マネジメントスキルとは?具体的なスキルや習得・向上の方法を解説

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最終更新日:2024.09.23

マネジメントスキルとは マネジメントスキルとは、「チームをまとめ、目標達成に導くスキル」のこと マネジメントスキルを構成する10のスキル: 目標設定力 問題解決能力 評価力 意志決定力 プロジェクト管理力 フィードバック力 コミュニケーション能力 モチベーション管理能力 傾聴力 業種・職種に対する専門知識 マネジメント能力を伸ばす方法: 01 読書で学ぶ 02 セミナーを受講する 03 実践を通して学ぶ 04 優れたリーダーを観察する 05 自己分析を行う 06 フィードバックを受ける

組織の成熟や企業の成長で大きな鍵を握るスキルが「マネジメントスキル」です。

この記事では、企業や個人の目標を達成するうえで必要なマネジメントスキルを具体的に解説しつつ、その習得・向上の方法をご紹介します。

目次 非表示

1. マネジメントスキルとは?

マネジメントスキルとはどのようなスキルなのでしょうか? よく似た言葉である「リーダーシップ」との違いと合わせて解説します。

(1)チームをまとめ、目標達成に導くスキル

マネジメントスキルとは、一言で言えば「チームをまとめ、目標達成に導くスキル」のことです

チームには、それぞれ異なる個性やスキルを持ったメンバーが集まっています。マネジメントスキルは、これらの多様なメンバー一人ひとりの能力を最大限に引き出し、チームとして共通の目標を達成するために必要なものなのです。

目標設定や実行計画の立案、メンバーとの円滑なコミュニケーションやモチベーション管理、そして評価など……。こうした多種多様なスキルを効果的に活用して、チーム全体のパフォーマンスを向上させ目標達成へと導くのです。

(2)リーダーシップとの違い

マネジメントスキルと混同されやすい言葉に「リーダーシップ」があります。どちらも組織をまとめ、目標達成に導く上で重要なスキルですが、そのアプローチ方法や役割には違いがあります。

以下の表に、リーダーシップとマネジメントの違いをまとめました。

リーダーシップ マネジメント
目標達成への役割 メンバー一人ひとりの自発的な行動を促し、組織を正しい方向へと導く 目標やビジョンの達成に向けて、有効かつ効率的な方法や手段を模索すると同時に、組織としての活動を維持・促進できるように管理する
必要とされる場面 新たな事業やプロジェクト開始時など、メンバーに方向性を示し、不安を取り除く必要がある場合 組織やチームとして目指すべき方向性が明確に定まった後、その目標を確実に達成したい場合
求められる視点 組織をどう変革していくか、そのための人材育成など、中長期的な視点 組織の目標を達成するために必要な人材育成プラン、経営資源の配分、組織の維持・調整など、長期的な視点と短期的な視点の両方
影響要因 リーダーの人格や考え方、価値観、行動、成果など リーダーの個性にも左右されるが、どちらかというと組織の目標やビジョン、戦略、文化、システムなど

このように、リーダーシップとはメンバーを鼓舞し、新たな方向へ導く力であるのに対し、マネジメントは目標達成のために組織を管理し、運営していく力と言えます。

2. マネジメントスキルが重要な理由

組織において、目標を達成し、成果を上げるためには、マネジメントスキルが非常に重要です。

それは、マネジメントスキルがヒト・モノ・カネといった経営資源を最大限に活用し、組織を成功に導くためのカギとなるからです

マネジメントスキルが重要な理由としては、具体的に以下の点が挙げられます。

①チームの生産性向上

優れたマネジメントスキルを持つリーダーは、メンバーの強みを見出し、適切な役割分担や目標設定を行います。それにより、チーム全体のモチベーションと生産性を向上させることができます。

②組織目標の達成

組織目標を達成するためには、個々の目標と整合性をとり、全体を効率的に推進していく必要があります。マネジメントスキルは、このプロセスを円滑に進めるために不可欠です。

③メンバーの育成

マネジメントスキルは、メンバーの育成にも大きく貢献します。適切な指導やフィードバックを与えることで、メンバーの能力を引き出し、成長を促進することができます。

④組織全体の活性化

優れたマネジメントが行われる組織は、風通しが良く、活気に満ち溢れています。メンバー一人ひとりが自分の役割に責任とやりがいを感じ、積極的に行動することで、組織全体の活性化に繋がります。

このように、マネジメントスキルは、組織やメンバーの成長にとって、非常に重要な要素と言えるでしょう。

3. マネジメントスキルを構成する10のスキル

マネジメントスキルは、大きく分けて10の構成要素に分類されます。それぞれの要素が、チームを成功に導くために重要な役割を果たします。

  • 目標設定力
  • 意志決定力
  • コミュニケーション能力
  • 傾聴力
  • 問題解決能力
  • プロジェクト管理力
  • モチベーション管理能力
  • 業種・職種に対する専門知識
  • 評価力
  • フィードバック力

これらのスキルは、単独で機能するのではなく、互いに関連し合いながら発揮されます。状況に合わせて適切なスキルを組み合わせることで、より効果的にチームをマネジメントすることができます。

(1)目標設定力

目標設定は、チームが向かうべき方向性を明確にし、メンバー全員が共通認識を持って業務に取り組むために不可欠です。このスキルを効果的に発揮するうえで、以下のポイントが必要だと言えます。

ポイント 説明
チームのミッションの理解と共有 組織全体の目標を踏まえ、チームとしての存在意義や役割をメンバー間で深く共有する
部下一人ひとりのスキルと意欲の把握 チームメンバー個々の力量に合った目標を設定する
部下への目標の明確な伝達 設定した目標で得られる成果や目標達成に取り組む意義を、部下に正しく伝える

これらのポイントを踏まえ、チーム全体が目標に対する共通認識を持つことで、チームは最大限のパフォーマンスを発揮できるようになります。

(2)意志決定力

チームをまとめ、目標へと導くためには、状況を的確に判断し、最適な行動を選択する力が必要です。一般的に、チームメンバーは意思決定の権限を持ちません。チームの進むべき方向を決定するのは、マネジメント職の役割です。

適切な意思決定を行うためには、単にチーム内の意見をまとめるだけでは不十分と言えます。会社全体の目標、置かれている状況、そして将来予測などを考慮し、総合的に判断する必要があるのです。

また、予期せぬトラブルや緊急事態が発生した場合、冷静かつ迅速な意思決定が求められます。状況が悪化する前に、損失を最小限に抑えるための、時には困難な決断を下さなければならないケースもあるでしょう。

日頃から情報を収集し、分析する習慣をつけることで、いざという時に適切な判断を下せるように準備しておくことが大切です。

(3)コミュニケーション能力

マネジメント職に求められるコミュニケーション能力として、大きく3つの能力が求められます。

種類 説明
相手に伝える力 自分の考えや意見、指示などを相手に正確に伝える力。論理的に話す力はもちろん、相手に合わせた伝え方をするなど工夫が必要
相手から情報を引き出す力 部下や上司、取引先から必要な情報を引き出す力。相手の状況や気持ちを理解しようと努めながら、適切な質問を投げかけることが重要
相互理解を深める力 一方的に伝えるだけではなく、相手の意見にも耳を傾け、相互理解を深める力。議論を通じて、より良い結論を導き出すために必要

これらのコミュニケーション能力を駆使することで、円滑な人間関係を築き、組織目標達成へと導きます。

(4)傾聴力

傾聴とは、ただ単に相手の言葉を聞くだけでなく、相手の立場に立って心から理解しようと努める姿勢を指します。

部下は、自分の話を聞いてもらえていると感じると、安心して仕事に取り組むことができます。逆に、上司が自分の話を聞いてくれないと感じると、モチベーションが低下して仕事のパフォーマンスにも悪影響を及ぼす可能性があります。

効果的な傾聴を行うためのポイントは以下の通りです。

傾聴力を高めるポイント 説明
相手に集中する 目線や体の向きを相手に合わせ、相槌を打ちながら、相手の言葉に集中する
先入観を持たずに聞く 頭の中で結論を急がず、相手の話を最後まで丁寧に聞き取る
質問を効果的に使う 相手の真意を理解するために、適宜質問を挟みながら話を聞き進める
非言語的なメッセージにも注意を払う 表情や声のトーン、身振り手振りなど、言葉以外の情報にも意識を向ける

これらのポイントを意識することで、部下との信頼関係を築き、より良いコミュニケーションを図ることができます。

(5)問題解決能力

組織目標を達成する過程で生じる予期せぬ事態に対して、迅速かつ適切に問題解決へと導く力がマネジメント職には求められます。

問題解決能力は、いくつかの段階に分解できます。

段階 内容
問題の定義 表面的な事象だけでなく、根本的な原因を突き止める
情報収集 関係者へのヒアリング、データ分析などを通して、多角的な情報を集める
解決策の立案 費用対効果、実現可能性などを考慮し、最適な解決策を複数提案する
実行計画の作成と実行 具体的な行動計画を立て、関係者と協力しながら実行する
効果測定と改善 実施した解決策の効果を検証し、必要があれば改善策を講じる

各段階において、論理的思考力や分析力、そして状況判断能力などが求められます。アクションを誤ればかえって問題が大きくなってしまうため、問題解決能力はマネジメント職に必須のスキルです。

(6)プロジェクト管理力

プロジェクトの目標設定から、計画立案、実行、進捗管理、そして最終的な成果物の納品まで。プロジェクト全体を統括し、成功に導くプロジェクト管理力もまた、マネジメントスキルを構成する重要な要素のひとつです。

要素 説明
スケジュール管理 プロジェクト全体のスケジュールを作成し、各タスクの進捗状況を把握しながら、遅延が発生した場合の対応などを行う
コスト管理 プロジェクトに必要な費用を見積もり、予算内でプロジェクトを遂行できるように管理する
リスク管理 プロジェクト進行中に起こりうるリスクを事前に洗い出し、発生確率や影響度を評価した上で、対応策を検討する
品質管理 プロジェクトの成果物が、顧客の要求する品質を満たしているかを管理する
コミュニケーション管理 プロジェクト関係者間での情報共有をスムーズに行い、認識齟齬やトラブル発生を予防する
スコープ管理 プロジェクトの範囲(スコープ)を明確化し、当初の計画にはなかった不要な作業が発生しないよう管理する

これらの要素をバランス良く管理することで、プロジェクトを成功に導くことができます。

(7)モチベーション管理能力

チームメンバーが最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、モチベーションを維持・向上させることもマネジメントには必要不可欠です。

モチベーションが低い状態が続くと、仕事のパフォーマンス低下のほか、離職率の増加にも繋がる可能性があります。 一方で、モチベーションが高い状態であれば、次のような効果が期待できます。

  • 高いパフォーマンス
  • 積極的な行動
  • 責任感の向上
  • チームワークの向上
  • 離職率の低下

モチベーション管理には、以下のようなものがあります。

手法 説明
目標設定の共有 チーム全体で目標を共有してメンバー一人ひとりの当事者意識を高める
コミュニケーションの活性化 チームメンバー同士が気軽にコミュニケーションを取れる環境を作る
適切な評価とフィードバック 成果を上げたメンバーや努力しているメンバーを適切に評価し、フィードバックを行う
スキルアップの機会の提供 メンバーが成長を実感できるよう、研修やセミナー受講などスキルアップの機会を提供する
ワークライフバランスの推進 メンバーの心身の健康を維持するために仕事とプライベートのバランスが取れた環境を作る
働きがいのある環境づくり 業務内容や役割の見直し、労働時間の柔軟化など働きがいを感じられる環境を作る

これらの手法を組み合わせながら、チームメンバーそれぞれの状況に合わせてモチベーション管理を行うことが重要です。

(8)業種・職種に対する専門知識

マネジメント業務において、担当する業種・職種に対する専門知識は、業務を円滑に進める上で欠かせません。

なぜなら、専門知識を持つことでメンバーの状況を正確に把握し、適切な指示を出したり、問題解決を図ったりすることができるからです。 また、メンバーからの信頼を得やすくなるというメリットもあります。

例えば、皆さんがIT企業でシステム開発のマネジメント職を務めているとします。

ある日、メンバーから「データベース処理に遅延が発生しており、納期に間に合わない可能性が出てきました」と報告を受けました。このとき、データベースに関する専門知識があれば、状況を正確に把握して適切な指示を出すことができます。

このように、マネージャーが専門知識を持つことがチーム全体のパフォーマンス向上につながるだけでなく、メンバーの育成にも貢献することができます。

(9) 評価力

マネジメントにおいて、部下の成果や能力を正しく評価することは、その後の育成やモチベーションに大きく影響します。評価を伝える際には、客観的なデータや具体的な行動に基づいたフィードバックが重要です。

評価力を高めるためには、以下のポイントを押さえましょう。

評価ポイント 説明
客観性 感情や個人的な好き嫌いを交えず、公平な視点で評価する
具体性 抽象的な表現ではなく、具体的な行動や成果を挙げて評価する
建設性 単なる結果だけでなく、今後の成長に繋がるような具体的なアドバイスや改善点を示す
双方向性 一方的に伝えるのではなく、部下からの意見にも耳を傾け、対話を通して理解を深める
タイムリーさ 評価はタイムリーに行うことで、部下の成長を促進する効果が高まります。

これらのポイントを踏まえ、部下と向き合う時間を持ち、それぞれに最適な評価とフィードバックを行うようにしましょう。

(10)フィードバック力

チームメンバーに対して、現状を正しく認識させ、成長を促すために欠かせないのがフィードバック力です。

フィードバックとは、単に結果に対して評価を伝えることではありません。行動の改善点を具体的に示し、モチベーションを高め、目標達成に導くためのコミュニケーションです。

効果的なフィードバックを行うためには、以下のポイントを意識することが重要です。

項目 説明
具体性 抽象的な意見ではなく、具体的な行動や事実を挙げて伝える
建設性 ネガティブな指摘だけでなく、改善策や今後の期待を伝える
タイミング なるべく早いタイミングでフィードバックを行う
双方向性 相手の意見にも耳を傾け双方向のコミュニケーションを心がける

これらのポイントを踏まえることで、フィードバックはチームメンバーの成長を促進し、チーム全体の成果向上に繋がる有効な手段となるでしょう。

4. マネジメントスキルを習得・向上する方法

マネジメントスキルは、一朝一夕に身につくものではありません。しかし、意識的に努力することで、習得・向上させることが可能です。ここでは、具体的な方法を5つ紹介します。

(1)読書で学ぶ

マネジメントスキルを向上させるための効果的な方法の一つに、読書があります。古今東西のビジネスリーダーたちが試行錯誤してきた経験や、先人たちの思考を体系化したフレームワークを書籍から学ぶことができます。

読書からより多くのことを吸収するためのポイントは以下の点が挙げられます。

  • 自分が目指すリーダー像と近い人物の書籍を選ぶ
  • ハウツー本だけでなく、体系的に学べる古典も読む
  • 本の内容を自分なりに咀嚼し、現場で実践してみる

マネジメントスキルの古典的名著として有名なのは、P.F.ドラッカー著の『マネジメント 【エッセンシャル版】 基本と原則』(上田惇生訳、ダイヤモンド社)が挙げられます。

現場で発生している問題の解決の糸口を探す場合は、実際に成果を出しているリーダーの書籍から具体的な行動を学ぶと良いでしょう。

活字を読むことに慣れていない方は、まずは、図解やイラストが多い書籍を選ぶ、興味のあるテーマに絞って読むなどもおすすめです。自分に合った方法で、読書の習慣を作ってみましょう。

(2)セミナーを受講する

マネジメントスキルを体系的に学びたいと考える方は、マネジメントスキルに関するセミナーの受講がおすすめです。セミナーを受講するメリットとしては、体系的な知識の習得、実践的なスキルの習得、他社のマネージャーとの交流などがあります。

講師や他の受講者とのディスカッションやグループワークを通して、多様な視点や考え方を学ぶことができます。

数あるセミナーの中から自分に合ったものを選ぶポイントは以下の通りです。

選定基準 具体的な内容
目的・レベルに合致しているか ・マネジメント経験の有無や、現時点での課題に合致しているか
・基礎を学びたいのか、応用力を高めたいのか
テーマ・内容 ・自分の興味関心やキャリアプランに合致しているか
・カリキュラムや講師は信頼できるか
受講形式 ・オンラインセミナー、集合研修など、自分のライフスタイルに合った形式か
料金・時間 ・予算や時間に見合っているか
受講後のサポート ・個別相談やフォローアップ体制など、受講後のサポート体制が充実しているか

これらのポイントを参考に、自分に最適なセミナーを選び、積極的に参加してみましょう。

(3)実践を通して学ぶ

マネジメントスキルは、座学で知識を身につけるだけでは不十分。実際にマネジメント業務を通じて経験を積むことで習得できるスキルです。

例えば、日常業務で意図的に次のような挑戦を重ねることで、マネジメントスキルをより向上させることができます。

①新しい業務に挑戦する

新しい業務に挑戦することで、今まで経験したことのない課題に直面し、それを解決するために必要なスキルを身につけることができます。

②複数部署との連携が必要な業務

部署を跨いでのコミュニケーションを通して、調整力や交渉力などを身につけることができます。

③上司の業務のサポートをする

上司の業務を間近で見ることで、上司がどのようなスキルを活用して業務を進めているかを学ぶことができます。また、上司の業務をサポートすることで、上司の視点や考え方などを学ぶこともできます。

④メンバーに仕事を任せる

メンバーに仕事を任せる際には、仕事の目的や目標、進捗状況などを共有し、適切な指示や指導を行う必要があります。また、メンバーの進捗状況や課題などを把握し、必要に応じてサポートを行うことも重要です。

⑤積極的に意見交換を行う

チームメンバーや上司と積極的に意見交換を行うことで、コミュニケーション能力や合意形成能力を高めることができます。また、他の人の意見を聞くことで、自分自身の視野を広げ、新しい視点を得ることもできます。

これらの経験を通して、成功体験だけでなく、失敗から学ぶことも重要です。失敗の原因を分析し、改善策を考えることで、マネジメントスキルを向上させることができます。

(4)優れたリーダーを観察する

マネジメントスキルを習得するには、実際に優れたリーダーを観察し、彼らの行動や考え方から学ぶことが有効です。優れたリーダーを観察する際には、以下の点が参考になります。

【行動面での観察ポイント】

  • メンバーへの指示の出し方
  • 会議での意見のまとめ方
  • 業務における優先順位の付け方

【考え方の観察ポイント】

  • 目標達成のために、どのような戦略を立てているのか
  • メンバーのモチベーションをどのように維持しているのか
  • 問題発生時、どのような対応を取っているのか

上記のような具体的な行動や考え方を観察することで、優れたリーダーが持つマネジメントスキルをより深く理解することができます。

(5)自己分析を行う

自分の強みや弱みを把握することは、効果的なマネジメントスキル習得に欠かせません。

客観的な自己分析を通して、自身の強みを活かせるマネジメントスキルは何か、弱みを克服するために伸ばすべきスキルは何かを明確化します。

例えば、この記事で紹介した10のスキルについて、強みや弱み、伸ばすべきスキルなどをノートにまとめてみましょう。すると、「もっと傾聴力を発揮できるようになれば、チームをまとめやすくなるかもしれない」といった示唆が得られます。

(6)フィードバックを受ける

マネジメントスキル向上には、周囲の人からフィードバックを受けることが有効です。 フィードバックをもらう際には、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

①オープンな姿勢を持つ

フィードバックを求める際は、オープンな態度で臨むことが大切です。批判を恐れずに、建設的な意見を積極的に受け入れる姿勢を示しましょう。

②具体的な質問をする

「先程の会議でのファシリテーションはどうだった?」など、具体的な状況に対して質問をしましょう。これにより、より的確で役立つフィードバックを得られる可能性が高まります。

③相手と信頼関係を築く

日頃からコミュニケーションを取り、良好な関係性を構築しておくことが重要です。信頼関係があれば、相手も率直なフィードバックをしやすくなります。

④適切なタイミングを選ぶ

フィードバックは、できるだけ早いタイミングで求めることが効果的です。時間が経ちすぎると、具体的な状況を思い出しにくくなる可能性があります。

⑤建設的に受け止める

フィードバックを個人攻撃と捉えず、成長の機会として前向きに受け止めることが大切です。相手の意図を理解し、行動の改善に焦点を当てるようにしましょう。

これらのポイントを意識することで、より効果的にフィードバックを受け取り、自己成長につなげることができます。

5. マネジメントスキル向上のために組織は何をすべきか

マネジメントスキルの向上は、個人の努力だけでなく組織による支援体制も重要です。組織として具体的にどのような取り組みが考えられるのか、いくつかの方法をまとめました。

(1)体系的な研修プログラムの提供

組織全体でマネジメントスキル向上に取り組むには、体系的な研修プログラムの提供が有効です。

新任マネージャーの場合、いきなりチームや部下を率いることになり、戸惑いを感じてしまうことも少なくありません。

研修プログラムを通じて、マネジメントに必要な知識やスキルを段階的に習得できれば、スムーズに管理職としての役割を担えるようになります。

研修プログラムの内容は、企業や対象者のレベルによって調整することが望ましいですが、一例として以下のような内容が考えられます。

プログラム例 内容
目標設定と計画立案 チーム目標の設定方法や、目標達成のための計画の立て方などを学ぶ
コミュニケーションとチームビルディング 部下との信頼関係構築や、チームで成果を出すためのコミュニケーション方法などを学ぶ
モチベーション管理とリーダーシップ 部下のモチベーションを高め、チームをまとめながら目標達成に向けて導くためのリーダーシップについて学ぶ
コーチングとフィードバック 部下の成長を支援するためのコーチングスキルや、効果的なフィードバックの仕方を学ぶ
問題解決と意思決定 職場における様々な問題に対して、状況を分析し、適切な解決策を見つけ出し、意思決定を行うスキルを学ぶ
時間管理と業務効率化 限られた時間の中で成果を最大化するための時間管理術や、チーム全体の業務効率を上げるための方法を学ぶ
メンタルヘルス対策 ストレスを抱える部下への対応や、ハラスメント防止など、職場のメンタルヘルス対策に関する知識を深め、適切な対応を取れるようにする
労務管理 労働関係法令などの基礎知識や、適切な労務管理を行うためのスキルを学ぶ
コンプライアンス 企業倫理や法令遵守の重要性を理解し、コンプライアンス違反を防止するための知識を習得する
変化への対応とイノベーション 社会の変化に対応し、組織の成長を続けるための、変化への対応力やイノベーションを促進するための方法を学ぶ

新任マネージャーだけでなく、中堅マネージャーなど階層別に合わせた研修なども有効だと言えます。

(2)メンター制度の導入

組織全体で人材育成を行うためには、体系的なプログラムを構築する必要があります。その中でも、新入社員や若手社員の育成に効果的な方法として、メンター制度が挙げられます

メンター制度とは、年齢や社歴が近い先輩社員が、後輩社員の相談に乗りながら成長をサポートする制度のことです。

上司とは異なる立場で、業務の進め方だけでなく、キャリア形成や職場環境への適応など、多岐にわたる相談に乗ることができる点が特徴です。

メンター制度を導入することで、企業は以下のようなメリットを得られます。

メリット 説明
早期戦力化 若手社員が抱える疑問や不安を解消することで、スムーズな業務習得を促進する
定着率の向上 企業文化や価値観を共有することで、組織へのエンゲージメントを高め、離職率の低下につなげる
企業理念の浸透 メンターを通して企業理念やビジョンを伝えることで、組織全体に浸透させる
コミュニケーション活性化 メンターとメンティの定期的な面談を通じて、部署内外のコミュニケーションを活性化させる
マネジメント人材の育成 次期マネージャー人材の指導力や育成力を向上させる

(3)プロジェクトリーダー経験の提供

マネジメントスキルを向上させるためには、実際の業務を通して学ぶことが非常に効果的です。

しかし、新入社員や若手社員の場合、最初から部下を持ちマネジメント業務に携わることができる機会は少ないでしょう。企業が意図的にプロジェクトリーダーを経験できる機会を設けることで、若いうちからマネジメントスキルを磨くことが重要です。

プロジェクトリーダーの役割を担うことで、目標設定やモチベーション管理など、マネジメントに必要な一連のプロセスを経験できます。実務での経験を通して成功や失敗を繰り返すことで、実践的なスキルを身につけていくことができるのです。

(4)自己啓発支援

会社が社員の成長を支援する制度を設けることは、社員のモチベーション向上やスキルアップだけでなく、企業の成長にもつながります。

中堅社員の自己啓発を支援するにあたって、会社は以下の様な制度を設けることができます。

制度 説明
図書購入補助 業務に関する書籍や自己啓発本の購入費用を会社が一部または全額負担する
研修参加費用補助 外部のセミナーや研修会などへの参加費用を会社が一部または全額負担する
eラーニング受講支援 インターネット上で学べる講座の受講費用を会社が一部または全額負担する
資格取得支援 業務に関連する資格の受験料や教材費、資格取得後の報奨金を会社が一部または全額負担する
副業・兼業の許可 社員のスキルアップや視野拡大を目的として、業務時間外での副業や兼業を認める

これらの制度を導入することで、社員は経済的な負担を軽減しながら、自身の成長に繋がる活動に取り組むことができます。また会社としても、社員のスキルアップやモチベーション向上を通じて、組織全体の活性化や生産性の向上といった効果を期待できます。

(5)キャリア面談の導入

組織全体で体系的に人材育成を行うためには、従業員一人ひとりのキャリアプランを把握して育成につなげることが重要です。キャリア面談とは、上司と部下が定期的に面談を行い、従業員のキャリア目標やキャリアプラン、育成計画などを話し合う場のことです

従来の評価面談とは異なり、従業員一人ひとりのキャリアに焦点を当て、中長期的な視点でキャリア形成を支援することに重点を置いています。キャリア面談を導入するメリットには、以下のようなものがあります。

メリット 説明
モチベーション向上 キャリア目標を共有し、会社が自分のキャリアを支援してくれているという実感を与えられる
人材育成の効率化 従業員のキャリア目標や強みを把握したうえで、適切な人材育成計画を立てられる
優秀な人材の定着 キャリアプランを会社が把握し、実現に向けて支援することで、優秀な人材の定着につながる

6. マネジメントスキル向上に役立つ資格

マネジメントスキル向上に役立つ資格は数多く存在します。ここでは、代表的な資格を5つ紹介します。

(1)PMP

PMPとは「Project Management Professional」の略称で、プロジェクトマネジメントに関する国際資格です。資格の認定・発行を行なっているのはアメリカに本部を置くプロジェクトマネジメント協会(PMI)です。

PMPは「人・プロセス・ビジネス環境」の3分野をもとに、プロジェクトマネジメントを体系的に勉強します。受験資格にも、一定期間にわたり企業のプロジェクトの指揮に携わった経験があることが求められます。

【PMPの受験資格】

  • 4年制大学卒業以上、または同等の資格を持つ場合:プロジェクトマネジメントの経験が3年(36ヶ月)、4,500時間に及ぶプロジェクトを指揮・監督する立場での実務経験を持つこと
  • 高校卒業以上、また同等の資格を持つ場合:プロジェクトマネジメントの経験が5年(60ヶ月)、7,500時間に及ぶプロジェクトを指揮・監督する立場での実務経験を持つこと

日本ではまだ認知度の低いですが、マネジメントスキルのレベルアップを目指す方におすすめの資格です。

(2)ビジネスマネジャー検定試験

ビジネスマネジャー検定試験は、東京商工会議所が主催する検定試験です。企業の第一線で活躍できるマネジメント能力を持つ人材育成を目的としています。

試験は、企業活動やマネジメントに関する知識を問う問題が出題されます。

  • マネジャーの役割と心構え:マネジャーが直面するビジネス環境、マネジャーに求められるミッションと役割、資質、心得など
  • 人と組織のマネジメント:部下・上司・外部とのコミュニケーション、人材育成と評価、組織論など
  • 業務のマネジメント:経営計画や事業計画の策定、効果検証、問題の発見と解決、経営の基礎知識など
  • リスクマネジメント:リスクの考え方、職場・業務にかかわるリスクマネジメントの種類、事故・災害時の対応

ビジネスマネジャー検定試験は、管理職として身につけておくべき知識を網羅的に学べます。キャリアアップにおいても、自身のマネジメントスキルを明示するための武器となるでしょう。

(3)プロジェクトマネージャ試験

「プロジェクトマネージャ試験」は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が主催する国家試験です。この試験は、IT関連のプロジェクトにおけるマネジメントスキルを客観的に評価できる資格として広く認知されています。

試験内容は、テクノロジー(技術)、マネジメント(管理)、ストラテジー(戦略)と大きく3分野で構成されています。IT業界において、自身の技術的な専門知識とマネジメントスキルの両方を証明できる試験です。

(4)メンタルヘルス・マネジメント検定

「メンタルヘルス・マネジメント検定」とは、従業員の心の健康を維持・増進するための知識やスキルを習得することを目的とした検定試験です。

この検定試験には3つのコースがあります。受験者は、それぞれの職場の役割に応じて適切な知識を身につけることができます。

I種(マスターコース)

  • 対象:人事労務管理スタッフ、経営幹部
  • 目的:社内のメンタルヘルス対策の推進
  • 到達目標:自社の人事戦略・方針を踏まえたうえで、メンタルヘルスケア計画、産業保健スタッフや他の専門機関との連携、従業員への教育・研修等に関する企画・立案・実施ができる。
  • 主な出題内容:企業経営におけるメンタルヘルス対策の意義、メンタルヘルスケアの活動領域と人事労務の役割、ストレスとメンタルヘルスの基礎知識、人事労務管理スタッフに求められる能力、メンタルヘルスケアの方針と計画、産業保健スタッフの活用、相談体制の整備、教育研修の実施、職場環境の改善

II種(ラインケアコース)

  • 対象: 管理監督者(管理職)
  • 目的: 部門内、上司としての部下のメンタルヘルス対策の推進
  • 到達目標:部下が不調に陥らないよう普段から配慮するとともに、部下に不調が見受けられた場合には安全配慮義務に則った対応を行うことができる。
  • 主な出題内容:メンタルヘルスケアの意義と管理監督者の役割、ストレスとメンタルヘルスの基礎知識、職場環境の評価と改善方法、労働者への配慮と相談対応、社内外資源との連携、メンタルヘルス不調者の復職支援など

III種(セルフケアコース)

  • 対象: 一般社員
  • 目的: 自身のメンタルヘルス対策の推進
  • 到達目標:自らのストレスの状況・状態を把握することにより、不調に早期に気づき、自らケアを行い、必要であれば助けを求めることができる。
  • 主な出題内容:メンタルヘルスケアの意義、ストレスとメンタルヘルスの基礎知識、セルフケアの重要性、ストレスへの気づき方と対処法、社内外資源の活用など

引用:メンタルヘルス・マネジメント®検定試験とは|大阪商工会議所

(5)中小企業診断士

中小企業診断士は、企業の経営課題を分析し経営改善に向けたアドバイスを行う専門家です。経営戦略、財務管理、マーケティング、人事管理など、企業経営に関する幅広い知識が求められます。

中小企業診断士の資格を取得することで、経営者としての視点や、多角的な問題解決能力を身につけることができます。マネジメントスキルを向上したい方は、取得を検討してみてください。

7. まとめ

マネジメントスキルは、組織の目標達成を成功させるために不可欠な要素です。変化の激しい現代社会において、組織は、あらゆる課題や機会に直面しています。記事で紹介した方法を活用して、ぜひマネジメントスキルの向上を目指してみてください。

記事監修

古今堂 靖

一般社団法人日本リスキリングキャリアコンサルタント協議会 理事長

大学中退後、ホスト、ブライダル司会者、青果市場、旅行添乗員、長距離トラック運転手、警備員、レコード会社勤務等を経て、財団法人関西カウンセリングセンター勤務、心理カウンセラー、キャリアコンサルタント養成の傍ら、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会の立上げに参画して国家検定キャリアコンサルティング技能検定制度の創設に携わる。2024年3月に一般社団法人日本リスキリングキャリアコンサルタント協議会を立上げ、生成AI時代のリスキリングキャリアコンサルタントの養成を開始。