リスキリングに活用できる政府の補助金・給付金などの支援を紹介【10選】

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最終更新日:2024.08.22

リスキリングに活用できる政府の 補助金・給付金などの支援10選 企業向け 人材開発支援助成金 (成長分野等人材確保/育成コース) 特定求職者雇用開発助成金 (成長分野等人材確保/育成コース) 公的職業訓練のデジタル分野の重点化による デジタル推進人材の育成 個人向け 教育訓練給付金 母子(父子)家庭自立支援給付金 キャリアコンサルティング デジタル人材育成プラットフォーム 「マナビDX」 リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 第四次産業革命スキル習得講座認定制度 社会人の大学等での学びを応援するサイト 「マナパス」

急速な技術革新やビジネスモデルの変化に対応するには、従来のスキルや知識をアップデートしたり、新しい分野の知識やスキルを獲得したりする「リスキリング」が重要です。

企業は競争力維持のため、個人はキャリアアップのために、リスキリングは必須といえるでしょう。

しかし、具体的になにをすればよいか悩んでいる企業担当者や、個人は多いのではないでしょうか。

そこで政府は、さまざまな補助金・助成金制度を導入し、リスキリングに取り組む企業や個人を支援しています。

この記事では、リスキリングに活用できる政府の補助金・助成金制度などを10種類厳選し、企業向け・個人向けにわかりやすく解説します。

これらの制度を活用し、リスキリングを成功させましょう。

政府がリスキリングを支援する理由

近年の急速な技術革新やデジタル化によって、新しいスキルが求められるようになり、従来のスキルだけでは対応できない状況が増加していることから、政府はリスキリングを支援するようになりました。

AIやIoTなどの進化により、多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が求められていますが、それを担える人材が不足しています。また、AIやロボットによって代替される仕事も増えることが予想され、新たなスキルへの対応が急務となっているのです。

そこで政府は、個人のリスキリング(学び直し)に「5年で1兆円」投入する方針を掲げ、個人のスキルアップと企業の競争力強化を支援しています(参照:リスキリング支援「5年で1兆円」 岸田首相が所信表明|日本経済新聞)。

企業向けのリスキリング関連補助金・助成金などの支援

企業が従業員のリスキリングに取り組む際に活用できる代表的な補助金・助成金制度を紹介します。

企業はこれらの制度を有効活用することで、従業員のスキルアップにかかる費用負担を軽減し、より効果的に人材育成を進められます。

人材開発支援助成金|厚生労働省

「人材開発支援助成金」は、事業主が従業員に業務に関連した専門知識やスキルを習得させるため、訓練などを実施した場合に受けられる助成金です。

訓練にかかった経費や訓練期間中の賃金の一部などが助成されます。なお、人材開発支援助成金は6コースあるため、目的に合ったいずれかのコースを選択して申請する必要があります。

公式Webサイト:

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

人材育成支援コース

「人材育成支援コース」は、雇用する雇用保険被保険者に対して、以下の訓練を実施した場合、訓練費用や訓練期間中の賃金の一部を助成します。

  • 業務に関連した専門知識やスキルを習得させる訓練
  • 厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練
  • 非正規雇用労働者を対象に、正社員化を目指す訓練

賃金助成額は、受講する訓練などによって異なります。

訓練 賃金助成額(1人1時間当たり) 経費助成率・額 OJT実施助成額(1人1コース当たり)
人材育成訓練 760円(380円)、賃金要件などを満たす場合は960円(480円) ・正社員対象:45%(30%)

・非正規雇用対象:60%

・正社員化した場合:70%

【賃金要件などを満たした場合】

・正社員対象:60%(45%)

・非正規雇用対象:75%

・正社員化した場合:100%

認定実習併用職業訓練 760円(380円)、賃金要件などを満たす場合は960円(480円) 45%(30%)、賃金要件などを満たす場合は60%(45%) 20万円(11万円)、賃金要件を満たす場合は25万円(14万円)
有期実習型訓練 760円(380円)、賃金要件などを満たす場合は960円(480円) ・非正規雇用対象60%

・正社員化した場合:70%

【賃金要件などを満たした場合】

・非正規雇用対象75%

・正社員化した場合:75%(100%)

10万円(9万円)、賃金要件を満たす場合は13万円(12万円)

参考:人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内|厚生労働省

教育訓練休暇等付与コース

「教育訓練休暇等付与コース」は、企業が有給教育訓練休暇制度(3年間で5日以上)を導入し、従業員がその休暇を取得して訓練を受けた場合に助成します。

助成額は30万円、賃金要件などを満たす場合は36万円です。

なお、助成を得るには、事業主以外が行う教育訓練や各種検定、キャリアコンサルティングのいずれかの講座を受講するなどの要件も定められています。

人への投資促進コース

「人への投資促進コース」は、人への投資を加速させるため5つのコースが用意されています。

コース 内容 賃金助成額(1人1時間当たり) 経費助成率・額 OJT実施助成額(1人1コース当たり)
高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練 高度デジタル人材・成長分野人材を育成するための訓練 【高度デジタル人材訓練】

960円(480円)

75%(60%)

【成長分野等人材訓練】

960円

【高度デジタル人材訓練】

75%(60%)

【成長分野等人材訓練】

75%

情報技術分野認定実習併用職業訓練 IT分野未経験者を即戦力化させるための訓練 760円(380円)、賃金要件などを満たす場合は960円(480円) 60%(45%)、賃金要件などを満たす場合は75%(60%) 20万円(11万円)、賃金要件を満たす場合は25万円(14万円)
長期教育訓練休暇等制度 働きながら訓練を受けるための長期休暇制度や短時間勤務制度の導入 【長期教育訓練休暇制度】

960円(760円)、賃金要件を満たす場合は一律960円

【長期教育訓練休暇制度】

20万円、賃金要件を満たす場合は24万円

【教育訓練短時間勤務等制度】

20万円、賃金要件を満たす場合は24万円

自発的職業能力開発訓練 従業員が自発的に受講した訓練費用を負担する企業への助成 45%、賃金要件などを満たす場合は60%
定額制訓練 サブスクリプション型の研修サービスを利用する事業主への助成 60%(45%)、賃金要件などを満たす場合は75%(60%)

※()内は中小企業以外の助成額・助成率

参考:人材開発支援助成金人への投資促進コースのご案内(詳細版)|厚生労働省

事業展開等リスキリング支援コース

「事業展開等リスキリング支援コース」は、企業が新しい事業展開やDX・GXを進めるに伴い、新たな分野で必要なスキルを従業員に習得させた場合に申請できるコースです。訓練期間中の賃金や訓練経費の一部を助成します。

賃金助成金額は1人1時間あたり960円(中小企業以外は760円)、経費助成率は75%(中小企業以外は60%)になります。

参考:人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)

建設労働者認定訓練コース

「建設労働者認定訓練コース」は、従業員に建設関連の訓練を実施した場合や、有給で認定訓練を受講させた場合に、訓練費用や訓練期間中の賃金の一部を助成します。

対象となる企業は、1人あたり1日3,800円賃金助成額を受けられます。

参考:建設事業主等に対する助成金のご案内|厚労省

建設労働者技能実習コース

「建設労働者技能実習コース」は、従業員の技能向上を目的に有給で技能実習を受けた場合に、訓練費用や訓練期間中の賃金の一部を助成します。

経費助成率と賃金助成額は、企業の従業員数によって以下のように定められています。

従業員数

(雇用保険被保険者数)

経費助成率 経費助成額
中小企業20人以下 対象経費の3/4 1人あたり1日8,550円《9,405円》
中小企業21人以上 ・35歳未満:対象経費の7/10

・35歳以上:対象経費の9/20

1人あたり1日7,600円《8,360円》
中小企業以外 女性従業員:対象経費の3/5

※《》内は、建設キャリアアップシステム技能者情報登録者である場合

また、賃金向上助成や資格等手当助成を満たした場合は、以下の割増助成が受けられます。

  • 経費助成の支給決定を受けている場合:対象経費の3/20
  • 賃金助成の支給決定を受けている場合:
    従業員20人以下は1人あたり1日2,000円、21人以上は1,750円

参考:建設事業主等に対する助成金のご案内|厚労省

特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース )|厚生労働省

「特定求職者雇用開発助成金」は、ハローワークなどの紹介により、高齢者や障害者、母子家庭の母などの就職困難者を雇用する事業主に対して、助成金が支給される制度です。

このコースには、「成長分野」と「人材育成」の2つがあります。

成長分野は、就職困難者を成長分野の業務(デジタル分野・グリーン分野など)に従事させ、人材育成や職場定着に取り組む場合に高額の助成金が支給されます。

人材育成は、未経験の就職困難者に人材開発支援助成金を活用した訓練を実施したうえで従事させ、さらに賃上げした場合に助成金が支給されます。

公式Webサイト:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_seichou_00008.html

公的職業訓練のデジタル分野の重点化によるデジタル推進人材の育成|厚生労働省

職業訓練のデジタル分野の重点化により、公共職業訓練や求職者支援訓練においてデジタル分野を強化しています。

具体的には、デジタル分野の訓練コースや企業実習を取り入れたコースに対して委託費の上乗せ、オンライン訓練でのパソコン貸与費用を委託費の対象にしています。

さらに、デジタル分野に関連する訓練コースの受講者は、一定の条件を満たせば、月10万円の職業訓練受講給付金が支給され、早期の再就職を支援します。

デジタル分野の訓練コースは、厚生労働省の「ハローワークインターネットサービス」で検索し、最寄りのハローワークをつうじて申し込めます。

参考:公的職業訓練のデジタル分野の重点化によるデジタル推進人材の育成

公式Webサイト:

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/index.html

個人向けのリスキリング関連補助金・助成金などの支援

政府は、個人がリスキリングに取り組む際にも、さまざまな補助金や助成金制度などを用意しています。金銭的な負担を軽減することで、積極的に新しいスキルを身につけられるように支援しています。

教育訓練給付金|厚生労働省

「教育訓練給付金」は、働く人たちのスキルアップとキャリアアップを支援するために設けられた制度です。雇用の安定や就職の促進を目的としています。

厚生労働大臣が指定する講座を受講し、修了した際に費用の一部が支給されます。

具体的には、以下の3つの種類に分類され、それぞれ支給額や条件が異なります。

教育訓練の種類 内容 対象となる講座・資格の例 給付額
一般教育訓練 雇用の安定や就職の促進につながる訓練 ・中小企業診断士

・日商簿記

・TOEIC、TOEFL

・司書

・大学院

受講費用の20%(上限10万円)
特定一般教育訓練 速やかな再就職や早期のキャリア形成を目的とする訓練 ・社会保険労務士

・司法書士

・中小企業診断士

・行政書士

・税理士

・ファイナンシャルプランニング

受講費用の40%(上限20万円)
専門実践教育訓練 中長期的なキャリア形成を目的とする訓練が対象 ・ITスキル関係

・各種専門学校、専門職大学院

・介護福祉士

・看護師

受講費用の70%(年間上限56万円)

教育訓練給付金は、雇用保険に加入している人が対象です。正社員はもちろん、パート、アルバイト、派遣社員も条件を満たせば利用できます。

公式Webサイト:

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html

母子(父子)家庭自立支援給付金|厚生労働省

「母子(父子)家庭自立支援給付金」は、母子家庭の母や父子家庭の父が経済的に自立できるように支援する給付金です。

本制度では、資格取得やスキルアップといった、自立のために必要な学習にかかる費用をサポートします。

具体的には、「自立支援教育訓練給付金」と「高等職業訓練促進給付金」の2種類の給付金があります。

  1. 自立支援教育訓練給付金: 就職に有利な資格取得のための訓練や、スキルアップのための講座を受講する費用を支援
給付金の支給条件 給付金の支給額
一般、または特定一般教育訓練給付金の支給を受けられない人 対象講座の受講料の6割相当額(上限20万円)
専門実践教育訓練給付金の支給を受けられない人 修業年数×40万円(上限160万円)
  1. 高等職業訓練促進給付金: 一定の条件を満たす養成機関の訓練を受講し、就職に有利な資格取得や専門的スキルを身につける費用を支援
給付金の支給条件 給付金の支給額
住民税非課税世帯 月額10万円

(修業期間の最終学年は月額4万円加算)

住民税課税世帯 月額7.5万円

(修業期間の最終学年は月額4万円加算)

※給付期間は修業全期間(上限4年)

また、修業後には、修了支援給付金として一時金が支給されます。

一時金の支給条件 給付金の支給額
住民税非課税世帯 5万円
住民税課税世帯 2.5万円

なお、本制度を利用するには、事前に各自治体への申請が必要です。自治体によって制度や手続きが異なるため、必要な手続きはお住まいの自治体へご確認ください。

公式Webサイト:

https://www.cfa.go.jp/policies/hitori-oya/jiritsu-shien-kyuufukin

キャリアコンサルティング|厚生労働省

厚生労働省は、全国のキャリア形成サポートにおいて、ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングを無料で提供しています。

キャリアコンサルティングとは、国家資格であるキャリアコンサルタントが、キャリアプランニングや職業選択、職業能力の開発・向上などをサポートすることです。

たとえば

  • スキルアップやキャリアアップをしたいが、具体的にどうすればよいか知りたい
  • リーダー・管理職として、自分のあり方やキャリアパスについて悩んでいる
  • 仕事と育児のバランスをどのように取ればよいか、今後のキャリアプランと合わせて考えたい

など、仕事やキャリアに関する悩みを相談できます。

とくに、リスキリングによってスキルアップやキャリアチェンジを考えている人は、キャリアコンサルタントに相談することで、自身の強みや弱みを客観的に理解し、より効果的な学習計画を立てられます。

公式Webサイト:

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202009_00004.html

デジタル人材育成プラットフォーム「マナビDX」|経済産業省

マナビDX」は、デジタルに関するスキルを習得・向上したい人や、デジタル人材へのキャリアチェンジに興味のある人を支援するプラットフォームです。

これまでデジタル知識・能力を学ぶ機会がなかった人から、さらに実践的なデジタル知識・能力を身につけたい人まで、誰もがデジタルスキルを学べる講座を紹介しています。

公式Webサイト:

https://manabi-dx.ipa.go.jp/

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業|経済産業省

「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、リスキリングによってキャリアアップを目指す人を支援する取り組みです。

一定条件を満たすことで、補助金の支給を受けられます。

補助金の支給条件 補助金の支給額
リスキリング講座を受講し、修了した場合 講座の受講費用の1/2相当額(上限40万円)
リスキリング講座を受講し、実際に転職してから1年間継続的に転職先に就業している場合 追加的に講座の受講費用の1/5相当額(上限16万円)

この事業の大きな特徴は、「キャリア相談」「リスキリング」「転職支援」を一体的に支援している点です。

具体的には、キャリア相談(無料)でキャリアコンサルタントがキャリアプランを伺い、キャリア相談の結果を踏まえてリスキリング講座を受講していただきます。

そして、転職支援では職業の紹介や転職活動をサポートします。

公式Webサイト:

https://careerup.reskilling.go.jp/worker/

第四次産業革命スキル習得講座認定制度|経済産業省

経済産業省では、ITやデータ活用といった専門性の高い分野のスキルを身につけるための講座を「第四次産業革命スキル習得講座」として認定しています。

ITやデータ活用は将来の成長が強く見込まれ、需要が高まると予想されるため、社会人が高度な専門知識とスキルを習得し、これらの分野の人材不足を解消することが目的です。

また、一定条件を満たす場合、厚生労働省の「教育訓練給付制度(専門実践教育訓練)」や「人材開発支援助成金」の助成対象になります。

公式Webサイト:

https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/reskillprograms/index.html

社会人の大学等での学びを応援するサイト「マナパス」|文部科学省

マナパス」は、社会人の学び直しを支援するポータルサイトです。リスキリングに取り組みたい社会人が、「分野」「地域」「受講形式」「費用」などの条件で、自分に合った講座を検索できます。

さらに、従業員に対する研修を検索できる、企業向けの講座検索ページも備えています。

学びのモデルや最新のトピックなども掲載されており、社会人が学びを始めるきっかけになる情報が満載です。

公式Webサイト:

https://manapass.jp/

まとめ

政府はリスキリングを促進するために、さまざまな補助金や助成金制度などの支援を設けています。

これらの制度をうまく活用することで、企業は従業員のスキルアップを促進し、個人は市場価値の高い人材へと成長できます。

自分に合った制度を探して、積極的に活用していきましょう。