIやロボットに代替される確率はどれくらいかを試算。その結果、日本の労働人口の49%が就いている職業が、AIやロボットなどで代替できるとされました(参照:日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に丨野村総合研究所)。
こうした結果が導き出された約7年後の2022年11月には、ChatGPTという生成AI(ジェネレーティブAI)が登場します。生成AIは、膨大なデータを瞬時に処理し分析するだけでなく、人間の指示をもとに新たな文章や画像を生成するという、人間と同じような知的作業が可能です。これにより、作業の自動化や画像検査など、ごく一部の限られた作業でしか用いられていなかったAIが、ビジネスのあらゆる場面で活用され始めました。
ASEANと日中韓で構成された「ASEAN+3」の地域経済を調査・分析する国際機関AMROが、2024年に公表したデータによれば、生成AIによって代替される雇用の比率が最も高いのは日本で、その数字は14.4%に上ります(参照:AIで雇用代替、日本が突出 アジアの14カ国・地域で丨Yahoo!ニュース)。
AI(特に生成AI)の技術はまだ発展途上であり、上記の調査によって失われる可能性が高いとされた仕事が、すぐになくなることはないでしょう。ただ、今までの仕事の一部がAIに置き換えられ、仕事の内容が大きく変化することは十分にあります。
こうした話を聞いても、もしかしたらあまりピンと来ないかもしれません。
ただ、PwC Japanグループが毎年行っているAI予測調査によれば、2023年時点で業務にAIを導入している企業は、導入準備中の企業の割合も含めると65%に上ります(参照:2023年AI予測丨PwC)。今後も導入する企業は増えていくと予想されることから、決して対岸の火事ではありません。
今の仕事を続けるにしても、転職を考えるにしても、今のうちからどんな仕事がなくなる可能性が高いか、早めに把握しておくことは重要と言えるでしょう。
AIでなくなる可能性が高い仕事12選
では、具体的にどんな仕事がAIによってなくなるのでしょうか。
AIが得意なこととして、定型的で反復的な業務の自動化が挙げられます。AIは大量のデータを高速で処理し、ルーティンワークを効率的に行うことが可能です。また、昨今話題となっている生成AIは、画像や文章の認識・分類し、独自のコンテンツを即座に生み出すことができます。
そのため、以下のような仕事がなくなる可能性が高いでしょう。
事務員丨AIによる自動化・効率化が進行中
事務員の仕事は、パソコンでの文書作成、データ入力、資料の整理などルーティンワークが中心です。これらの業務は、AIによる自動化・効率化がかなり進んでいます。
文書の作成に音声入力や文章生成AIが、データ入力をOCR(光学式文字認識)などの技術が用いられているケースも少なくありません。
アメリカの大手IT企業のIBMでは、AIに代替されそうな仕事として顧客対応が伴わない事務作業を例に挙げ、今後そうした職種を採用しない方針を打ち立てています。アメリカは日本よりもAIの導入がより早く進んでいる国ですが、日本においても同様の流れが来ないとは言い切れません。
単純で定型的な事務作業は、AIに置き換えられる可能性が高いのが実情です。
電車運転士丨自動運転化の普及によってなくなる可能性大
電車の運転は、AIの発達によって、人手を介さずに行われる可能性が高いと指摘されています。
毎日決められた時刻に決められた場所に電車を動かすことは、定型業務や繰り返し業務を得意とするAIにとって非常に適したタスクと言えます。AIは人間に比べてはるかに正確に、決められたスケジュールに沿って電車を運行することができます。また、人間の運転士に不可欠な休憩時間も必要ありません。このため、AIの発達は電車運転士の仕事を奪う可能性が高いと指摘されています。
すでに兵庫県・神戸市を走る神戸新交通ポートアイランド線(ポートライナー)では無人運転が行われ、東京都内を走る山手線でも2022年から自動運転の実証実験が始まりました。こうした自動運転システムにAIが搭載されることで、より高精度な自動運転の実現が期待されています。
安全面など課題はいまだ多くありますが、各鉄道会社がこぞって自動運転に力を入れている状況を見ると、電車運転士という仕事がなくなる可能性はないとは言い切れません。
ホテルのフロントスタッフ丨AIが接客し、トラブルのみ人が対応する時代へ
ホテルのフロントスタッフの仕事は、チェックインやチェックアウトの手続き、客室の空き状況管理、宿泊客の問い合わせ対応など多岐にわたります。
こうした業務のほとんどは、AIによって自動化できる可能性が高いと考えられています。例えば、チャットボットが宿泊客の問い合わせに24時間対応したり、予約管理システムがリアルタイムで客室の空き状況を把握・管理したりすることができます。
このように、ホテルのフロント業務のほとんどがAIによって代替可能になると予想されます。すでに、HISホテルグループの「変なホテル」のように、最先端のロボットが人に代わって接客をする事例もあります。
もちろん、トラブル対応などの高度な判断力が必要な業務については、人間のスタッフに依存せざるを得ない部分が残るでしょう。ただし、雇用の数は減る可能性が十分にあります。
銀行の窓口スタッフ丨AI銀行員が最前線に立つ時代が来る可能性あり
銀行員の窓口業務は、AIによる自動化が進む可能性が高い職種の一つです。
銀行業界においては一般の人が普段行う振込などの手続きについては、オンラインで行われるのが当たり前になってきましたが、近年では従来の対面業務もAIによって実現されつつあります。例えば、韓国のソフトウェア開発企業のESTsoftでは、同社のAIヒューマン技術とChatGPTを組み合わせてAI銀行員「ハン・アルム」を開発し、対面に似たサービスを提供することを発表しています。
こうした流れを見ると、AIの発展によって、窓口対応業務がなくなる可能性は十分にあるでしょう。
今後は、顧客一人ひとりに合わせた金融商品の提案や、個々の企業の状況を鑑みた融資の判断など、それぞれの顧客の「思い」に寄り添いながら対応する仕事が中心になると考えられます。
タクシードライバー丨自動運転技術の発達で雇用数が減少
AIによる自動運転技術の発達により、タクシードライバーの仕事は大きな影響を受けると予測されています。
トヨタの中国法人では、自動運転の技術開発を行う中国のスタートアップ企業の小馬智行(ポニー・エーアイ)が1,000台の自動運転車両を中国市場に投入すると発表。アメリカでも、韓国の自動車メーカーのヒョンデと、自動運転技術の開発を行うアメリカのモーショナルが共同開発した自動運転タクシーが、2024年から展開される予定となっています。
日本では、近年、少子高齢化に伴い、タクシードライバー不足の問題が大きくなってきています。各国の流れから、日本でもAIを搭載した無人タクシーが当たり前のように走る時代はそう遠くないと言えるでしょう。
もちろん、AIは人が行ってきたようなきめ細やかなサービス(例えば障がい者の乗車サポートなど)が難しいため、人による送迎のニーズが完全になくなることはないと考えられます。ただし、タクシードライバーの雇用の数が減る可能性は十分にあるでしょう。
配達員丨自律走行ロボットの登場で需要が縮小
配達員の仕事がAIに代替される可能性は高いと考えられています。自動運転車両の技術が急速に進歩しており、これらの技術が配達業務に応用されれば、人を介さずに配達が可能になります。
実際、2024年2月には、ウーバーイーツが三菱電機や自律走行ロボットを手掛けるアメリカの企業のカートケン社と協働し、東京都内の一部地域でロボットデリバリーサービスを提供することを発表しました。このデリバリーロボットには高度なAIモデルが活用され、物体検知技術など安全な自律走行に必要な機能が搭載されています。
配達員に対面を望む顧客ニーズや、人の対応を好む文化的背景がある地域もあり、完全に人を排除することは難しいかもしれませんが、配達員へのニーズはAIの発展によって小さくなる可能性が高いでしょう。
警備員丨24時間365日休むことなく稼働するAI警備ロボットが主役に
警備員の主な仕事は、建物や施設の警備や入退場管理、防犯対策などです。これらの業務が、AIで代替可能になりつつあります。
例えば、東京・池袋にあるサンシャインシティでは、2023年11月から、AIを搭載した警備ロボットの実証実験が始まりました。人の行動を認識・分析するAIが24時間365日稼働しながら、人の目では見逃しがちな一瞬の異常行動を検知、即時通知するなど、精度の高い警備サービスを提供します。
警備員の業務は長時間、あるいは夜間の拘束が比較的多く、労働者への負担が度々指摘されていることから、AIに積極的に置き換わっていく可能性が高いでしょう。ただし、重大な犯罪など緊急事態が発生した場面では人間が対応する必要があり、完全に置き換わるわけではないと言えます。
工場作業員丨高度な作業ができるAIを監督する立場に移行
工場作業員も、AIによる影響を大きく受けている職種です。単純作業や繰り返し作業にとどまらず、熟練の職人の技術を真似ての製品製造、生産計画の立案の自動生成など、高度な作業もAIに代替されつつあります。
このような状況から、工場作業員は今後直接作業には入らず、AIをいかに活用するか、AIを活用した現場でエラーが発生しないようにするにはどうしたらいいか、そうした監督目線での仕事が主になってくると予想されます。
また、AIを開発する人材や企業で、製造現場にも精通しているところはまだ多くはないと言われているため、今後はそうしたAI開発側と協力し、生産ラインを構築する仕事を任せられる可能性もあります。
販売員丨販売する商品に合わせて人とAIが分担するスタイルに変化
販売員も、AIによって代替される可能性が高い職業です。
顧客が自分で会計をするセルフレジが多くの店舗で導入され、販売スタッフがいない無人の店舗も登場してきていますが、近年ではこうしたセルフレジにAIが導入されつつあります。
例えば、さまざまなIT製品やサービスを提供するデンソーでは、生成AIを搭載した接客ロボットを開発し、2024年1月にそれによる接客のデモンストレーションを行いました。この接客ロボットは、単に顧客に対して決まった応答をするだけでなく、顧客の要望を自ら聞き出し、それをもとに商品を提案することができます。
もちろん、購入する商品によっては、人による説明を受け、納得してから購入したいというニーズもあるでしょう。特に高額な商品の場合、販売員の接客の質が購入の決め手となる場合も少なくありません。
今後は、安価で手に入れやすい商品の販売はAI、高額なためじっくり検討して決めたい商品の販売は人、といったように役割が明確に分かれる可能性もあります。
ライター丨自分にしか書けない文章を書ける人だけが求められる時代に
ライターの仕事は、AIによって一部代替される可能性があります。ChatGPTなどの生成AIが発展し、文章の生成が容易になっていることで、よりその可能性が増してきました。
実際、これまで外部のライターにSEO記事の作成を依頼していた企業が、ChatGPTを導入して自社での内製に切り替えることは珍しくなくなってきています。
一方で、AIは単に与えられた情報を組み合わせて文章を生成するのみで、創造性に乏しいのが現状です。独創的な発想力や深い専門知識などを文章に盛り込むには、やはり人の手が必要となります。
今後は定型的なライティング業務ができるライターではなく、自分にしか書けない文章が書けるライターが求められるでしょう。
通関士丨審査や書類作成など一部の業務がAIによって簡略化
通関士は、輸出入される貨物の通関手続きを代行する専門家です。関税法や輸出入に関する規制を熟知し、書類作成や税関当局への申請を行います。
多様な規制と照合して審査を行うというプロセスは、まさにAIが得意とするところです。また、今は書類作成もOCRによって簡略化されています。そのため今後、通関士の多くの業務が、AIに代替される可能性は高いでしょう。
一方で、通関士は輸出入業者との綿密なコミュニケーションも重要な業務の一つとなっています。AIは言語処理できますが、人間の感情や意図の的確な理解は困難です。
今後、通関士はAIに業務の一部を担当させつつ、人の介入が必要な部分のみを担う形に変化していくと考えられます。
会計監査人丨資料の加工や分析など一部の業務がAIによって簡略化
会計監査の仕事は、AIによって一部の業務が代替される可能性が高いと考えられています。
例えば被監査会社から取得した資料のデータ加工、データ化した資料の分析、分析後の調査資料の作成などについては、AIを利用することで効率化が可能です。
こうした積極的なAI活用により、会計監査の主業務は、AIが行った作業のチェック・レビューなどに置き換わる可能性が高いでしょう。
AIでなくならない可能性が高い仕事5選
AIによってなくなる可能性が高い仕事がある一方で、AIがより発達してもなくならない可能性が高い仕事もあります。
コンサルタント丨AIは個別の対応が難しいため残り続ける可能性大
AIはデータ分析や業務の自動化などで活躍しますが、コンサルタントの仕事は代替されにくいと考えられます。
コンサルタントにはクライアントの経営課題を特定し、課題解決に向けた戦略をクライアントが納得する形で提案、さらにはクライアントの状況を把握した上でのフォローなどが期待されています。AIはこのように個々のクライアントに合わせて柔軟に対応するスキルを持っていないため、コンサルタントの仕事はAIには代替されないと言えるでしょう。
むしろコンサルティングの際に発生する事務作業をAIを使って効率化するなど、AIと協働することでコンサルタントの生産性が向上する可能性があります。
教師丨AIと共存するうえで重要な「人」を育てるため逆に期待が高まる
教師もAIによって仕事がなくならない可能性が高い仕事です。
教師は一般的に、子どもたちの理解度に合わせて解説する、子どもたちの個性や才能を見つけて伸ばす支援をするなどの役割が期待されています。
一方、AIは知識や情報を伝達することはできても、子どもたちに一人ひとりの人間性を見極め、それに応じた的確な指導をすることは困難です。
また、AI技術の発達する時代においては、創造性や社会性、思いやりの心などがより一層重要になると考えられます。AIに対する倫理観も必要でしょう。今後はむしろ、そうした人間らしい資質を育む教師の役割がより重要になる可能性があります。
介護職員丨各利用者ごとに適したサポートができるスキルは今後も需要あり
介護職員の仕事は、身体介助や生活支援など、人との対人関係を伴う業務が中心です。
AIは介護業務のある程度の部分を支援できるかもしれませんが、介護では利用者一人ひとりの気持ちを汲み取り、心の通った対話やコミュニケーションをしながら、利用者に合わせて臨機応変に対応する必要があります。これはAIには難しい領域のため、AIによって介護職員の仕事がなくなる可能性は低いと言えるでしょう。
むしろ、AIを活用して介護記録の自動入力や効率化を図ることで、介護職員が利用者に専念できる環境づくりが期待されています。
カウンセラー丨クライアントの心に寄り添える人は貴重な存在
カウンセラーは、クライアントの心理的な問題や悩みに寄り添い、適切なアドバイスを行う職業です。人間の心の働きを読むための理解力、クライアントに寄り添うための傾聴力や共感力が求められるため、AIでは代替が難しいと考えられています。
ただし、AIを活用することで、カウンセリングの質を高めることができる可能性があります。例えば、クライアントの発言から心理状態を分析する、過去のカウンセリングデータから有効な対応を提案する、カウンセラーのスキルアップのための研修支援などはAIが得意とする分野です。
AIの発達は、カウンセラーの仕事を奪うのではなく、より高度で的確なカウンセリングの実現に寄与します。
研究者丨創造性や発想力は今後も人が優勢
AI時代においても、研究者の仕事はなくならない可能性が高いと考えられます。AIは既存の知識を組み合わせて推論するツールに過ぎず、人間の創造性や発想力に代わるものではないからです。
AIは研究者の作業を支援し、効率化に貢献することは間違いありません。例えば、論文の構造化や要約作業、データの可視化や統計解析、シミュレーションの高速化などの場面での活躍が期待されます。
しかし、新たな仮説を立てたり、研究方針を決定したりする際には、人間の判断力が不可欠となります。さらに、倫理面での配慮なども重要です。
AIは研究者の能力を補完するツールとして期待されますが、研究者自身の役割がなくなることはないと言えるでしょう。
AIで新たに生まれる仕事
AIの発達・普及は既存の仕事にさまざまな影響をもたらします。その一方で、新たな仕事も生まれ始めています。
データ探偵丨データからアイデアを生み出す人に注目が集まる
データ探偵とは、データの質や信頼性を確認するとともに、AIによって分析されたデータから、企業に役立つアイデアを創出する専門家を指します。
AIの発達により、データの重要性が高まるほどに、データの出所やデータ収集方法の確認、データの不正や偏りの有無のチェック、データの質や完全性の評価などがより必要になってきます。
また、AIはデータの分析に長けていますが、そこから既存のデータにとらわれず、なおかつ個々の企業に寄与するアイデアを生み出すには一定の専門知識が不可欠となります。
今後は、これらのスキルを持つデータ探偵の需要が高まっていくでしょう。
AIプロンプトエンジニア丨生成AIの能力を引き出せずに悩む企業は多い
AIプロンプトエンジニアとは、生成AIに適切な指示(プロンプト)を与えて望ましい結果を引き出す専門家のことです。生成AIは人間からの入力次第で出力が大きく変わるため、的確なプロンプトを作成する能力が重要視されます。
例えば、Webメディアに掲載する記事を作成するときには、テーマや記事の方向性、文字数、注意点など詳細な条件を与えたほうが、より望ましい結果が出力されやすくなります。望ましい結果が出力されれば、その後の記事の編集や校正・校閲など効率化につながります。
AIプロンプトエンジニアは、生成AIの能力を最大限に引き出せる人材として、今後ますます需要が高まると考えられています。
AI活用における倫理の専門家丨リスクはつきものゆえ一定のニーズあり
AI技術が高度化し、さまざまな場面で活用されるようになると、倫理的な課題が生じてくることが予想されます。
例えば、AIが人権を侵害したり、プライバシーを脅かしたりする恐れがあります。生成AIが出力した生成物が著作権に抵触している可能性もあります。
そこで、AIの倫理的側面を検討し、適切な運用ルールを策定する専門家が必要とされてきます。例えば、AIシステムの倫理的影響を事前に評価する、AI開発者や利用者に対して倫理教育を行う、倫理違反があった場合の是正措置を提言するなどです。
AIの倫理問題に携わる専門家は、技術と倫理の両面から検討を行い、AIが人間社会に与える影響を最小限に抑える人材として、今後多くの企業から求められることでしょう。
AI時代に必要なスキルと身につけ方
AIが活発に利用され、仕事のあり方が目まぐるしく変化する今の時代においては、どのようなスキルが求められるのでしょうか。
ここでは、ソフトスキル(仕事の内容問わず重要となる基礎能力)とハードスキル(その仕事を行う上で不可欠となる知識や技術)に分けて見ていきましょう。
ソフトスキル
ソフトスキルは、具体的には問題解決力、創造力、批判的思考力、意思決定力、コミュニケーション能力、協調性、リーダーシップなどが挙げられます。これらはAIが不得意な領域であり、AIがビジネスにおいて活用されればされるほど、重要度が高まるでしょう。
例えば、AIは、AI自身が示した解決策の妥当性について判断できません。また、多くのデータにもとづいて行動するため、従来の発想を超え、革新的なアイデアを生み出す力については人のほうが優れています。
ソフトスキルを持っていれば、AIにできないことは人が、人よりもAIのほうが効率的にできることはAIが行う、といったように、AIと役割分担をし協働しながら働けるようになります。
これらのソフトスキルを身につけるには、職場でのOJTや各種研修を活用するのがおすすめです。個人でビジネスセミナーに参加し、学びを深めるのもよいでしょう。
ほかにも、経営や仕事について書かれた本を読むのもひとつです。特に出版から何十年も経っているにもかかわらず今もなお多くの人に読まれている本には、AI時代においても通用するエッセンスが詰まっています。
ハードスキル
ハードスキルとは、その仕事をするうえで不可欠となる専門的な知識や技術のことを言います。
これらのうち、今後特に求められる可能性が高いのが、AIそのものやAIを活用したツールの開発、AIの性能に関わるデータ分析などに役立つスキルです。具体的には機械学習やディープラーニング、データサイエンスに関する知識などが挙げられます。
昨今では、DX推進に不可欠な人材を確保するために、リスキリングの一環として、AIに関するハードスキルを身につけられる講座を用意したり、資格取得を支援したりする企業も増えてきました。今、勤めている会社で実施されているなら、ぜひ積極的に利用することをおすすめします。
まとめ
AIの発達により、これまでの仕事の形態は大きく変化しています。
今まで当たり前のようにあった仕事が、新たな技術によってなくなることは自然な流れです。例えば、かつては誰かが誰かに電話をするとき、お互いの回線を手作業でつなぐ必要がありました。そこで電話交換手と呼ばれる仕事があったわけですが、技術の発展によって回線接続が自動的に行われるようになったため、今は失われた職業となっています。
AIは日進月歩で発達しているため、この記事で紹介した仕事だけでなく、そのほかの多くの仕事がなくなるかもしれません。もしくは今までのあり方とは異なる可能性は十分に考えられます。
重要なのは、人にしかできないことは何か、その新しい技術を使いこなすためにはどんなスキルが必要なのか、見極めることです。その姿勢こそが、時代の変化に柔軟に対応し、活躍の場を広げる鍵となるでしょう。