AI時代、管理職は「管理する人」から「決めて育てる人」へ──61.6%が役割転換を予感。人事が今整えるべき5つのこと
最終更新日:2026.11.04
生成AIで資料作成や議事録が速くなった職場で、管理職の役割そのものが変わり始めています。2026年10月22日に発表されたアクシスコンサルティングの調査では、部下を持つ管理職の61.6%が、役割は「管理」から「意思決定・人材育成・組織変革」へ移ると回答しました。この記事では、AI時代の管理職に何が起きているのかを複数の最新調査から読み解き、人事・経営が次に整えるべき育成の設計を整理します。
この記事で分かること
- AIを使うチームの管理職の57.2%が「役割が変化した」と感じている理由
- AIで減った仕事と、代わりに重みが増した仕事(方針提示・1on1・意思決定)
- AI時代の管理職を育てるために、人事が今週から始められる5つのチェック項目
関連記事:「見直しは必要」7割でも実行は2割未満──生成AI時代の人材育成、管理職研修7.7%の空白をどう埋めるか
AI時代の管理職は、本当に役割が変わっているのか?
結論:AIを使っているチームでは、すでに変化が起きています。チームでAIを活用・試行している管理職437名のうち、57.2%が「役割が変化した」と回答しました(「大きく変化した」15.6%、「ある程度変化した」41.6%)。一方で「あまり変化していない」も33.9%あり、変化の度合いには差があります。
この調査は、全国の課長級以上で部下を1名以上持つ就業者を対象に、2026年9月18〜19日にインターネットで実施されたものです(有効回答639名)。注目したいのは、AIで負担が減った業務の種類が多いほど、役割の変化を感じる人が増えている点です。減った業務が1種類の層では51.6%、2種類では58.9%、3種類以上では73.9%が「変化した」と答えています。調査元は因果関係ではなく関連を示すものとしていますが、「AIに渡した仕事の幅」と「管理職の仕事の中身」が連動していることがうかがえます。
AIで減った仕事、重みが増した仕事は何か?
減ったのは「まとめる・書く」仕事、増したのは「決める・向き合う」仕事です。負担が減った管理業務の上位は、会議資料・報告資料の作成(43.5%)、情報収集・要約(41.2%)、議事録作成(36.8%)、データ集計・分析(33.0%)でした。反対に重要性が高まった仕事は、方針・ビジョンの提示(34.8%)、部下との対話・1on1(29.5%)、意思決定・優先順位づけ(25.6%)、人材育成・評価(20.8%)が上位です。

AIで生まれた時間の使い道としては、戦略・方針の検討(40.0%)、新規事業・企画(32.3%)、部下との対話・育成(30.4%)、意思決定(28.1%)、自らの学習・専門性向上(23.3%)が挙がりました。浮いた時間が「より上流の判断」と「人」に向かっていることが分かります。
あわせて読みたい:AIで生まれた時間、どう使う?──みずほ・JR東日本・橋本組が厚労省で語った人材再配置とリスキリング
これからの管理職に求められる能力は何か?
最も求められるのは「意思決定力」です。今後重要性が高まる能力として、意思決定力(37.7%)、ビジョンを示す力(29.0%)、人材育成・コーチング力(27.1%)、課題設定力(22.7%)、AI活用力(20.8%)が挙がりました。AI活用力そのものより、AIの出力を前提に「何を選び、どこへ向かうか」を決める力が上位に来ている点が特徴です。
管理職は部下の育成もAIに任せたいのか?
任せたい気持ちはあるものの、育成や評価は「人が担うべき」という声が多数です。Helpfeelが2026年10月28日に発表した調査(ビジネスパーソン601名、うち管理職200名)では、マネジメント・対人業務をAIに置き換えたい管理職は約6割で、一般社員(約4割)を上回りました。特に「組織のモチベーション管理・部下のメンタルケア」では、管理職の置き換え意向が一般社員より18.9ポイント高くなっています。
一方で、回答者全体で「AIに置き換えてほしくない業務」の上位は、取引先との交渉・折衝(57.4%)、部下・後輩の指導・育成(56.2%)、人事評価(54.6%)でした。管理職が対人業務の負担に疲れている一方、育成される側は「人に見てほしい」と考えている。このすれ違いを埋めるのが、AI時代のマネジメント設計の要になります。なお同調査では、AIを「毎日」または「週に数回」使う割合が管理職62.0%、一般社員32.2%で、管理職の方がAIをよく使っている実態も示されました。
なぜ管理職の育成は進みにくいのか?
管理職自身が「育成が最も難しい」と感じ、生成AIも半数が使えていないためです。リクルートマネジメントソリューションズが2026年8月31日に発表した調査(人事500名・管理職層500名)では、マネジメント業務で難しいことの最多は「メンバーの育成・能力開発」(54.0%)でした。管理職の主な課題は「仕事の増加や期待の高まりによる負担増大」(44.9%)で、生成AIの活用について「当てはまるものはない」と答えた管理職は49.4%に上ります。
つまり、AIを使って時間を生み出せている管理職と、負担が重いままAIにも手が回らない管理職に二極化しつつあります。役割転換を個人任せにすると、この差が組織の差になります。管理職の学び直しについては管理職こそリスキリングを─生成AI時代に逆転した「学ぶ側」も参考になります。
「これまでの管理職」と「AI時代の管理職」は何が違うのか?
違いは、時間の使い方・判断・育成・AIとの関係・評価の5点に表れます。リスキリングドットコム編集部が上記の調査結果をもとに整理すると、これまでの管理職が「上の決定を正確に伝え、計画どおりに業務を回す人」だったのに対し、AI時代の管理職は「AIの出力を吟味して優先順位を決め、人と組織を変化に適応させる人」へと移ります。

表の要点を文章でまとめると次のとおりです。時間の使い方は「資料作成・集計・報告」から「方針の提示・意思決定・部下との対話」へ。育成は「OJTでやり方を教える」から「考えた過程を問い、任せ方を設計する」へ。AIとの関係は「個人の効率化ツール」から「チームの業務をAIに任せる設計」へ変わります。これはリスキリングドットコムが提唱する「知る→使う→任せる」の3段階のうち、管理職が「任せる」段階の設計者になることを意味します。
関連記事:「AIを使う」から「AIに任せる」へ――2026年、AIエージェント本格化で人事・経営が設計すべきリスキリング
企業は管理職の役割転換に向けて何をすべきか?
まずは「AIに渡す業務」と「管理職が担う業務」を言語化し、評価と研修をそれに合わせることです。調査では、AIで減った業務が多い管理職ほど役割の変化を感じていました。役割転換は意識改革だけでは進まず、業務の切り出しと、空いた時間を何に使うかの設計がセットで必要です。
人事・経営が今週から確認したい5つのチェックリスト
- 管理職の業務を棚卸しし、資料作成・要約・議事録・集計など「AIに渡せる業務」を部署ごとに一覧にしたか
- AIで生まれた時間を「方針提示・1on1・意思決定」に使うよう、管理職の期待役割を文書で示したか
- 管理職の評価項目に「部下の育成」「チームのAI活用の設計」が入っているか
- 管理職研修に、意思決定・コーチング・AI出力の吟味(ファクトチェック)を組み込んだか
- 生成AIを使えていない約半数の管理職に向けて、業務の具体例つきの導入支援(ハンズオン)を用意したか
1on1の進め方を見直す場合は、1on1ミーティングの進め方【2026年最新】導入5ステップと頻度・時間の目安も活用できます。また、管理職を目指す人自体が少ないという課題もあります(管理職志向は8% イプソス調査)。役割を「雑務の多い管理役」から「決めて育てる役」へ再定義することは、なり手不足への対策にもなり得ます。
リスキリングドットコムの見解
今回の一連の調査が示しているのは、AIが管理職を不要にするのではなく、管理職の「仕事の重心」を動かしているという事実です。資料をまとめる時間が減った分、管理職には「決める」「問う」「任せる」が求められます。ここで注意したいのは、育成を受ける側の多くが「指導・育成や評価はAIではなく人にしてほしい」と考えている点です。対人業務の負担が重いからといって、そのままAIに渡すと信頼を損ないかねません。
私たちは、管理職のリスキリングを「AIツール研修」だけで終わらせないことを提案します。①自分の業務をAIに渡す(使う)、②空いた時間で部下と向き合い判断する(決める・育てる)、③チームの業務をAIに任せる仕組みをつくる(任せる)、の3段階で設計し、評価制度と結びつけることが、役割転換を個人の努力から組織の力に変える近道です。
次に読む記事
- 「見直しは必要」7割でも実行は2割未満──生成AI時代の人材育成、管理職研修7.7%の空白をどう埋めるか
- 管理職の46.5%が“シャドーAI”──『AI白書2026』調査が示すガイドラインの限界と、人事が設計すべきリスキリング
- 新卒の3割超が3年以内に離職──厚労省2026年公表データで読む「1年目の壁」と若手リスキリングの設計
リスキリング・AI活用・人材育成の最新情報は、X(旧Twitter)でも毎日発信しています。ぜひ@ReSkilling_comをフォローしてください。
参考・出典
- アクシスコンサルティング「AI時代、『管理職』は何をする人になる?61.6%が『管理』から『意思決定・人材育成・組織変革』へ」(PR TIMES、2026年10月22日)
- Helpfeel「AIに置き換わる業務についての意識調査」(PR TIMES、2026年10月28日)
- リクルートマネジメントソリューションズ「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2026」(PR TIMES、2026年8月31日)
公開日:2026年11月2日



