リスキリングで活用できる!個人が使える補助金・助成金まとめ
最終更新日:2024.08.14
リスキリングとは、従来のスキルや知識をアップデートしたり、新しい分野のスキルや知識を習得したりすることです。
変化する社会やビジネスのニーズに対応し、自身のキャリアをよりよい方向へ導くための取り組みになります。
この記事では、個人が活用できる補助金・助成金制度について解説しています。
リスキリングに興味があり、費用を補助してくれる制度を探しているという人に、ぜひご覧いただけると幸いです。
※今回ご紹介する補助金・助成金は、いずれも2024年8月時点で申請可能なものをまとめています。補助金・助成金を利用する場合は、申請時期や給付金額を事前に確認してください。
リスキリングとは
近年、ビジネスの世界では「リスキリング」という言葉が注目されています。
そこで、リスキリングの定義と目的、リカレント教育との違いをご紹介します。
リスキリングの定義と目的
リスキリングとは、既存のスキルや知識をアップデートしたり、新たな分野のスキルや知識を習得したりする取り組みです。
経済産業省では、リスキリングを以下のように定義しています。
「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」
引用:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流― p.6|経済産業省
近年、社会やテクノロジーの進化によって、労働市場は常に変化しており、従来のスキルだけでは対応できない状況が生まれています。
とくにAIやIoT、ビッグデータなど、新たな技術を活用した業務が求められるようになり、従来の知識やスキルだけでは対応できないケースが増加しているのです。
このような変化に対応していくためには、個人が自身のスキルを磨き続けることが重要になっており、その取り組みとしてリスキリングが注目されています。
リカレント教育との違い
リスキリングはリカレント教育と混同されがちですが、両者には違いがあります。
リカレント教育とは、学校教育を修了し、企業などで就労している社会人が、スキルアップやキャリアアップを目的に「学びと就労を繰り返すこと」を意味しています。多くの場合は、一度企業を離れて教育機関などに通い、学び直しています。
一方、リスキリングは就労し続けながら、必要とされるスキルをアップデートしたり、新しいスキルを身につけたりする取り組みです。
個人のリスキリングを支援する補助金・助成金一覧
国や地方自治体では、個人がリスキリングによってスキルアップやキャリアアップを目指せるよう、さまざまな補助金・助成金制度を設けています。
なお、企業向けの補助金・助成金に関しては、こちらの記事で紹介しています。
https://reskilling.com/article/8/
教育訓練給付制度
教育訓練給付制度とは、個人のスキルアップやキャリアアップを支援し、雇用の安定と就職の促進を目的とした制度です。
厚生労働大臣が指定する講座を受講し、修了した場合に受講費用の一部が支給されます。
教育訓練給付を受けるには、雇用保険の加入条件などがありますが、正社員だけでなくパートやアルバイト、派遣社員なども給付対象です。
なお、給付金の対象となる教育訓練は、3つの種類に分けられます。
教育訓練の種類 | 内容 | 対象となる講座・資格の例 | 給付額 |
一般教育訓練 | 雇用の安定や就職促進に役立つスキルを習得するための講座 | ・日商簿記
・TOEIC ・司書 ・大学院 |
受講費用の20%(上限10万円) |
特定一般教育訓練 | 速やかな再就職や早期のキャリア形成に役立つスキルを習得するための講座 | ・社会保険労務士
・中小企業診断士 ・行政書士 ・税理士 |
受講費用の40%(上限20万円) |
専門実践教育訓練 | 中長期的なキャリア形成に役立つスキルを習得するための講座 | ・ITスキル関係
・各種専門学校 ・介護福祉士 ・看護師 |
受講費用の70%(年間上限56万円) |
公式Webサイト:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業とは、在職者が新たなスキル習得やキャリアアップを目指せるようサポートする制度です。
経済産業省の主導により、2023年3月より開始した制度になります。
特徴は、個人の状況や希望に合わせたキャリア相談から、リスキリング講座の受講、そして転職活動の支援までを一貫してサポートしてくれる点です。
補助金の支給条件 | 補助金の支給額 |
リスキリング講座を受講し、修了した場合 | 講座の受講費用の1/2相当額(上限40万円) |
リスキリング講座を受講し、実際に転職してから1年間継続的に転職先に就業している場合 | 追加的に講座の受講費用の1/5相当額(上限16万円) |
なお、キャリア相談や転職支援は無料で受けられます。
転職を考えている人にとっては、専門家のサポートを受けながら、スムーズにキャリアアップを目指せる点が大きなメリットといえるでしょう。
公式Webサイト:
https://careerup.reskilling.go.jp/worker/
母子(父子)家庭自立支援給付金
母子家庭の母、または父子家庭の父の経済的な自立を支援する制度です。自立のために必要な資格取得やスキルアップを目指す場合に給付金が支給されます。
この給付金は、「自立支援教育訓練給付金」と「高等職業訓練促進給付金」の2種類があります。
公式Webサイト:
https://www.cfa.go.jp/policies/hitori-oya/jiritsu-shien-kyuufukin
自立支援教育訓練給付金
自立支援教育訓練給付金の対象者は、20歳未満の子どもを扶養しているうえで、以下の2つの条件を満たす人になります。
- 児童扶養手当受給者または同等の所得水準にあること
- 対象者の資格やスキルを考慮したうえで、適職に就くには教育訓練の受講が必要と認められたもの
給付金の支給額は、以下の表にまとめました。
給付金の支給条件 | 給付金の支給額 |
一般、または特定一般教育訓練給付金の支給を受けられない人 | 対象講座の受講料の6割相当額(上限20万円) |
専門実践教育訓練給付金の支給を受けられない人 | 修業年数×40万円(上限160万円) |
なお、本給付金は各自治体への事前申請が必要です。自治体によって制度や手続きが異なるため、事前にお住まいの自治体へご確認ください。
高等職業訓練促進給付金
高等職業訓練促進給付金の対象者は、20歳未満の子どもを扶養しているうえで、以下の3つの条件を満たす人になります。
- 児童扶養手当受給者または同等の所得水準にあること
- 修業年数が6カ月以上の養成期間において、対象資格の取得が見込まれる
- 就業、または育児と修業の両立が難しい
給付金の支給額は、以下の表にまとめました。
給付金の支給条件 | 給付金の支給額 |
住民税非課税世帯 | 月額10万円
(修業期間の最終学年は月額4万円加算) |
住民税課税世帯 | 月額7.5万円
(修業期間の最終学年は月額4万円加算) |
※給付期間は修業全期間(上限4年)
また、修業後には、修了支援給付金として一時金が支給されます。
一時金の支給条件 | 給付金の支給額 |
住民税非課税世帯 | 5万円 |
住民税課税世帯 | 2.5万円 |
なお、本給付金は各自治体への事前申請が必要です。自治体によって制度や手続きが異なるため、事前にお住まいの自治体へご確認ください。
公式Webサイト:
https://www.cfa.go.jp/policies/hitori-oya/jiritsu-shien-kyuufukin
自治体の補助金・助成金
都道府県や市町村などの自治体では、リスキリングを促進するための独自の補助金や助成金制度を設けている場合があります。
ここでは、各自治体が実施している、補助金や助成金をご紹介します。
短期集中型資格取得支援訓練事業|東京都
東京都では都内に在住している求職中の人や、都内在住または都内在勤の非正規雇用の人を対象に、短期集中型の職業訓練を実施しています。
この事業の特徴は、eラーニングと宿泊を伴う集合型講習を組み合わせている点です。
eラーニングで基礎を学び、試験直前期に実施される集合型講習で集中的に学習することで、短期間での資格取得を目指します。
受講料や宿泊費は無料、eラーニング期間中のメンターによるフォローアップやPC・Wi-Fiルーターの無料貸与など、手厚いサポート体制が魅力です。
2つの学習をとおして、ウェブデザイン技能検定3級やITパスポート試験、宅地建物取引士資格試験、3級ファイナンシャル・プランニング技能検定の合格などを目指します。
公式Webサイト:
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/kyushokusha-kunren/etc/shikaku/index.html
金沢市大学連携リスキリング促進助成金|石川県
石川県金沢市では、市内に居住している人、または市内企業で働く従業員のリスキリングを支援する「金沢市大学連携リスキリング促進助成金」を設けています。
この制度は、金沢市内の大学(金沢大学や金沢工業大学など8高等教育機関)と連携し、高度な知識やスキルを習得するための受講料の一部を助成するものです。
助成金は、入学料と受講料の2分の1(上限2万円)になります。
公式Webサイト:
https://www4.city.kanazawa.lg.jp/soshikikarasagasu/chiikiryokusaiseika/gyomuannai/1/24788.html
ものづくりDX人材育成リスキリング事業|岐阜県
岐阜県では、製造業のデジタル化を推進し、DX人材を育成・確保するために「ものづくりDX人材育成リスキリング事業」を実施しています。
この事業は、県内企業への求職者だけでなく、従業員として働きながらスキルアップを目指す人も対象になります。そのため、給与を受け取りながら、自身のスキルアップを図ったり、キャリアアップを目指せたりする点が魅力です。
訓練では、デジタル技術を活用した業務効率化、プログラミング、ロボットシステムによる自動化などの実践的なスキルを習得できます。
公式Webサイト:
https://www.pref.gifu.lg.jp/site/pressrelease/305022.html
大阪府スキルアップ支援金|大阪府
大阪府では、国の教育訓練給付制度の対象とならない府民を対象に、就職やリスキリングのための資格取得講座の受講費用を支援しています。
支援額は、受講する講座の目標資格などによって異なり、以下の表のとおりです。
区分 | 支給額 |
指定教育訓練の目標資格などが建設業、またはトラック・バス・タクシードライバー(2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用となる事業・業務)に関するもの | 指定教育訓練の受講のために支払った費用の合計額の4分の3の範囲内 |
上記以外 | 教育訓練経費の合計額の2分の1かつ20万円の範囲内 |
支援金の申請は、原則としてオンラインで受け付けており、申請期限などの詳細は、公式Webサイトをご確認ください。
公式Webサイト:
https://www.pref.osaka.lg.jp/o110100/koyotaisaku/skillup2/index.html
広島県未来チャレンジ資金|広島県
広島県では、イノベーション人材の育成を目的として、「広島県未来チャレンジ資金」制度を設けています。
この制度は、大学院等専門課程でイノベーション創出に必要な高度な知識を身につけ、将来的に県内企業で働きたい人を対象に、修学資金を無利子で貸し付けます。
さらに、大学院等専門課程修了後9年間のうち8年間以上、広島県内企業などで就業した場合、貸付金の返還が全額免除されます。
貸付限度額は国内の場合、月額10万円(最大360万円)、国外の場合、月額20万円(最大720万円)です。
公式Webサイト:
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/72/challenge-koubo.html
リスキリング補助金の活用をおすすめする人3選
リスキリング補助金は、さまざまな立場の人にとって有効な支援制度です。とくに以下の3タイプの人々には、積極的な活用をおすすめします。
- キャリアチェンジを考えている方
- スキルアップを目指す社会人
- 再就職を考えている人
順にご紹介します。
キャリアチェンジを考えている人
現在の職業に将来性を感じられない、または新たな分野にチャレンジしたいと考えている人に、リスキリング補助金はおすすめです。
たとえば、ITやAIスキルを学べるスクールは高額になりやすいため、リスキリング補助金を活用すれば経済的な負担をおさえられ、安心してスキルアップを目指せます。
スキルアップを目指す社会人
現在の仕事を続けながら、より高度な専門性を身につけたい人にも、リスキリング補助金は大きな助けになります。
たとえば、最新のプログラミング言語やデータ分析スキルを習得したいと考えている場合、高額な専門学校やオンライン学習サービスの受講費用の負担をおさえられます。
これにより経済的な不安もおさえられ、自信を持ってスキルアップに取り組めるため、モチベーションの向上にもつながるでしょう。
再就職を考えている人
育児や介護などで一度離職し、再び就職を目指す人にとってもリスキリング補助金は強い味方になります。
たとえば、以下のような人はリスキリング補助金を活用することで、経済的負担をおさえながら、再就職に有利なスキルを習得できます。
- 子育てが一段落した主婦(夫)
- 介護離職からの復帰を考えている人
- 長期失業状態からの再就職希望者
自身のキャリアプランに合わせて、最適な補助金制度を選択し、積極的に活用することをおすすめします。
まとめ
リスキリングは、個人のキャリアアップや転職、再就職を支援する重要な手段となっています。
とくに、キャリアチェンジを考えている人やスキルアップを目指す社会人、再就職を考えている人はリスキリングがおすすめです。
これらの制度は経済的な不安を軽減し、自信を持ってスキルアップや転職活動に取り組めるようになるため、ぜひ自分に合った制度を活用してみましょう。