スキルアップとは?高めるメリットや方法を企業・従業員別に解説

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最終更新日:2024.05.24

「スキルアップの意味と高めるメリット」というタイトルの図解。スキルアップとは、もとのスキルの向上や新たなスキルの習得を指す言葉で、スキル=ある作業や仕事を行う際に必要とされる技術や能力のことを指します。 従業員がスキルアップするメリットとして、以下の項目が挙げられています。 【企業】 生産性がアップして業績の向上が期待できる 人材確保に重要な離職率低下の対策になる 社会からの評価が高まり持続的な成長につながる 【従業員個人】 生産性向上に必要な仕事の効率がアップする 昇進や職務拡大のチャンスを獲得できる 転職や独立に有利に働く市場価値向上につながる

近年、社会や経済環境が目まぐるしく変化するなかで、従業員のスキルアップの重要性が高まっています。

スキルアップとは、従業員が業務に役立つスキルを高めたり、新たなスキルを習得したりすることを指します。企業が従業員のスキルアップを支援することで、生産性の向上や業績アップが期待できます。一方で、従業員個人にとっても、キャリアアップや給与アップなどのメリットがあります。

この記事では、スキルアップとはそもそも何かを整理したうえで、企業側と従業員側に分けて、高めるメリットや方法などを詳しく解説します。

スキルアップとは

スキルアップとは、もともとのスキルを高めたり、新たなスキルを習得したりすることを指す言葉です。ビジネスにおいては、「営業スタッフのスキルアップが急務だ」「資格取得でスキルアップを図る」といった形で用いられます。

そもそもスキルとは、ある作業や仕事を行う際に必要とされる技術や能力のことです。例えば、専門的な知識、技術的なノウハウ、コミュニケーション能力、マネジメント能力、問題解決能力などが挙げられます。

このように、スキルには仕事に直結する専門的なものから、ビジネスパーソンとして共通して求められる汎用的なものまで幅広く含まれています。

企業は従業員のスキルアップを支援することで生産性の向上や新たな価値の創出を、従業員個人はスキルを身につけてキャリアアップの実現を目指していくことができます。

スキルアップとキャリアアップの違い

スキルアップと近しい言葉に、キャリアアップがあります。どちらも自己成長に関わる言葉ですが、意味合いが異なります。

スキルアップとは、現在の仕事で求められるスキルの向上や新たなスキルの獲得を指します。 一方、キャリアアップとは、将来のキャリアを見据えて、職務範囲を広げたり、昇進・昇格を目指したりすることです。

職務範囲を広げるにせよ、昇進・昇格を目指すにせよ、より上のキャリアを目指すためには自身のスキルレベルを高めることが不可欠です。そのため、スキルアップはキャリアアップにおいて必要な取り組みと言うことができます。

一方、スキルアップはビジネス以外にも用いられる言葉ですが、スキルアップしたいと考えるきっかけの多くが、将来のキャリアを考えたとき、あるいはそれを考えた際に「今の自分にはこれが足りない」と思ったときでしょう。その意味において、キャリアアップは、スキルアップの方向性をある程度決定づけるものと言うことができます。

企業側から見たスキルアップ

スキルアップは、個人がスキルを上げるとき(あるいは新たなスキルの習得するとき)に用いられる言葉であり、一見すると個人の自主性に委ねられるものに見えますが、企業にもさまざまなメリットがあることから、昨今では企業が積極的に従業員のスキルアップを支援するケースも増えてきました。

企業がスキルアップを支援するメリット、具体的な支援の方法、支援するときのポイントをそれぞれ紹介します。

スキルアップが企業にもたらすメリット

企業が従業員のスキルアップを支援することには、以下のようなメリットがあります。

業績の向上

従業員のスキルアップを支援することで期待できる一つが、業績の向上です。

一人ひとりの従業員が今の仕事をより効率よくこなせるようになれば、事業全体の生産性が高まります。また、スキルアップの一環として新たなスキルを身につけさせることができれば、新規事業に挑戦しやすくなります。

特に、最近はデジタル技術の著しい進歩などによって社会のニーズが大きく変化しており、企業が生産性を高めるにはDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進が重要となってきています。個々の従業員のITリテラシーを高めれば、DX推進に必要な新たなサービスの創出につなげられるでしょう。

このように、スキルアップの支援は企業のDX推進を含め、経営上の大きなメリットがあります。

離職率低下

企業が従業員のスキルアップを支援することは、離職率低下に一定の効果があります。

昨今は雇用の流動化や働き方の多様化から、自身のキャリアを重視する人も増えてきています。この会社にいれば自身の望むキャリアは形成できるか、キャリア形成に必要なスキルは身につけられるのか考え、それが見込めないと感じると転職を考え始めるという流れが多く見られるようになってきました。逆に、従業員のスキルアップを積極的に支援する企業に対しては、働き続けたいと考える人が少なくありません。

企業がスキルアップ支援をすると、従業員に会社で働く意味やメリットをもたらし、離職率低下につながります。離職率を下げることができれば、既存の従業員はもちろん、新たな人材の確保にも寄与するため、積極的に取り組んで損はないと言えるでしょう。

持続的な成長

企業が従業員のスキルアップを支援することで、企業の持続的な成長も期待できます。

従業員の成長を大切にする企業として、社会的な評価につながるでしょう。取引先や投資家、消費者など企業を取り巻く関係者(ステークホルダー)からの評価が高まれば、事業の成長や企業価値の向上につながります。

また、「あの会社に就職すれば、自分の成長につながる」とみなされ、優秀な人材から選ばれる可能性が高まります。DX推進に寄与する新たな事業の展開もしやすくなるでしょう。

従業員のスキルアップ支援は、企業の持続的な成長という意味でも重要な取り組みです。

スキルアップを支援する方法

スキルアップを支援する主な方法としては、以下の3つが挙げられます。

リスキリングの実施

企業が従業員のスキルアップを支援する具体的な方法の一つに、リスキリングがあります。リスキリングとは、企業がDXを推進するうえで必要な人材を確保するために、従業員に必要なデジタルスキルやITリテラシーを身につけてもらうように支援する取り組みを指します。

リスキリングをするためには、まず従業員の現在のスキルと今後必要とされるスキルのギャップを把握することが不可欠です。そのうえで不足しているスキルを習得するための研修の提供や、資格取得の促進を行います。

リスキリングにおいて重要なのは、従業員の学習に対するモチベーションをいかに持続・向上させるかです。学習の環境を整備するだけでは、もともと学習意欲の高い人にしか効果がありません。学習に対するモチベーションがそれほど高くないが、新たなスキルを身につけさせたほうが良いと思われる人材に取り組んでもらうにはどうすればいいか。学習を始めたはいいものの、途中で挫折しないようにするためには何をしたらいいのか。そうした支援体制を整えておく必要があります。

また、リスキリングは、企業のDX推進のために行われるものであるため、学習は業務時間内とするのが原則です。そのため、対象となる従業員の学習時間の確保と業務量の調整、所属している部署やチームのほかのメンバーの理解と協力を得ることも重要となります。

OJTの推進

OJT(On-the-Job Training)の推進も、従業員のスキルアップ支援の有効な施策です。OJTとは、日常の業務の中で、上司や先輩社員が部下や後輩社員に対して、仕事を通じて指導や支援を行い、実践的なスキルを身につけさせる取り組みを指します。

OJTを行うには、指導の対象となる従業員の能力や習熟度を適切に把握し、それに合わせた指導方法を検討する必要があります。単に業務を教えるだけでなく、仕事を通じて考え方や問題解決能力を身につけさせるなど、計画的な指導計画を立てることが重要です。また、OJTの実施時間を確保するため、業務の効率化や適切な業務分担などの環境整備も不可欠となります。

OJTを推進するときのポイントは、指導する側の社員の教育スキルや意欲を高めることです。そのためには、指導側の社員に対して、効果的なフィードバックの方法や部下の育成スキルを高める研修を実施するとよいでしょう。また、OJTの実施に際して、指導する側の社員が指導に十分な時間を割けるように、業務の効率化やタスクの振り分けなど、環境整備にも取り組むことが重要です。

自発的な学習の奨励

スキルアップ支援には、従業員の自発的な学習の奨励も挙げられます。

従業員の自発的な学習は、リスキリングと異なり、業務時間中に実施しなければならないものではないとはいえ、奨励するときは学習時間の確保や費用の支援など、物理的な環境整備を積極的に行ったほうがよいでしょう。従業員の自発的な学習を後押しするために、自社が求める従業員像を公表したり、学習の成果を評価して適切に処遇に反映したりすることも重要です。

一方で、学習をしたくても、何らかの事情で学習できない従業員への配慮も大切になります。例えば通勤時間が長くて学習時間の確保が難しい従業員が多ければ、在宅勤務を推奨する方法が有効です。

ただし、特定の従業員へのサポートが偏ると、ほかの従業員が不公平感を覚えてしまうため、支援の理由を明確にして理解を求める必要もあります。

スキルアップの支援に役立つ助成金

厚生労働省では、従業員の能力を高めたい事業者向けに、さまざまな助成金制度を設けています。

従業員に対して職業訓練を行ったときにかかった費用の一部を助成する「人材開発支援助成金」や、別の企業に出向することでスキルアップを促進するときにかかった費用の一部を助成する「産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)」などさまざまなものがあるため、条件や環境と照らし合わせながら、活用できるものがないか探してみましょう(参照:事業主の方のための雇用関係助成金丨厚生労働省)。

従業員側から見たスキルアップ

次に、従業員目線で見たときに、スキルアップはどのようなメリットをもたらすのか、スキルアップにはどのような方法があるのかを解説します。

スキルアップが従業員にもたらすメリット

スキルアップによって従業員が得られる主なメリットは、以下のとおりです。

仕事の効率アップ

スキルの内容にもよりますが、自身のスキルを高めると、仕事を要領よく進められるようになります。特に、ITスキルの向上は、作業の自動化や省力化にも役立ちます。また、高度な専門知識を習得すれば、より難易度の高い課題にスムーズに対処できるようにもなるでしょう。

このように、スキルアップをすると、一つひとつのタスクを効率的にこなせるようになり、生産性が向上します。残業が減って、メンタルが安定したりプライベートが充実したりする効果もあるでしょう。

昇進や職務拡大のチャンス獲得

スキルアップをすれば、より責任ある仕事がこなせる人材とみなされ、現在よりも上のポジションを任せられたり、やりがいの大きい新たな仕事がもらえたりする可能性があります。

例えば、プロジェクトマネジメントスキルを磨いたことでリーダーに抜擢される、サービスに関する専門性を高めたことで次回の企画を任されるようになる、などです。

このように、スキルアップは従業員のキャリアアップに直結します。

市場価値の向上

スキルアップは、組織内での評価を高めるだけではありません。

もし高めたスキルや新たに獲得したスキルが、どの企業においても役立つと客観的にみなされるものの場合、転職や独立の際に有利に働きます。結果として、給与アップや良いポジションへの異動など、キャリアの選択肢が広がるでしょう。

スキルアップは自身の市場価値を高め、より良いキャリア形成につながる取り組みだと言えます。

スキルアップをする方法

従業員がスキルアップをする具体的な方法には、以下のようなものがあります。

リスキリングのために実施されている施策の活用

会社がリスキリングを実施しているのであれば、その施策を活用するのがおすすめです。

リスキリングは学習がゴールではなく、学習によって身につけたスキルを活用して新たな事業の展開、既存の業務の効率化にあります。施策を活用してスキルアップすれば、所属している企業に直接貢献でき、昇進や昇給などの可能性も高まります。

リスキリングの施策を活用するときは、自身のスキル向上のニーズと照らし合わせて、最適な施策を選択することが重要です。会社が用意している施策を単に利用するのではなく、現在の自身のスキルレベルや今後伸ばしたいスキル、キャリアビジョンなどを明確にし、それらに合致したものを選びましょう。そうすることで、効率的かつ自身の成長に直結したスキルアップが期待できます。

また、学んだことを業務の中で実践する、それを通して上司や先輩からフィードバックを得ることを積極的に行うと、より深い理解と定着が期待できます。

OJTを通じた実践

OJTを積極的に受けるのもよいでしょう。

OJTを受ければ、座学では得られない現場感覚を養えます。仕事の流れや職場の人間関係なども同時に学べるため、即戦力となるスキルが身につきます。また自分の適性を知る良い機会にもなるでしょう。

OJTを受けるときは、上司や先輩社員から丁寧な指導を受けることが重要です。わからないことがあれば遠慮せずに質問し、理解が深まるまで繰り返し学習しましょう。また、業務の進捗状況などについて定期的にフィードバックを求めると、自身のスキルアップの状況を把握しやすくなります。

自己学習

スキルアップをより図りたいときは、企業が用意している研修やeラーニング、資格取得支援を受けるだけではなく、積極的な自己学習も重要です。

例えば書籍や専門誌を読んで体系的な知識を身につけると、さらなるスキルの向上が期待できます。セミナーや勉強会に個人的に参加し、新たな知見に触れれば、自身の知識や能力の幅がさらに広がるでしょう。

自己学習を続けるためには、高いモチベーションの維持が必要です。特にこのスキルは役に立つのか、ちゃんと身についているのかが見えにくいと挫折しやすくなるため、明確な目標を持ち、具体的な計画を立て、学びの進捗や成果の見える化をしておきましょう。周囲の人に1年間勉強して資格を取るなどと宣言し、あえて自分にプレッシャーをかけるのも有効です。

まとめ

スキルアップは企業と従業員双方にとって重要な取り組みです。

企業側は、従業員のスキルアップを支援することで、生産性向上や離職率低下、持続的な成長などのメリットがあります。従業員側は、仕事の効率化、昇進や仕事拡大のチャンス獲得、市場価値の向上などが期待できるでしょう。

スキルアップに対しては、企業と従業員が協力して取り組むことで、双方の発展につながります。これからの時代を生き抜くために、スキルアップへ継続的に投資してみましょう。