ITパスポートとは?メリットや試験の難易度、合格率を高める方法を解説
最終更新日:2024.05.12
IT分野の基礎的な知識を身につけたいと考えている人に最適な資格が「ITパスポート」です。
この資格は、ITに関する理解度を客観的に証明する資格で、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が必須となっている今、企業・社会人双方から注目されています。
この記事では、ITパスポートを取得するメリットや試験の概要、合格率を高める方法をご紹介します。
ITパスポートとは 簡単に紹介
ITパスポートとは、社会人がITを利活用する上で身につけておきたい基本的な知識を評価する国家資格です。この資格を取得すると、一定以上のITリテラシーを持っていることを証明でき、キャリアアップにもつながりやすくなります。
ITパスポートを取得するには、経済産業省のIT政策実施機関「情報処理推進機構(IPA)」が実施する試験に合格する必要があります。ITパスポート試験は、経済産業省が「情報処理の促進に関する法律」にもとづいて実施している情報処理技術者試験の一つです。
出典:情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 試験要綱 ver.5.3(2024年10月の試験から適用)p.1丨IPA
ITパスポートを取得後、情報セキュリティマネジメント試験や基本情報技術者試験へとステップアップするケースもしばしば見られます。
ITパスポートを取得するメリット
ITパスポートの取得には、以下のようなメリットがあります。
自身のキャリアアップにつなげられる
ITパスポートを取得すると、キャリアアップにつながりやすいのがメリットです。
特に今は、多くの企業が、DX推進のためにITリテラシーを身につけた人材を求めている時代です。そうした中で、一定レベルのITリテラシーを証明するITパスポートを持っていると、自身のキャリアに対してさまざまなメリットがあります。
例えば、
- IT関連業務への就職・転職がスムーズになる
- IT部門への部署異動の可能性が高まる
- ITに関する資格手当やキャリアパスの恩恵を受けられる
などです。
ITパスポートは、これからの時代において自身の市場価値を高め、より豊かなキャリアを築くのに大いに役立つ資格と言えます。
ITリテラシーやビジネススキルを高められる
取得を目指すことで得られるメリットもあります。それが、ITリテラシーやビジネススキルを自ずと高められる点です。
ITパスポート取得においては、ハードウェアやソフトウェアの基本から、ネットワークやセキュリティ、データ活用、プロジェクト管理まで、ITの基礎知識を幅広く身につける必要があります。加えて、企業活動や経営戦略、会計、法務などの理解も不可欠です。
そのため、ITパスポート試験の勉強をする過程で、状況問わず対応できる汎用性のある知識を自ずと磨くことができます。
日々の業務においてITが不可欠である今、それを適切に使いこなすために必要なITリテラシーの重要性はますます高まっています。ただ社会人の場合、ITリテラシーについて教わる機会があまりありません。
ビジネススキルも同様で、社会人となったあと仕事において経営や会計、法務に関する知識を体系的に学ぶ機会があるかと言えば、そうではないことがほとんどでしょう。会社の上司から教わったとしてもごく一部の知識にとどまり、その会社でしか通用しないものの場合もあります。
近年は終身雇用の形態を取る企業がめっきり減り、同じ会社で長く働き続けるケースが少なくなっています。今所属している会社でしか通用しない知識のみだと、今後のキャリアに影響が出る可能性があるでしょう。ITパスポート取得のために勉強して身につけた知識は、自身の食い扶持を守る盾にもなるのです。
ITパスポート試験の合格率は50%程度で難易度はやや低め
ITパスポート試験の全国平均合格率は、過去5年間で以下のようになっています。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2019年度 | 103,812 | 56,323 | 54.3% |
2020年度 | 131,788 | 77,512 | 58.8% |
2021年度 | 211,145 | 111,241 | 52.7% |
2022年度 | 231,526 | 119,495 | 51.6% |
2023年度 | 265,040 | 133,292 | 50.3% |
参照:情報処理技術者試験統計資料 令和6年3月度 ITパスポート試験 p.1丨IPA
ITパスポート試験の合格率は50%程度で、資格試験の中では難易度はやや低めです。
なお、2023年度のデータでは、社会人の合格率が53.0%、学生が40.2%でした(参照:ITパスポート試験 試験結果丨IPA)。次の章で詳しく紹介しますが、ITパスポート試験で出題される問題にビジネスの実務に即しているものが多いことが、社会人と学生の合格率の差からも見て取れます。
ITパスポート試験の概要 試験日や試験内容まとめ
ITパスポート試験の概要は以下のとおりです。
項目 | 概要 |
試験実施日 | CBT(Computer Based Testing)方式で随時実施
詳しくは試験開催状況一覧で要確認 |
試験地 | 全国47都道府県
詳しくは試験開催状況一覧で要確認 |
受験手数料 | 7,500円(税込) |
試験時間 | 120分 |
出題数・解答数 | 100問・100問 |
出題形式 | 多肢選択式(四肢択一) |
出題範囲 | ストラテジ系(企業と法務、経営戦略など)から32問
マネジメント系(開発技術、プロジェクトマネジメントなど)から18問 テクノロジ系(基礎理論、コンピュータシステムなど)から42問 ※残り8問は今後出題する問題を評価するために使用 ※詳しくは、試験要綱 p.19を参照 |
配点 | 1,000点満点 |
合格基準点 | 【総合評価点】
600点/1,000点満点 【分野別評価点】 ストラテジ系 300点/1,000点満点 マネジメント系 300点/1,000点満点 テクノロジ系 300点/1,000点満点 ※総合評価点を600以上取り、かつ分野別評価点をそれぞれ300以上取る必要がある |
参照:受験要領丨ITパスポート試験
参照:情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 試験要綱 ver.5.3(2024年10月の試験から適用)丨IPA
2024年4月30日時点での最新情報です。実際に勉強を始めたり、試験を受けたりするときは、ITパスポート試験の専用サイトにある「受験要領」や、IPAの「試験要綱」の最新版を確認するようにしてください。
ITパスポート試験の合格率を上げるための勉強方法
ITパスポート試験は合格率が比較的高めですが、ここで合格の可能性をさらに上げるための方法をご紹介します。
試験のレベルを参考書から把握する
ITパスポート試験の合格率を上げるには、試験対策用の参考書から、試験のレベル感を把握することをおすすめします。
試験勉強するときは計画を立てることが大切ですが、その際にレベル感についてざっくりとでもわかっていないと必要な勉強量を見誤り、計画が狂いやすくなります。勉強が思うように進まないと、勉強のモチベーションにも影響があります。
そのため、試験対策用の参考書を購入したら、まずは目次を中心にざっくり目を通し、どのくらいのレベルなのか、どのような勉強が必要になりそうか掴んでみましょう。
ITパスポート試験は、ITの基本的な知識だけでなく、実務に即したビジネススキルの程度も問うため、社会人の場合すでに身についている項目がいくつかあるかもしれません。それがどのくらいあるのか把握できるだけでも、勉強計画の立てやすさが大きく変わります。
なお、ITパスポート試験の参考書は、SBクリエイティブの「いちばんやさしいITパスポート」やインプレスの「徹底攻略」「かんたん合格」を始め、さまざまな出版社から出ています。自分がわかりやすい、これなら勉強のモチベーションが上がる、と思った本が一番です。できれば書店に足を運び、複数の本を比較することをおすすめします。
試験日から逆算して勉強計画を立てる
ITパスポート試験に合格するには、計画的な学習が重要です。勉強期間は長いほど余裕を持って学習できますが、逆に長過ぎるとモチベーションを保ちにくくなります。試験日を決め、その試験日から逆算して勉強計画を設定するのがベターです。
ITパスポート試験に合格するための勉強時間は、100~150時間程度とされています。1日2時間程度勉強したとして50~75日ですので、試験日を2~3カ月後とし、その間にどのような勉強をするのか決めていくと良いでしょう。
例えば、以下のような勉強計画が考えられます。
- 1カ月目:参考書のストラテジ系とマネジメント系の部分を読む
- 2カ月目:参考書のテクノロジ系の部分を読む
- 3カ月目:前半はテキストを再読。後半は過去問を解きながら、覚えていない分野を復習する
1日2時間確保できない人は、1日の学習時間を細かく決めておくのがおすすめです。仕事や家事などの予定を加味し、平日は1~2時間、土日は3時間など、無理のない範囲で設定しましょう。
このように試験日から逆算して計画を立てることで、着実に合格に向けた準備ができます。ただし、計画はあくまで目安です。理解が進まない分野があれば一度見直しましょう。
過去問をたくさん解いて実践力を身につける
ITパスポート試験に合格するには、過去問を多く解くことが大切です。過去問を解けば解くほど、出題範囲や傾向を把握できるだけでなく、苦手な科目や問題類型がわかったり、時間配分がうまくなったりするメリットがあります。
過去問は参考書の後ろについていることが多いほか、ITパスポート試験ドットコムの「ITパスポート過去問道場」でも用意されています。
独学が難しいときは有料の講座を活用する
自分で参考書を選び、計画を立てて学習を進めるのが難しい場合は、企業が提供している有料の講座を活用するのもひとつです。
企業側ですでに用意された対策テキストや動画講義を活用して学習するだけで、対策を進めることができます。また、講座によっては通学コースがあり、他の受講生との交流で刺激を受け、モチベーション維持につながることもあります。
以下、代表的な有料講座です。
講座名 | 主催 | 特徴 | 受講料(税込) |
スタディングITパスポート試験講座 | スタディング | スマホで学習
AI問題復習機能を搭載 |
11,220円 |
ITパスポート講座 | ユーキャン | テキスト・動画で学習
対策テキストは1冊のみ |
21,000円~ |
ITパスポート通信講座 | フォーサイト | テキスト・動画で学習
短期間で合格が目指せるカリキュラム |
16,800円 |
ITパスポート 本科生 | TAC | Webか通学で学習
オンラインで後日受講が可能 |
25,000円~ |
ITパスポート講座 | 資格の大原 | Webか通学で学習
CBT形式の模擬試験3回分がセット |
21,000円~ |
有料の講座は受講料こそかかるものの、合格へのサポート体制が整っていることが大きな魅力です。自分に合った講座を探し、費用対効果を考えながら検討しましょう。
ITパスポートを取得するときの注意点
ITの知識を客観的に証明するITパスポートですが、取得するときに気をつけたいことが2つあります。
取得しても独占業務がない
ITパスポートは、弁護士や司法書士と異なり、「この資格がないとしてはいけない」と法的に定められた業務はありません。
IT関連の仕事をする上で有利になるとはいえ、資格がなくても(ITスキルさえあれば)同様の仕事に就ける可能性はあるため、多くの時間を割いて取得するべき資格なのか、よく検討することをおすすめします。
現在の仕事によっては、より専門性の高い資格のほうがよい
現在の仕事によっては、ITパスポートより専門性の高い資格のほうが、仕事の質の向上やキャリアアップにつながりやすいケースもあります。
特に今IT系に勤める人は、その可能性が十分に考えられます。例えば、プログラマーであれば、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験を受けたほうがよいこともあります。
資格の勉強をする前に、ほかに自身の仕事内容や将来のキャリアプランに貢献してくれる資格がないか、確認することが大切です。
まとめ
ITパスポート試験は実務に即した問題も多く、比較的合格しやすい難易度ですが、一朝一夕には取得できません。合格するには、ある程度の勉強が必要です。
一方、人によってはITパスポート以外の資格が適していることもあります。
日々の限られた時間をより有効的に活用するためにも、慎重に選択していただけたら幸いです。