キャリアデザインとは?意味や重要性、進め方などをわかりやすく解説
最終更新日:2024.07.05
近年、AI化や人生100年時代といった変化の大きい時代になり、従来のキャリアプランが通用しにくくなっています。「このままの働き方を続けてよいのだろうか?」と不安を抱えている人も多いのではないでしょうか?
そこで重要なのが、自分の将来設計を主体的に考えて実行していく「キャリアデザイン」という考え方になります。
この記事では、変化の大きい時代においても柔軟に対応できるよう、キャリアデザインの意味や重要性、進め方などについて解説します。
1. キャリアデザインとは
キャリアデザインを一言で表すと、自分で将来のキャリアを計画し、形成していくことです。似た言葉として、キャリアプランやキャリアパスがあり混同しやすいため、それぞれの意味についてもご紹介します。
キャリアデザインの意味
キャリアデザインとは、「自分の将来や仕事をしていくうえで、どのようなキャリアを歩みたいか」を考え、主体的にキャリアを形成していくことです。
具体的には、仕事をとおしてどのように社会と関わりたいか、どういったスキルや経験を積みたいか、ありたい姿や目標などを自分自身の価値観やビジョンに基づいて明確にし、実現していきます。
キャリアプランやキャリアパスとの違い
キャリアデザインと似た言葉に、「キャリアプラン」や「キャリアパス」があります。
キャリアプランとは「自分の人生において、どのような仕事をして、どのようなキャリアを築きたいのか」といった、理想のキャリアを実現するまでの具体的な計画のことです。
一方、キャリアパスとは企業内の昇進や目標ポジションなど、「従業員がどのようにキャリアを積んでいくのか」といった具体的な道筋を示したものです。
項目 | キャリアプラン | キャリアパス |
主体 | 個人 | 企業 |
期間 | 長期的な視点 | 短期~中期的視点 |
具体的な内容 | キャリアの目標、実現のための計画 | 昇進・異動など具体的な道筋 |
キャリアデザインやキャリアプランは企業内だけでなく、プライベートも含めたキャリアに関することで、キャリアパスはその企業内に関するキャリアになります。
2. キャリアデザインの重要性
昨今の変化の激しい時代において、キャリアデザインは、自分の人生を主体的に進めるうえで、非常に重要です。そこで、キャリアデザインの重要性と目的を具体的に解説します。
個人にとってキャリアデザインが重要な理由
個人にとってキャリアデザインが重要な理由を3つご紹介します。
自分らしい人生を歩むため
キャリアデザインをとおして、自分の価値観、強み、弱みを理解し、本当にやりたいこと、目指す未来を明確にできます。これは、単なる仕事選びではなく、自分の人生を主体的にデザインし、満足度高く生きるための羅針盤となります。
変化の激しい時代を生き抜くため
近年、終身雇用制度を前提とした年功序列制度が変化しています。
同じ会社で働き続けることや、年功を重ねるだけで昇進・昇給することが難しく、成果主義に移行しつつあるため、個人が自身のキャリアを主体的に設計していく必要性が高まっています。
また、グローバル化や技術革新など、現代社会は変化のスピードが速く、過去のキャリアパスが通用しないケースも増えています。
従来のように、会社や上司によってキャリアを決められるのではなく、自ら将来のビジョンを明確化し、必要なスキルや経験を積むことが重要ということです。
仕事に対するモチベーションを高めるため
自分のキャリアパスを明確化し、目標を達成するために必要なスキルや経験を把握することで、仕事への目的意識や意欲が高まります。
そして、キャリアデザインをとおして、自分の成長を日々実感できれば、仕事に対するモチベーションも高まるということです。目標達成に向けて努力する過程で、スキルアップや自己成長も促進されるでしょう。
企業にとってキャリアデザインが重要な理由
キャリアデザインは従業員個人のこととして考えられがちですが、実は企業側も従業員のキャリアデザインを理解し、支援することは重要です。
企業にとって、キャリアデザインが重要な理由を3つご紹介します。
従業員の成長を促進するため
キャリアデザインがしっかりと描かれている従業員は、自身のキャリアについて深く考え、主体的に行動できるため、能力向上への意欲が高まります。
その結果、高い成果をあげることが多く、会社にとって大きな戦力となるだけでなく、将来のリーダー候補を育成するうえでも大きな役割を果たします。
従業員一人ひとりの成長を支援することで、企業全体の競争力を高められるのです。
人材の流動性と多様な人材の確保をするため
従業員のキャリアデザイン支援は、人材の流動性が高まっている現代において、優秀な人材の確保と定着を図るうえで重要になります。
近年は転職が一般的になったことで、企業は常に優秀な人材を獲得し、その能力を最大限に発揮できる環境を提供することが求められています。
このような状況においては、従業員一人ひとりのキャリアプランを理解し、その実現をサポートすることが大切です。従業員のエンゲージメントや帰属意識を高めることになり、結果として離職防止や多様な人材の確保につながるということです。
社員のモチベーションを向上させるため
キャリアデザインを構築することで、目標達成に向けた具体的な行動が見えてきます。
必要なスキルや能力を身につけられるように行動計画を立て、実行することで、着実に目標に近づいている実感を得られるため、モチベーション向上につながります。
3. キャリアデザインの考え方
キャリアデザインの意味や重要性を理解したところで、次は具体的な実践方法について考えていきましょう。
誰でも無理なくキャリアデザインを進められるよう、6ステップでご紹介します。
【ステップ1】自分の価値観、強み、弱みを分析する
キャリアデザインの土台となるのが、徹底的な自己分析です。自分の価値観、強み、弱みを理解することが重要です。
価値観とは、人生において大切にしたいこと、優先したいことなど、いわばあなたの行動の指針となるものです。仕事とプライベートのバランス、社会貢献、安定収入など、人によって価値観は異なります。
一方、強みとは、あなたが自然に発揮できる能力や持ち味のことです。コミュニケーション能力、企画力、継続力など、あなたの強みがどのような場面で発揮されてきたかを分析しましょう。
そして、弱みとは、あなたの苦手分野や改善点のことです。例えば、プレッシャーに弱い、計画性が欠如しているなどが挙げられます。
【ステップ2】将来の理想像を描く
キャリアデザインにおいて将来の理想像を描くことは、自分のなりたい姿を具体的にイメージすることです。目標達成へのモチベーションを高めるうえで非常に重要になります。
「どのような仕事に就きたいか、働き方をしたいか」「希望のライフスタイルの送り方」など、仕事とプライベートの両面から、5年後、10年後、あるいはそれ以上の将来にどうなっていたいかを具体的に想像しましょう。
例えば、以下のような表を用いて、それぞれの項目を具体的に書き出してみると整理しやすくなります。
年数 | 仕事 | 働き方 | ライフスタイル |
5年後 | Webマーケターとして、企業の売上向上に貢献する | テレワークを導入し、柔軟な時間で働く | 平日は仕事に集中し、週末は趣味の旅行を楽しむ |
10年後 | Webマーケティングの専門家として、独立して活躍する | 自分自身で仕事量を調整し、自由な働き方を実現 | 世界中を旅しながら、好きな場所で仕事をする |
このように、将来の理想像を具体的に描くことで、次に説明する「理想と現実のギャップの分析」を進めやすくなります。
【ステップ3】理想と現実のギャップを分析する
ここまでで、自分の価値観、強み、弱み、そして将来の理想像が明らかになりました。 ここでは、Webマーケターとしてデータ分析に基づいた戦略を立案し、企業の成長に貢献したいという理想像を描いたとします。
次は、その理想と現実の間にどのようなギャップがあるのかを分析します。
例えば、Webマーケティングの知識や経験が不足している、データ分析ツールを使いこなせない、といったギャップがあるかもしれません。
項目 | 理想 | 現状 | ギャップ |
専門知識・スキル | Webマーケティング、データ分析 | 基礎知識のみ | 実践的な知識やスキルの習得 |
実務経験 | Webマーケティング業務経験 | 実務経験なし | インターンなどで実務を行い、経験値を積む |
このように、理想と現実のギャップを明確にすることで、次にどのような行動を起こすべきかが見えてきます。
【ステップ4】具体的な行動計画を立てる
理想のWebマーケターのキャリアを実現するためには、具体的な行動計画を立て、行動することが重要です。
行動計画を立てる際には、以下の表を参考に、いつ、どのような行動をとるのかを具体的に落とし込んでいきましょう。
いつまでに | 行動内容 | 手続き・対応 |
2025年3月末まで | Google アナリティクスの資格取得 | 受験申し込み |
2025年12月末まで | SEO対策のオンライン講座を受講 | 講座申し込み |
2026年3月末まで | Webマーケティング企業でのインターン | 求人サイト確認 |
2026年12月末まで | ポートフォリオ作成 | 制作開始 |
【ステップ5】行動計画を実行に移す
いよいよ行動計画を実行に移していきます。ただし、計画はあくまでも計画になるため、状況に合わせて柔軟に対応しながら進めることが重要です。
例えば、当初はWebマーケティングの専門性を深めたいと考えていたとしても、実際に仕事をしていくなかでデータ分析に興味を持つようになったり、デザインスキルを活かしたいと感じたりする可能性があります。
このような変化に柔軟に対応することで、より自分らしいキャリアを築けるでしょう。
【ステップ6】定期的に振り返り、修正する
キャリアデザインは、一度立てた計画をそのまま実行すればいいというものではありません。なぜなら、自分の置かれている状況や社会の動向は常に変化していくからです。
そこで重要になるのが、定期的な振り返りです。
計画通りに進んでいるのか、計画に修正が必要なのかを定期的に振り返ることで、キャリアをより理想的な方向へ導けます。
振り返りのタイミングは、3カ月ごとや半年ごとなど、ご自身の状況に合わせて設定します。
その際、以下の項目を参考に振り返りましょう。
項目 | 内容 |
目標の進捗状況 | キャリアプランで設定した目標に対して、どの程度進捗しているかを把握する |
行動計画の見直し | 現状に合わなくなった計画があれば、修正や新しい行動計画を立案する |
周囲の環境の変化 | 結婚や出産、転職など、自身のキャリアに影響を与えるような変化がないか確認する |
スキルや経験、資格の棚卸し | キャリアプランの実現のために、新たに必要なスキルや経験、資格がないか確認する |
キャリアプランの再検討 | これまでの振り返りを踏まえ、現在のキャリアプランを見直す必要があるかを検討する |
4. キャリアデザインの例文
20代、30代、40代別にキャリアデザインの例文をご紹介します。
20代のキャリアデザインの例文
20代は社会人としての基礎を築き、さまざまな経験をとおして自身のキャリアを形成していく時期です。
年齢 | キャリアステージ | キャリアデザインの例 |
22歳 | 社会人1年目 | 営業事務として3年間、ビジネスマナーや顧客対応、営業の基礎知識を身につける。その後、営業企画への異動を希望し、マーケティングや企画立案のスキルを習得する |
25歳 | 社会人4年目 | 営業企画として2年間、経験を積んだあと、さらに専門性を高めるためにマーケティング部に異動。市場調査や分析、新製品開発などに携わる |
28歳 | 社会人7年目 | これまでの経験を活かし、新規事業の立ち上げに携わりたい。将来的には、マネジメントにも挑戦し、チームを率いて目標達成を目指す |
このように、20代からキャリアデザインを意識することで、自身のキャリアパスを明確化し、具体的な行動目標を立てられます。
30代のキャリアデザインの例文
30代になり、これまで培ってきたスキルや経験を活かして、新たな挑戦をしたいと考えている人もいるでしょう。30代でキャリアチェンジを考える例文をご紹介します。
年齢 | キャリアステージ | キャリアデザインの例 |
30歳 | Webマーケターとして5年間経験を積み、スキルを高く評価されている | 長時間労働が常態化しているため、労働時間削減や業務効率化を提案する。または、ワークライフバランスを重視できる企業への転職活動を開始する |
33歳 | ライフイベントの変化に伴い、より柔軟な働き方が必要になる | フリーランスとして独立し、自分のペースで仕事とプライベートを両立させる。または、ワークライフバランスが整った企業へ転職する |
35歳 | フリーランスのWebマーケターとして2年間活動した場合 | 企業と業務委託契約を結ぶなど、より安定した収入源を確保する。または、Webマーケターのスキルを活かせる企業に就職する |
40代のキャリアデザインの例文
40代になると、20代や30代の頃と比較して、キャリアプランの内容も変わってきます。40代は管理職に昇進したり、部下を育成したりする立場になることが多い年代です。
そのため、キャリアプランも、自分がどのような立場で、どのような役割を担っていきたいのかなどを明確にする必要があります。
例えば、以下のようなキャリアデザインが考えられます。
年齢 | キャリアステージ | キャリアデザイン |
40歳 | これまでの経験を活かし、管理職への昇進を目指す | 実績を活かし、マネージャーに昇進。部下の育成やチーム全体の売上目標達成などに貢献する |
43歳 | 組織全体のマネジメントなど、責任ある立場を任されることが多い | 部下を育成しながら、目標達成に導くために、マネジメントスキルやリーダーシップを身につける |
45歳 | セカンドキャリアを見据える | 自身のスキルや経験を棚卸し、セカンドキャリアの準備を始める |
5. 企業が行うキャリアデザイン支援
近年では、企業が従業員のキャリアデザインを支援する動きが活発化しています。具体的には、以下のような制度や取り組みをとおして、従業員の能力開発やキャリア形成をサポートしています。
社内研修制度
企業は社員のキャリアデザインを支援するために、さまざまな取り組みを行っています。そのなかでも、多くの企業で導入されている代表的な取り組みが「社内研修制度」です。
社内研修制度とは、企業が社員に対して、業務に必要な知識やスキルを習得させるために実施する研修のことです。具体的には、次のような研修があります。
研修内容 | 説明 |
階層別研修 | 新入社員研修、中堅社員研修、管理職研修など、社員の階層に応じて実施される研修 |
職種別研修 | 営業研修、技術研修、事務研修など、社員の職種に応じて実施される研修 |
テーマ別研修 | コミュニケーション研修、リーダーシップ研修、ハラスメント研修など、特定のテーマに沿って実施される研修 |
これらの研修を通して、社員は自身のキャリアプラン達成に必要なスキルや知識を身につけられます。
キャリア面談
近年、多くの企業で導入されているのがキャリア面談です。キャリア面談とは、社員が自身のキャリアプランについて上司や人事担当者と話し合う場になります。
項目 | 内容 |
目的 | 社員のキャリア形成支援、企業の成長戦略との整合性確保 |
参加者 | 社員、上司、人事担当者 |
頻度 | 企業や制度により異なる(例:年1回など) |
主な内容 | ・キャリア目標の設定 ・現状の課題やキャリアの悩み相談 ・スキルアップや自己啓発の計画 ・必要な研修や教育プログラムの情報共有など |
企業は、社員の希望や能力を把握し、適切な育成や配置することで、社員のモチベーション向上や企業の競争力強化を目指します。
キャリア相談窓口
企業によっては、従業員のキャリアに関する悩みや相談に対応する「キャリア相談窓口」を設けている場合もあります。
窓口担当者には、豊富な経験と専門知識を持つキャリアアドバイザーなどが配置されていることが多く、従業員は自分のキャリアについて気軽に相談できます。
自己啓発支援
自己啓発支援は、社員一人ひとりの主体性を重視したキャリア形成を促進するうえで重要な役割があります。
自己啓発支援とは、社員が自らのキャリア目標を達成するために必要なスキルや知識を習得するための費用などを、企業が補助する制度です。
自己啓発支援をとおして、社員は必要な知識やスキルを身につけられるため、自身の市場価値を高められます。
目標管理制度
目標管理制度とは、企業が従業員一人ひとりと個別の目標を設定し、その達成度合いを評価する制度です。
従業員は、自身のキャリアプランやスキルアップ目標を上司と共有し、具体的な行動計画に落とし込みます。定期的な進捗確認やフィードバックをつうじて、目標達成をサポートするとともに、従業員の成長を促進します。
6. まとめ
現代社会において、キャリアデザインは自分らしい人生を歩むうえで非常に重要です。
自身の価値観や強みを理解し将来のビジョンを明確にすることで、主体的にキャリアを形成でき、変化の激しい時代にも対応できる柔軟な人材へと成長できます。
この記事では、キャリアデザインの意味や重要性、具体的な進め方について解説しました。人生100年時代といわれる現代、長いようで短い社会人生活を充実させるためには、早いうちからキャリアデザインについて考え、行動していくことが大切になります。