【2026年最新版】リスキリングとは?必要性・メリット・導入ステップまで完全解説

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最終更新日:2026.07.13

近年、生成AIやDX化によるビジネス環境の劇的な変化や労働人口の減少など、企業を取り巻く状況は大きく変化しています。2026年に入り、AIは「使う道具」から自ら業務を代行する「AIエージェント」へと進化し、その波はさらに加速しました。

その中で改めて注目されているのが「リスキリング」という言葉です。日本政府も本腰を入れて支援を続けており、各企業で急速に取り組みが進んでいます。一方で、リスキリングの概念や「何から進めればよいのか」という悩みは依然として多く聞かれます。

本記事は、リスキリングの概念から、必要性が高まった背景、メリットとデメリット、実際に導入するためのフロー、海外・国内の事例までを、2026年の最新データを交えてどの記事よりも詳しく丁寧に解説します。可能な限り、記載通りの内容をそのまま実務に活用できる構成にしていますので、ぜひご活用ください。

目次 非表示

【第一章】リスキリングとは。言葉の意味や経緯について

(1)リスキリング=「仕事を変えるための”学び直し”ではない!?」

まず、リスキリングとはどのような概念を指すのでしょうか。ケンブリッジ大学出版の「Cambridge Business English Dictionary」は「Reskilling」を、「異なる仕事ができるように、新しいスキルを学んだり、人々を訓練したりするためのプロセス」と定義しています。

つまり、今までの仕事や業務を変えることを前提としている点がリスキリングの特徴です。日本語では「学び直し」と訳されがちですが、実は両者は厳密には異なります。学び直しは個人が興味を持った分野を広く学ぶ意味で使われる一方、リスキリングは政府や企業が主導し、国や企業の成長に必要な分野で、施策やプログラムを通じて従業員・個人にスキルを習得してもらうものです。

この背景には、第四次産業革命のなかで技術進歩により失業リスクが生じ、新たに雇用が生まれる領域への労働移動を可能にする必要が出てきたことがあります。企業にとっても、既存人材を解雇せず新たな採用も抑えつつ事業転換を進める手段として、リスキリングが注目されています。日本で最も一般的とされる定義は、経済産業省による『新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること』です。

リスキリングとは

(2)2018年にダボス会議で提言され、世界的に推進が進む。日本の取り組みは?

「リスキリング」が広く注目されたきっかけは、2018年1月の世界経済フォーラム年次会議(ダボス会議)での報告書「Towards a Reskilling Revolution」です。続く2020年1月には、世界経済フォーラムが企業・NGO・大学などによる連合「Reskilling Revolution Platform」を立ち上げ、2030年までに10億人へ質の高い教育・スキル・仕事の機会を届けることを目標に掲げました。取り組みは現在も継続しており、AIによる労働市場の変化を背景にその重要性はいっそう高まっています。

日本におけるリスキリングへの取り組み

この流れを受け、日本政府もリスキリング支援を続けています。2022年6月には政府・自治体・企業からなる「日本リスキリングコンソーシアム」が設立され、同年10月には当時の岸田首相が所信表明演説で「リスキリングなどの人的投資に5年で1兆円を投入する」と表明しました。この「三位一体の労働市場改革(リスキリング/職務給の導入/成長分野への労働移動)」はその後も政府方針の柱として引き継がれています。

2026年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太方針2026)」でも、学び直しは重点テーマに据えられ、支援の質と「成果」を重視する方向が示されました。2018年以降、リスキリングは世界と日本の双方で、労働市場の最重要課題として急速に取り組みが進められています。

(3)OJT・スキルアップ・リカレント教育…類似する言葉との違い

リスキリングと似た言葉に「スキルアップ」「OJT」「リカレント教育」があります。スキルアップ(Upskilling)は現在の業務の延長線上の技術を高めることを指し、今と異なる仕事を前提とするリスキリングとはニュアンスが異なります。OJT(On the Job Training)は実際の業務を通じて現在の仕事に必要な技術・知識を習得させる訓練で、これも現業務のスキル習得という点で異なります。

リカレント教育は日本でも「学び直し」と訳されますが、発端はユネスコの「生涯学習」の実現手法であり、当初の目的は「教育機会の均等化」にありました。仕事のスキル習得に限らず広く「自己実現」のための教育機会を目指す点で、雇用機会の提供を重視するリスキリングとはやや異なります。

【第二章】リスキリングは「なぜ」必要?その背景となる3つの変化

リスキリングの必要性が高まった背景として、(1)産業構造の変化、(2)採用トレンドの変化、(3)労働人口の変化、という3つが挙げられます。以下、それぞれを詳しく見ていきます。

(1)産業構造の変化:テクノロジーの進化で、雇用の入れ替えが加速

2018年の「Towards a Reskilling Revolution」は、テクノロジーによる自動化で事務職や生産職を中心に雇用が減ると予測しました。しかしその後、新型コロナと生成AIの登場により見通しは大きく変わっています。

世界経済フォーラムが2025年1月に公表した最新版「Future of Jobs Report 2025」では、2030年までに1億7000万の仕事が新たに生まれる一方、9200万の仕事が失われ、差し引きで7800万の純増になると予測されました。これは対象となる約12億の雇用の22%が入れ替わる大規模な構造変化です。さらに、既存スキルの約39%が2025〜2030年に陳腐化し、雇用主の85%が対応策として「社内での学び直し(リスキリング)」を優先すると回答しています。

WEF『Future of Jobs Report 2025』による2030年までの雇用予測(新規1.7億創出・9200万喪失・純増7800万、スキル39%が陳腐化)
WEF「Future of Jobs Report 2025」による2030年までの雇用予測

減少が見込まれる代表的な職種は、レジ係・チケット販売員、一般事務・秘書、銀行窓口、データ入力、会計・給与計算事務、郵便事務、資材・在庫管理といった定型的な事務・窓口業務です。逆に、AI・データ関連やデジタル分野の専門職に加え、介護・教育・物流など人手を要する「コア職種」も成長が見込まれます。生成AIが広範な職種に影響を及ぼすなか、変化に適応するためのリスキリングの重要性が一段と高まっているのです。

(2)採用トレンドの変化:学歴や職歴から「スキルファースト」へ

大きな構造変化のなかで、多くの企業が人材獲得に課題を抱えています。世界経済フォーラムの調査では、ビジネス変革の障害として多くの企業が「労働市場におけるスキルギャップ」「人材を惹きつけられない」ことを挙げています。そこでトレンドとなっているのが、職歴や学歴よりも「業務に必要なスキル」を重視する「スキルファースト(Skills First)」の考え方です。米ウォルマートをはじめ多くの企業が導入し、LinkedInの調査ではスキルベースの採用は成功確率が高まるという結果も示されています。学歴や経験よりスキルを重視する潮流も、これまでと異なるスキルを学ぶリスキリングの重要性を後押ししています。

一方で、日本における採用環境は変化の途上

ジョブ型・スキルベース採用へ移行する先進国と比べると、日本はメンバーシップ型(終身雇用)の慣行が根強く、労働移動の円滑化という点では途上にあります。もっとも、職務給の導入やジョブ型雇用は着実に広がりつつあり、従業員を大切にする文化は、事業転換の際に既存人材のリスキリングを後押しする力にもなります。

(3)労働人口の変化:少子高齢化による労働人口の減少

日本固有の背景として、少子高齢化による労働人口の減少があります。総務省の情報通信白書は、生産年齢(15〜64歳)人口が今後大きく減少すると示したうえで、ロボットやAIの活用による省力化・効率化の重要性を指摘してきました。2025年版(令和7年版)情報通信白書では、日本企業の業務における生成AIの利用率が55.2%に達したことも報告されています。少ない労働力で付加価値を生み出すために、先端技術の活用と、それを使いこなす人材のリスキリングがいっそう不可欠になっているのです。骨太方針2026でも「性別・年齢にかかわらず活躍できる社会」に向けた全世代型リ・スキリングが掲げられています。

【第三章】企業がリスキリングを推進するメリット

(1)採用よりもコストをかけずにDXを推進できる

あるスキルを持つ人材を新たに採用するより、既存の従業員に同等のスキルを習得させるほうが、時間もコストも抑えられるケースが多くあります。人事コンサルタントのジョシュ・バーシン氏による「リスキリングコストは採用コストの1/6で済む」という説は比較的有名です。また既存従業員は自社の文化や業務フローを理解しているため、習得したスキルをすぐ業務に活かせます。DXのスピードが競争力を左右する今、リスキリングは採用より速くDXを進める有力な手段です。

(2)従業員のエンゲージメント向上

リスキリングは、従業員に「自分の努力が企業の進歩につながり、自分の役割が社会にとって価値ある」と実感する機会をもたらし、責任感や貢献意欲を高めます。学習・成長環境の提供は、既存従業員のエンゲージメントだけでなく、求職者の企業選びや採用ブランディングにも好影響を与えます。エンゲージメント向上は生産性を高める重要な要素であり、DXによる効率化以上の効果が期待できます。

(3)VUCA時代を生き抜く組織の構築につながる

変化が激しく先の読めないVUCA時代を生き抜くには、変化に即応できる柔軟性とチャレンジ精神が欠かせません。リスキリングは従業員一人ひとりの技能を再編し、新しいスキルとともにそうした姿勢を育むきっかけとなり、企業の持続的な成長と競争力の維持につながります。リスキリングは単なる人材育成を超え、企業の未来を切り開く鍵となる取り組みなのです。

【第四章】リスキリングのデメリット(注意点)

(1)成果が見えるまで時間がかかる

リスキリングは「人」に関わる取り組みで、成果が長期的になりやすく、導入直後には結果が見えにくいという難しさがあります。先行事例から学びつつ、短期の成果を求めすぎない設計が重要です。

(2)マインドなど、ソフトスキルは変化しづらい

柔軟性やチャレンジ精神といったソフトスキルは、個々の性格・経験・価値観に左右され、変化に時間がかかります。特に学習に消極的な従業員には、アンラーニングやデジタルリテラシー向上の支援を先行させる必要があります。従業員によっては相応の時間と労力がかかることを、あらかじめ織り込んでおくことが大切です。

【第五章】企業がリスキリングを導入するための5ステップ

(1)従業員のスキルを可視化・定量化する

まず、従業員が現時点で何を得意とし、どのスキルをどの程度持っているかを可視化・定量化します。技術的スキルとソフトスキルに大別し、さらにサブカテゴリーへ分類。上司だけでなく本人・同僚・部下など多面的な評価を組み合わせると精度が高まります。保有資格も併せて把握しましょう。以下はスキルマップの一例です。

スキル・保有資格AさんBさんCさん
技術的スキルプログラミング522
データ分析523
ソフトスキルコミュニケーション244
課題解決能力345
リーダーシップ244
保有資格ITパスポート
MOS

(2)会社の将来に向けて必要な人材を見定める

次に、将来の業界トレンドや企業ビジョンを踏まえ、求められるスキルセットを明確にします。DX推進に必要なスキルは企業戦略によって異なる(AI・生成AI活用、データ分析、自動化など)ため、必要スキルと現状のスキルを比較してギャップを洗い出し、どのスキルを補うべきかを定めます。

(3)スキル習得に必要な学習プログラムを組む

学習プログラムは一から作るのは難しいため、外部の講座や資格試験を活用するのが一般的です。必要なスキルに合うものをリサーチし、複数を組み合わせて設計します。生成AI関連の講座や検定など、目的に応じた最新のプログラムを取り入れましょう。

(4)従業員に学習プログラムに取り組んでもらう

プログラムを提供し、学習を始めてもらいます。学習期間中は進捗を把握し、つまずいている様子があればヒアリングして一緒に対策を考えます。

(5)身につけたことを実践できるよう支援する

リスキリングの目標はスキル習得そのものではなく、新たな業務やビジネスモデルに対応できるようになることです。習得したスキルを日々の業務で活かせるよう、配置転換や実践プロジェクトへの参加などの支援が欠かせません。こうして初めて学びが血肉となり、企業のDXを推進する原動力になります。

【第六章】リスキリング定着のポイントは「従業員目線」

(1)従業員の既存業務とのバランスを調整する

リスキリングは基本的に業務時間内で行うため、既存業務に支障が出ないよう配慮が必要です。配慮が不足すると本人のストレスや、学習していない従業員の不満につながります。各人の業務量を考慮して学習時間を設定し、必要なら業務の一部を他者や外部に委託するなど、業務量自体の調整も検討します。

(2)従業員の興味関心を重視する

「やってみたい」「頑張りたい」という自主的な気持ちは、学習の継続と効果を大きく高め、エンゲージメント向上にも寄与します。本人の興味関心を尊重したテーマ設定が定着のカギです。

(3)従業員の自主性に頼り切らない

自主性は欠かせませんが、頼り切ると「誰も始めない」「いつの間にかやめていた」といった失敗を招きます。1on1で具体的な学習ロードマップを示す、スキル習得後の昇給・キャリアの見通しを提示する、定期的な評価・フィードバックを行う、進捗を可視化して従業員同士が刺激し合える環境をつくる——こうした後押しが有効です。

【第七章】リスキリングの導入事例

(1)海外企業の事例

AT&T

米通信大手AT&Tはリスキリングの先駆者です。2008年の社内調査で、必要なスキルを持つ従業員が半分に満たないと判明したことを受け、戦略「Workforce 2020」を策定。10億ドルを投じて全社的なリスキリングを進め、技術職の多くを社内人材でまかなえるようになり、昇進率の向上など多くの成果を上げました。

アマゾン

アマゾンは2021年に、約12億ドルを投じて2025年までに従業員30万人のスキル習得を支援する「Upskilling 2025」を実施しました。さらに2023年11月には、全世界で200万人に無料のAIスキル教育を届ける「AI Ready」を発表。この目標は予定より1年早い2024年末に達成され、生成AIの学習講座なども拡充されています。AIそのもののスキル育成へと軸足を移している点が、近年の特徴です。

(2)日本企業の事例

富士通

富士通は、デジタル人材の確保に向けて「Global Strategic Partner Academy」を2021年12月から開始。ServiceNow、SAP、Microsoftと協働し、国内外に通用するITスキルの習得を通じて、グローバル規模でデジタル人材の拡充を進めています。

日立製作所

日立製作所は、多様な研修を提供する「日立アカデミー」を通じてリスキリングを実施。オンライン中心で従業員が自分のペースで学べる環境を整え、新たな技術の習得を通じて全社のDX推進に貢献しています。

まとめ

リスキリングは、企業・従業員がこれからの時代を生き抜くために不可欠な取り組みです。2026年は、生成AIエージェントの普及と骨太方針2026の「成果を重視するリスキリング」への転換により、その中身が「学ぶこと」から「成果につなげること」へと深化しています。

大切なのは、単に学習プログラムを提供するだけで終わらせないこと。企業が「何を・なぜ学ぶのか」「学ぶとどんなメリットがあるのか」を明示し、学びを実務と成果につなげる環境を整えることが求められます。費用面では公的支援も活用できます。下記の記事でリスキリングに使える補助金・助成金を網羅的に解説していますので、あわせてご覧ください。