「見直しは必要」7割でも実行は2割未満──生成AI時代の人材育成、管理職研修7.7%の空白をどう埋めるか
最終更新日:2026.10.20
この記事で分かること
- 生成AIで人材育成の見直しが「必要」と答えた人事は56.6〜70.3%、実際に動いたのは15.0〜19.4%という「ギャップ」の中身
- 新人・若手育成で人事の7割前後が抱く4つの懸念と、現場で打てる具体策
- 「管理職向け研修7.7%」の空白を埋める、人事が今期中に着手できる5つのアクション
生成AIが業務に入り込むほど、人材育成の前提は揺らぎます。産業能率大学 総合研究所とHR総研が2026年10月7日に発表した人事実態調査は、その揺らぎに「気づいているが動けていない」企業の姿を数字で示しました。本記事ではこの調査を軸に、リスキリングの視点(知る→使う→任せる)で、人事が何を、どの順で整えるべきかを整理します。
管理職側の課題は 管理職こそリスキリングを─生成AI時代に逆転した「学ぶ側」 でも解説しています。
生成AI時代の人材育成、見直しは進んでいるのか?
結論から言うと、ほとんど進んでいません。人事担当者の79.1%が生成AIは人材育成に影響すると答え、5つのテーマ(能力・スキル、育成方針・体系、育成内容・方法、マネジメントのあり方、制度・運用)すべてで56.6〜70.3%が見直しの必要性を感じています。しかし、実際に見直しや対応を行っているのは15.0〜19.4%、いずれも2割未満です。
調査の概要
調査は産業能率大学 総合研究所とHR総研(ProFuture株式会社)の共同実施で、2026年5月22日〜6月23日にインターネットで行われました。対象は日本企業・組織で人事施策や人材育成に関わる担当者・責任者で、総回収389件のうち、1社1回答に整理した320社が主集計です。
なぜ「必要」と「実行」の間に溝ができるのか?
溝の最大の理由は、技術ではなく「前提の未整理」です。見直しが進まない理由の上位は、「全社として生成AI活用の方向性が明確でない」48.3%、「生成AIで仕事や役割がどう変わるか整理できていない」46.9%でした。一方、「時間・工数を確保できない」は20.8%、「予算を確保できない」17.9%にとどまります。つまり、予算や時間より先に「AIで仕事がどう変わるか」という設計図が足りていません。
この点は 令和8年版 情報通信白書が示した生成AI活用の壁 が指摘した「利用は広がるが組織的取組が追いつかない」構図とも重なります。
どの階層の育成課題が大きいのか?
育成上の課題が大きい階層として最も多く挙がったのは管理職の59.4%で、中堅社員53.1%、経営層39.7%、若手社員32.8%、新入社員31.9%と続きます。新人・若手より、上の階層に課題を感じる人事が多い点が特徴です。
それにもかかわらず、研修の実施状況は逆転しています。生成AIの基礎知識に関する周知・研修は41.2%、利用ルール・留意点は40.9%の企業が実施していますが、情報の真偽や根拠の確認に関する研修は8.9%、管理職向けの活用研修は7.7%にとどまりました。

図の要点:「基礎知識」と「ルール」は約4割が実施済みですが、「真偽・根拠の確認」と「管理職向け」は1割未満です。ルールを知らせる段階は進んでも、AIの出力を見極め、部下を指導する力の育成は手つかずに近い状態です。
新人・若手育成で、人事は何を心配しているのか?
最大の懸念は「本人がどこまで自分で考えたのかを確認しにくい」で、76.2%でした。成果物をAIが整えてくれるほど、考えた過程が見えなくなるという問題です。次いで「上司・先輩の指導にばらつきが出やすい」69.5%、「成果物の内容や妥当性を見極めにくい」68.1%、「上司・先輩と若手の間で活用知識・スキルに差が出やすい」65.8%でした。

表の要点:4つの懸念はすべて65%を超えます。共通する根っこは「若手の問題」ではなく、「確認する側(上司・先輩)の型と力がそろっていない」ことです。
「自分で考えたか」を確認する3つの型
- AIに聞く前に、自分の仮説を3行で書かせる(AI出力との差分が思考の跡になる)
- 成果物には「AIが出した部分」「自分で直した部分」を分けて記録させる
- 1on1では結果ではなく「なぜその結論にしたか」を問う
これらはリスキリングドットコム編集部による実務上の整理であり、調査が推奨した内容ではありません。
人事は現場の活用状況を把握できているのか?
把握できている企業は少数です。人事部門が現場の生成AI活用状況を「十分」「ある程度」把握しているのは29.1%、「あまり」「全く」把握していないのは40.3%でした。一方、回答した人事担当者自身は、ほぼ毎日46.6%、週に数回31.3%と、合計77.9%が生成AIを日常的に使っています。
人事が自分では使いこなしているのに、現場の実態は見えていないという非対称があります。見直しの設計図を描くには、まず現場の使い方を知ることが出発点です。
リスキリングドットコムの見解:見直しは「管理職×確認力」から始める
調査の事実と区別して、編集部の見解を述べます。見直しの優先順位は、全階層を一度に変えることではなく、「管理職」と「確認力」の2点を先に押さえることだと考えます。理由は2つです。
- 調査で課題が最大の階層は管理職(59.4%)なのに、管理職向け研修は7.7%しかない。
- 若手育成の懸念4項目は、いずれも上司・先輩の指導力と確認の型に帰着する。
リスキリングの「知る→使う→任せる」で言えば、管理職が「使う」を経験していないまま、部下に「任せる」を指導することはできません。シャドーAIの実態は 管理職の46.5%が“シャドーAI”、採用より育成の設計は AI採用は+54%でも専任は13% も合わせてご覧ください。
企業が次に行うべきこと:今期中に着手する5つのアクション
- 全社の生成AI活用方針(どの業務で、どこまで任せるか)を1枚にまとめる
- 管理職向けの活用研修を、若手向けより先に設計・実施する
- 情報の真偽・根拠確認を研修に組み込む(現状の実施率は8.9%)
- 新人・若手の「自分で考えた跡」を残す運用ルールを決める
- 人事が現場の活用状況を把握する仕組み(簡易アンケートや1on1での聞き取り)をつくる
なお、研修費用の一部は助成制度の対象になり得ますが、制度の対象要件は改正が続いています。最新状況は リスキリング助成金が2026年8月3日改正 で確認できます。
参考・出典
- 産業能率大学 総合研究所「生成AIと人材育成に関する人事実態調査」(調査報告ページ)
- 新潟日報「「生成AIと人材育成に関する人事実態調査」を発表 学校法人産業能率大学」(プレスリリース掲載)
- 宮崎日日新聞DIGITAL「「生成AIと人材育成に関する人事実態調査」を発表」(プレスリリース掲載)
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公開日:2026年10月19日



